第8話 隻眼という名の魔物
「お~今日もこっぴどくやられたみてーだな~」
村に戻ってくると店前の掃除をしていたロプ爺さんがボクに気が付いた。
「ぐぅ……もう少しで勝てるはずだったんだっ」
ちなみにボクはスライムに一太刀はおろか、かすりもしていない状態だ。
「お前が稼ぐようになるのが先か、俺の店が潰れるのが先か不安になってくるな~! ガッハッハ!」
新人に店の命運を託さないでほしい。
ロプ爺さんは涙目で口を真一文字にしているボクを見て、さらに笑いながら店の中へ入っていく。
下手に慰められるより、あれだけ豪快に笑われたほうが、もう情けない気持ちというのも吹き飛んでしまうものかもしれない。そう思える程度にはなぜか気持ちが落ち着いていた。
スライムと戦う前に集めておいた薬草を換金し、酒場へ足を向ける。
やっぱり一日の疲れは酒場で飲んで癒さないとね……!
鐘付きのドアを開け、カウンターへ向かうとマスターがボクを見ながら、指を指している。
視線をそちらに移すと昨日の2人組の姿が見えた。
ボクは1席分の間を空けて座るとマスターが黙って、山羊のミルク練乳入りをボクの前に差し出した。
おぉ……なんか常連みたいっボクもいよいよこのステージに……いや、違う違う。今の目的は――
「アイス。昨日の情報は助かったよ。だから今日は私からも……どうやら『
「たしかにあれだけ長生きしている以上、隻眼が幻獣の魂を持っている可能性は高いですね……この異世界が創世された時に生まれるアイテム……
ちょっと話が大きすぎるんですけど……というかこの人たちはどこから情報仕入れてるんだろ。
でも……ほんとに貴重な情報をありがとう。
伝説の鎧に加えて、その貴重なアイテムまで手に入る可能性があるってことをボクは理解したよ……!!
ボクはすでにニヤケる顔が抑えきれない状態だ。
今日は我慢できずに思わず挑戦してしまったけど、急ぎつつもしっかり力を付けてやつに挑戦するべきだ。そう心に誓うと居ても立っても居られず席を立った。
110パルをカウンターに置き、マスターをチラ見していると笑顔と共に指先で丸を作っており、ボクはそのまま酒場を飛び出していった。
「突然変異の竜。隻眼のバハムートか……出来れば出会いたくないものだな……過去にライフ2000万個の強者が全てを投げうっても片目を奪うことしかできなかったんだからな……だが、やつが幻獣の魂……いや、この異世界の場合は『朱雀の羽根』か。それを持っている可能性は高い……」
「ハルト様の仰る通りですね……第1異世界の幻獣の魂は『玄武の甲羅』。第2異世界では『白虎の爪』。異世界が誕生した時に創られる神の力はパートナーを幻獣へと昇華する神秘を持つ……。伝承に謳われる幻獣の姿。一度は見てみたいものですね」
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