狐山 コン子 身バレしました

前回のあらすじ 宮川さんと一緒にゲームしました!


 宮川さんとゲームした日の翌日。ようやく空が明るくなり始めたころに僕はいつものように早めに家を出る。満員電車に揺られること15分、歩くこと10分でようやく学校に着く。やはり満員電車はきついなー。僕は将来は田舎に住むことを決めた。


 学校に着き教室にいくとやはり僕が一番だ。教室にはだれもおらず静けさだけが残っている。僕は窓際の一番後ろの席に座るといつものように小説を読み出した。変わらない僕のルーティーンだ。


 僕が小説を読んでいると


 「がらがら」


 という音とともに宮川さんが教室に入ってきた。長い黒髪をたなびかせさらに黒縁のメガネは知的さを醸し出している。改めて見ると本当に美人だ。


 僕は宮川さんに


 「おはよう」


 と挨拶するも僕には目もくれずに僕の隣の席に座る。そして宮川さんはいつも通り机の引き出しにある小説を読むはずなのだが?


 「あれ?おかしいぞ」


 宮川さんは机の引き出しから白い紙を取り出した。ここでいつもとは違うのだがたまにこういう事もある。おそらくその白い紙はラブレターなのだ。


 宮川さんは本当にモテる。そのため告白されたりラブレターをもらう事は頻繁にあった。返事はすべて「いやです」か「無理です」の2択らしいけれど。


 宮川さんは珍しく読むのに時間がかかっているいつもはすぐに読んだ後机の引き出しに戻すというのに。そんなに長文のラブレターなのだろうか。すると宮川さんは


 「これを見て」


 と言って僕にラブレターを見せつけてきた。いや。人のラブレターを読むのはちょっと。


 「さすがに人のラブレターを読むのはちょっと」


 やんわりと拒否したが宮川さんは見るように促してくる。


 「いいから。読んで」


 僕はしぶしぶそのラブレターを受け取り中を見てみた。そこには


 「「狐山 コン子」放課後体育館裏に来てください」


 と書いてあった。いかにも普通のラブレターに思えるが、名前がおかしい。「狐山 コン子」だと?つまり宮川さんがVtuberだと知る人間が僕意外にもいるということだ。


 「もしかしてあなたじゃないわよね」


 宮川さんは今にもぶちギレそうな表情でそう言った。


 「違うよ!僕じゃないよ!それにしても誰なんだろう?それに目的も不明だし」


 「とにかく言いふらされたら面倒だわ。なんとか口封じしないと」


 宮川さんは珍しく焦っている。それもそうだVtuberにとって身バレというのは終わりを意味する。ネットであっという間に拡散されて好き放題言われてしまうのだ。それだけは避けなければ。


 「最悪このシャーペンで」


 宮川さんはシャーペンを持って今にも刺しそうな雰囲気だ。


 「宮川さん落ち着いて!犯罪者になるのはまだ早いよ!」


 「まだって何よ。この犬!」


 宮川さんは落ち着いていられない様子だ。そんなやり取りをしていると教室に続々と生徒が登校してきた。僕と宮川さんはまた黙って本を読み始める。


 だが目的がまるで分からない。それにしてもどうやって知ったんだ?授業中もずっとその紙の事で頭が一杯だ。宮川さんも同様にいつもより喋らない。というかガン無視している。


 今日は一言も発していない。相当堪えているようだ。もし犯人の狙いが脅しであるのなら相当厄介なことになる。とにかく今は放課後になるのを待つしかないようだ。


 僕たちは疑念を抱えたまま授業を受け、ようやく放課後になった。いつもより授業が長く感じられたのは気のせいではない。教室には僕と宮川さんの二人きりだ。


 「よし。早速、体育館裏に行くわよ。ポチ、シャーペンは持った?」


 「持たないよ!武力行使はだめだよ!」


 宮川さんをなだめつつ体僕たちは育館裏に行くことにした。一体何が待ち受けているのだろう、


 体育館に着いたところで


 「あなたはばれないように隠れてなさい」


 と言われ別行動になった。宮川さんは体育館裏に左側から行き、僕は反対側から向かう。体育館裏に差し掛かると女性の姿が見えた。僕は彼女にばれないように後ろからなるべく近づいて体育館のくぼみに隠れた。


 「ふーー。これで会話も聞けるだろう」


 僕が一息ついた後、宮川さんが来た。ようやく犯人とご対面だ。


 「それであなたがこの手紙の差出人?」


 宮川さんは右手で手紙を持ち、犯人に見せつけている。


 「ええそうよ。まさか本当に来るとわね」


 犯人は不敵に笑う。彼女はこの学校の制服を着ているためここの生徒のようだ。茶髪で長く綺麗な髪。身長は150cm台で小柄でかわいらしいという印象だ。そういえば彼女どこかで。


 「まさか宮川さんが「狐山 コン子」だったなんてね。普段の様子からは想像もつかないわ」


 彼女は余裕の笑みを見せている。でも確かに、普段の宮川さんとは思えないのは事実だ。だから気づかないと思っていたのに。


 「それで目的は何かしら」


 宮川さんも余裕の表情だ。両者とも全く動じていない。


 「なるほど。確証はなかったけど今ので確信したわ。本当にVtuberだったとはね」


 この女かまをかけたらしい。宮川さんはまんまと引っかかってしまった。相手の方が一枚上手らしい。


 「だから目的は何と聞いているのよ」


 宮川さんはさっきよりも苛立っている様子だ。まずいぞ冷静になるんだ。宮川さん。


 「あなたに言いたいことは一つよ・・・」


 そう言うと少女は宮川さんを思いっきり指を指してこう言った。


 「Vtuberのキャラが・・・キャラが被ってるのよーーー!!」


 体育館裏に声が響いた。


 「え?キャラ?」


 僕も宮川さんもきょとんとした顔で彼女を見つめている。あっ。つい声を出してしまった。


 「だれ?だれかそこにいるの?」


 彼女は後ろを向いて僕を探している。ここは出ていくしかない。


 「こんにちは」


 「だれよあなた。盗み聞きとはいい度胸ね」


 彼女は僕を見下すように言うが、身長が低いためあまり見下されている感がない。むしろかわいらしい


 「僕は宮川さんを人気Vtuberにするための協力者みたいなものだよ」


 正直にはなした。


 「なにそれ。本当?」


 宮川さんに確認を取る。


 「ああ。本当だ」


 宮川さんは頷いた。改めて宮川さんに認められてちょっとうれしい


 「ますます気に入らないわね。私は一人で頑張っているというのに」


 彼女はますます苛立っている様子だ。とにかく話を進めよう。


 「えっと。ところであなたは何者なんですか?」


 それを聞いた彼女は嬉しそうに口角を上げて偉そうにこう言った。


 「私は川上 舞「かわかみ まい」。星守 狼子「ほしもり ろうこ」という名前でVtuberをやっているわ!」


 彼女は決まったという表情でこちらを見ている。対する僕たちと言えば。


 「へーー。そうなんだ」


 「もうちょっと驚きなさいよ!!」


 「川上 舞」いや「星守 狼子」の声が響いた。

 


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る