第11話 パートナー

 ボクは叫んだ後に、シールとは別に吐き出した物を探した。

 するとそこに落ちていたのは『赤いハート』と『紅い羽根』の形をしたアイテムだった。


「ハートってライフ!? お前すごいモノ食べてたんだな……!」


 ハートのドロップに思わずボクの鼓動が跳ね上がる。

 羽根のほうは良く分からないけど……お前鳥でも食べちゃったのか……


 震える手でアイテムを拾って見つめているとボクの声に気が付いたのか、起き上がったスライムと目の焦点が合う。

 ボクを見上げたスライムは細道へ跳ねながら、時折ボクを振り返った。


「ついてこいってこと?」 


 スライムはぷるぷるとした体を上下に揺すり肯定を示す動作を行うと細道に入っていく。

 ボクも細道に入っていくとしばらくそのまま道なりに歩いていく。

 思ってる以上に長い……

 さらに歩いていくと、少し広め……と言ってもせいぜい5、6人程度が居座れそうな空間に出た。

 天井が吹き抜けなのだろうか? 明かりが差し込んでいる。


 その明かりの元に佇むスライムの隣に何かが置いてある。

 ボクは目を見開くと同時に駆け寄った。

 噂の鎧ではなく、それは雨風にさらされてくすんだ色を乗せた、ギザギザの剣のような物だ。


 「これはなんだろ……? でも鎧じゃなかったけどこんなかっこいい場所にあるなら……」


 ボクは膝をついて震える手で剣を引き抜くと、乗っかっていた土や苔がぽろぽろと落ちる。

 手で払いながら柄を見た時に見え覚えのあるマークが目に入った。


「これロプ爺さんのマークだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 誰かが上で落としてここに残ってたということっぽい……

 一通り叫んだ後ボクは気持ちを切り替えた。


 ロプ爺さんマークの武器なら少なくとも10万パルはするものだ。

 アフターケアもしてるって言ってたし、これを研ぎ直してもらって使おう……見た目がカッコ悪いのはこの際我慢しよう。


 それに……想定外とは言えハートも1個手に入ったんだしね!


 ボクは立ち上がりその場を歩き出すと、スライムはボクを見送るようにその背中を見つめ続けている。


「お前……結局ただのスライムだったけどこれを守ってたの?」


 またも体を上下に揺するスライム。


「これからお前どうするんだ?」


 体を左右に振るスライム。特にアテはないということだろう。

 ボクが広間から細道に戻る際も特に動こうとはしない。

 モンスターなので何を目的にするかは自由だけど……この剣とどれほどの年月を共に過ごしたのだろうか。


 ボクは気が付くとスライムの前に膝を付いていた。


「一緒に……くる?」


 スライムは相棒パートナーにするとしても強力な相棒パートナーを手に入れてからが定番だ。

 仲間にしないわけではない。

 なぜなら、スライムは食べた物をお腹で保管できるので倉庫にも使えるためだ。

 体躯がバスケットボールくらいの大きさだけど、お腹が亜空間なのか体積以上に保管できるらしい。

 だが、間違っても最初に相棒パートナーにするモンスターではない。

 ボクのようにコネやお金がないならなおさら……


 スライムがボクを見上げながら体を上下に揺すった。


「うん……それならこれ!」


 ボクはさっき拾ったハートを差し出した。

 そもそもこいつハート食べてた? のになんでその人の相棒パートナーになってないんだ?

 所有物でない野生のハートとかもあるのだろうか。

 響きがすごい嫌だけど……


 そんなことを考えているうちにボクの手からハートを食べるスライム。

 一瞬、手全体を覆われたので手ごと食べられるかも、と不安になった。


 ボクの不安は杞憂に過ぎず食べた直後に淡く輝いたスライムの額にハートマークが浮かびあがった。

 赤い体に赤いマークなので、見づらいことこの上ない。


「よし……! これでボクとお前は相棒パートナーだ! これからよろしくな!」


 体を上下に揺するスライムの頭を撫でて、抱きかかえる。

 ぷにぷにしててとても抱き心地が良いけど、カッチカチにもなるんだよね……

 そんなことを考えながらボクは村への帰路をのんびり歩いて行った。

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