僕たちは友達がいない

前回のあらすじ 宮川さんのストーカーの川上さんはVtuberだった。


 教室に戻った後、宮川さんは大層お怒りの様子で座りながら頬杖をついて黒板の方を見ている。すごい。こんな怒った宮川さんは初めてみたな。


 「宮川さん。えっと・・・これから・・・」


 宮川さんは僕の方を全然向いてくれない。


 「でも結果的には良かったんじゃない?そんなに悪い人には見えなかったし・・」


 「さすが同じ変態ね。ストーカーの変態を悪い人には見えなかったなんて」。


 「僕は違うよ!同じにされたら困るよ!」


 僕もさすがにあのストーカーと同じにされるのは嫌だ。僕はもっと紳士だ。


 「でもこれからどうするの?このままだとまたあの人来ると思うけど」


 「あれだけ脅したんだから来ないでしょ。あれでまた来たら真の変態ね」


 宮川さんは呆れた表情でそう言った。宮川さん残念だけど多分あの人は真の変態の方だよ。


 翌日の昼休み。


 「宮川さん!一緒にご飯食べましょう!」


 片手に弁当を持った川上さんは当然来た。しかも僕たちの教室まで。当然クラスのみんなが何事だと騒ぎ始める。だがみんな考えは同じだろう断られるに決まっていると。だが結果は違った。


 「はー。いいわよ。佐藤君も行きましょう」


 宮川さんはため息混じりに弁当をカバンから取り出して僕も誘ってきた。あっ。僕の名前佐藤です。


 「いいよ」


 僕たち3人が一緒に教室から出るのをクラスのみんながとても驚いた顔をしながら見ていた。そして僕たちはだれもいないところを求めて屋上に着いた後そこで一緒にご飯を食べることにした。


 「次私の前に現れたら殺すと言ったはずだけど?」


 宮川さんはあきれた表情で川上さんを見つめる。


 「え?そんな事言われたっけ?覚えてないわ」


 川上さんは平気な顔で自分の弁当箱を開けて食べ始めた。この人本当に忘れてるんじゃないか?


 「それはそうと私があなたの弱みを握っているのは覚えているわよね?私と友達になってもらうわ」


 川上さんは弁当を食べながら話す。いや食べるか喋るかどっちかにしてくれ。


 「前も言ったけど嫌よ。そもそもそれなら私だってあなたがVtuberをしていると言いふらしてもいいのよ」


 宮川さんは箸で川上さんを指さす。行儀が悪いから止めなさい。それを聞いた川上さんは悲しい顔で持っている箸を置いた。


 「大丈夫よ。私友達いないし」


 言い終わると川上さんはまたごはんを食べだした。川上さん友達いなかったのか。でも正直意外だな。全然いそうだけど。聞いてみよう。


 「意外だね。全然いそうなのに」

 

 「あなたデリカシーないってよく言われない?まあいいけど。私ってかわいいじゃない?女子の中でかわいい人は浮くのよ。それに私結構思ったことをズバズバいう方だからそういうのも嫌われているのかもね。知らないけど」


 デリカシー無いなんて言われたことないですー。女子の中でかわいい人は浮くはどうなんだ?本当にそうなのかな。でも友達がいないなんて・・・って僕もじゃないか?宮川さんは友達というより協力者だし。


 「宮川さん僕たちって友達だよね?」


 「違うわ。あえて言うならペットとその飼い主と言ったところかしら」


 「それは嫌だよ!せめて協力者がいいよ!」


 やっぱり僕に友達はいなかったらしい。残念だけど、今の宮川さんとの関係は気に入っているからまあいいか。


 「あなたたちって仲がいいのね。羨ましいわ」


 川上さんは寂しそうに僕たちを見つめていた。僕が言えることではないがいたたまれない。何とかしてあげたい。


 「ねえ。もしよかったら僕たちと友達にならない?」


 僕は食べていた箸を止めてそう聞いてみた。それを聞いた川上さんはとても嬉しそうにしてその場に立ち上がった。


 「いいの?うれしいわ!でも・・・」


 川上さんは宮川さんをそっと見つめた。いやいくら宮川さんでもさすがに


 「いやよ」


 「ちょっと宮川さん!今のは友達になる流れだよ!」


 「知らないわよそんなの!」


 宮川さんはそっぽを向いてしまう。川上さんを見ると俯いてしまっている。やばい。何とかしないと。そうだ!


 「宮川さん。、協力者という形ならどう?彼女の方がVtuberの経験はあるだろうし、協力者になってくれたら言いふらしたりしないよね?」


 それを聞いた川上さんは顔を上げて真剣な顔で


 「ええ。絶対にしないわ」


 と宣言した。よし、ここまでいけばさすがに宮川さんも


 「いやよ」


 「ちょっと宮川さん!いまのは了承する流れだよ!」


 相変わらず宮川さんはそっぽを向いている。川上さんといえばもう少しで泣きそうだ。宮川さん頑固だ。


 「もう!じゃあ僕が今までより頑張るから!お願い!」


 僕は両手を合わせて宮川さんにお願いする。宮川さんはちらっとこっちを見た後、僕の弁当を箸で指さした。ん?僕の弁当?


 「あなたのそのから揚げで考えてあげるわ」


 「宮川さん。もちろん!から揚げあげるよ!あっ・・・」


 僕が宮川さんにから揚げを渡そうとしたが自分のから揚げが食べかけなことに気づいた。


 「ごめん。宮川さん。食べかけでよければ」


 僕は食べかけのから揚げを宮川さんの弁当箱に入れた。宮川さんは少しから揚げを見つめた後すぐにから揚げを食べた。


 「まあ。これで手を打ってあげるわ」


 「ありがとう!」


 こんなのいらないわよ!犬に食わせた方がましよ!と罵倒されると思ったが意外にも大丈夫だった。宮川さんを見ていると横から衝撃が走った。


 「な・・なんだ?」


 確認すると川上さんが僕に抱き着いていた。柔らかい感触といい匂いがして僕は硬直してしまう。ち、近い


 「ありがとう佐藤!私のペットにしてあげてもいいわ!」


 川上さんは僕に抱き着きながら笑顔でペットになれと言っている。


 「いやだよ!何で僕のまわりの女子はペットにしたがるんだよ!」


 これから忙しくなりそうだと僕は空を見上げた。


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