第38話

 よく寝た。

 呪いが悪化したか。


 だが、金が無くなるまで奴隷解放を続けよう。


 俺はギルドに向かった。


「お!イクスか」

「ドラグ、来ていたのか」


 ドラグは英雄の一人だ。


 狂わぬ狂戦士・ドラグ

 竜族で頭から角が生えている。

 背が高く、野性的な見た目をしている。

 大雑把だが面倒見は意外と良い。

 昔に俺・アクリスピ・パープルメア・ドラグの4人パーティーを組んでいた。

 パーティーのリーダーでもある。


「ああ、パープルメアから渡すように頼まれた。魔力の質を計測する魔道具だ」

「おお!これがあれば魔力チェックが楽になる」


 戦士・魔法使いなどの適性は魔力の質で決まる。

 もちろん性格の要素もあるが合わないスキルを磨いても芽が出ないのだ。


「それと、奴隷を買うんだろ?次は男らしいな」

「ああ、今日買いに来た」

「俺も付き合うぜ」


「受付嬢、案内して欲しい」

「分かりました」


 俺とドラグは受付嬢に案内されて地下に向かった。


「こいつだな。こいつがいい。性格は良いぜ!」


 ドラグはぱっと見て1人を選んだ。

 ドラグは勘がいい。

 悪い結果にはならないだろう


「ぼ、僕は戦士で大剣を使っていました。借金奴隷です」


 服を見ると1500万ゴールドとある。

 優しそうな顔で大剣使いには見えない。


「こいつにしようぜ。魔道具を使ってみたい」

「分かった」

 

「ここに手を当ててくれ」

「はい」


 魔道具に手を当てると戦士のランプが強く光り、次に魔法使いのランプが淡く光った。


「イクス、お前も確認するか?」

「一応やる。手を合わせて魔力を流してくれ」

「は、はい、よろしくお願いします」


 手を合わせて魔力の質を確認した。


「戦士で、少し魔法も出来る。動作確認よし!魔道具は良い感じだ」

「イクス、1人だけ買うのか?」


「まずは1人育ててみる」

「多く買ってもいいと思うが、相変わらずイクスは慎重だな」

「こういうのは小さく始めて大きくしていく方がいい」


「まずは支払いと奴隷契約をしましょう」


 今日は受付嬢のテンポが早い。


「分かった」


 俺は支払いと奴隷契約を済ませた。


「順番が逆になったが、名前を聞きたい」

「ジェンダです」

「かっこいい名前だな」

「あ、ありがとうございます」


 ジェンダ、剣を振ってくれないか?


「はい!」

「緊張しなくていい。肩の力を抜いてくれ」

「は、はい!」

 

 俺とドラグはお互いの目を見て苦笑した。


 外に出てジェンダが剣を振る。

 体格が頼りないように見えて剣をしっかり振っていた。

 身体強化の基本が出来ている。

 真っ赤な髪と青い瞳はドラグと同じか。

 武器まで同じだ。



「ドラグ、優秀なんだけど」

「優秀過ぎて初心者を育てる狙いと合わない、だろ?」

「ああ」


「でもいいと思うぜ。どうせジェンダを育てないと次の男奴隷を買わないだろ?すぐに結果を出そうぜ」

「ぼ、僕はいつでもダンジョンに行けます!」


「まずは食事と休養だ」

「イクス、今日行こうぜ。大丈夫だ」

「僕は元気です!すぐ行けます!」


「だそうだ」

「肩の力を抜いてくれ」

「は、はい!」


 めちゃめちゃ緊張している。


「まずはスライムのダンジョンからだ」

「は、はい!」


 こうしてダンジョンに向かった。

 ドラグも付いてくる。


 

 6体のスライムが現れた。


「行けるよ!」


 そう言ってスライムに飛び込んだ。

 1振りで2体を倒し、次の攻撃で3体を倒した。

 そして素早く残りのスライムを倒した。


「ボススライムも倒せるんじゃ?」

「行こうぜ」


 ドラグはぐいぐいと前に進んでいく。


 

 ボススライムが3体現れた。


 ジェンダは何も言わずに飛び込んで3体を難なく倒した。


「強すぎるだろ!」

「次は何がある?次に行こうぜ」

「近場だとアサルトアントとイートトードだ」


「僕は、アサルトアントと戦いたいよ!」

「分かった。行ってみよう」


 俺達は走った。



【アサルトアントの巣】


 ジェンダは体力もある。

 アサルトアントの4体にジェンダが飛び込む。

 

「やああああああ!」


 ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!ザン!


 アサルトアントが倒れる。


「イクス、クイーンを倒して来ようぜ」

「はあ?ジェンダがいるんだぞ!」


「こいつはソルジャーまでなら余裕で倒せる。要するにだ、護衛は必要ない」

「キャプテンだけ気を付ければいいか」

「そうだぜ。ま、危なくなったらイクスが守ればいい」


「分かった」


 ドラグは前に出てアサルトアントを倒していく。

 俺は後ろから倒れたアサルトアントを回収する。

 ジェンダはアサルトアントとアサルトアント・ソルジャーを余裕を持って倒していた。

 緊張していたようだが、戦闘になると集中するようで危なげなく倒していく。

 それにスタミナも高い。

 今日は連戦している。

 それでもまだ余裕が見えた。


 俺達はクイーンまでたどり着く。


「倒してくるぜ。グロオオオオオオオ!」


 狂わぬ狂戦士・ドラグは狂化状態となっても意志を保ち続ける事が出来る。


 ドラグがジャンプすると地面が轟音とともに陥没する。

 そして一気にクイーンに迫って大剣で斬り倒した。

 ドラグはボスキラーなのだ。


 クイーンを倒したドラグは何度もジャンプして飛ぶように戦う。

 キャプテンを狙ってすべて倒していく。


「キャプテンは全部倒したぜ!」


 そう言って狂化状態を解除した。

 俺達は3人で残りを全滅させた。


「な、大丈夫だったろ?」

「そうだな。帰ろうか」


「うまい飯屋を教えてくれ」

「普通にギルドの飯がうまい。ステーキがおすすめだ」

「おっし、早く帰ろうぜ」

「ジェンダ、走れるか?」

「行けるよ!」


 少しだけ緊張がほぐれたようだ。




 帰るとみんなが揃っていた。


「新しい奴隷ですか?」


 アクアマリンが話しかけてきた。


「次は男を育てる」

「え、でもふぁ!」


 アクリスピがアクアマリンの口を塞いでコチョコチョした。


「ふぐ、ふぐううう!やめ、ああ!」

「アクリスピ、ふざけすぎるなよ」


「呪いは大丈夫ですの?」

「まだ大丈夫だ」


「明日から新しい奴隷の配信したいよ」

「分かった分かった。明日から俺とジェンダ、それとニャリスでイートトードとうな竜のいる沼地な」

「ジェンダ君、よろしくね!」

「うん、こちらこそ」


 ジェンダはニャリスには普通に接している。

 俺が怖かったのか?


 ドラグは俺にアサルトアントを寄付した。

 その後お金も寄付した。


『アクリスピが150憶なら俺は300憶を寄付する。早く次の奴隷を買おうぜ』とか言ってステーキセットを3つ平らげていた。


 ギルドの宿屋にジェンダを泊まらせた後思った。

 ジェンダに初心者用の装備ではすぐに壊れるだろう。


 俺はジェンダの部屋に向かった。


 コンコン、ガチャ。


「ジェンダ」

「ふぇ!僕は着替え中だから!出て行ってよ!」


 そう言って防具を投げつけてきた。

 俺は急いで部屋を出た。


 思春期か。

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