第24話

「あ、アクアマリン、お、落ち着くのだ」


 パープルメアがアクアマリンを抱きしめた。


「嬉しかったのよね?大事にされて、嬉しかったのよね?」

「う、うん、おか、おかあさああああああん!!!」


『おかあさああああああああああああああああんん!』

『あれ、画面が歪んで、おかしい。ああ、そうか、俺も泣いているのか』

『ジーンと来る』

『お母さん最高!』

『お母さん神!』

『お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん』


 コメントがお母さんで埋め尽くされる。


「やめ、お母さんと呼ぶな!」


『お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!お母さん!』

『おかあさああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんん!』

『お母さん』

『オカアサン!』


 コメントがどんどん荒れていく。

 コメントが流れてよく見えない。


「アクアマリン、今日はゆっくり休むのだ」


 アクアマリンは首を横に振って泣き続ける。


 アクリスピとニャリスは何も言わず流れに任せる。

 ニャリスは受付嬢から紙を貰って何かを書き込んでいた。




 ニャリスはコメントが落ち着くまで待ってから話を始めた。


「はい、報酬の件に移っていいかな?」


『おk!』

『いいよ!』

『行ってくれ』


「報酬の発表だよ!

 私の報酬はボススライム13体で、130万ゴールド。

 アクアマリンの報酬は、

 アサルトアント56体で 545000ゴールド。

 アサルトアント・ソルジャー9体で 86万ゴールド。

 更にいいい!」


『ボススライムに比べてアサルトアントの報酬が低すぎん?』

『報酬=魔物の強さじゃないんだなあ。

 大量発生の討伐クエでもない限り素材の価値に依存する。

 スライム→ガラスやゴム、ビニールなど多様な用途がある。

 アサルトアント→強い割に甲殻とあごくらいしか使える素材が無い』


「アサルトアント・ソルジャーキャプテン!なんと134万ゴールド!」


『おお!高い!』

『高いか?アサルトアントとソルジャーを合わせた額にしかならん』

『十分高いだろ』

『そんなにいいもん?』

『希少価値だ。強いけど値段ほどの性能は無い』

『それより無双解説はよ!』

『無双解説希望』


「ん、私が説明する。まずイクスは自分の実力を隠すために銃弾の魔法を生成してソルジャーを倒すついでにゴレショを破壊した」


『はあああああ!もったいない!』

『お隠れになる為に手段を選ばないお母さん』

『でも、銃を持って無かったと思うけど?』


「ん、イクスは銃が無くても銃を撃てる。持っているハンドガンは飾り、目立たない為に持っているだけ」


『素手で銃を再現したのか!化け物すぎる!』

『やばい!トイレに行きたいけど目が離せない!!』

『お母さん魔王かよ!強すぎだろ!』

『魔道銃を作る錬金術師の俺涙目』

『本当に魔王感がある。強すぎるだろ!』

『キャプテンはどうやって倒したんだ?』


「魔法で倒した。実力差があれば魔法を見えないように使う事も可能。イクスはそういう事をする」


『いやいやいやいや!無傷だっただろ!おかしいおかしい!』

『魔法を見えないようにすると見えなくするために力を使うから威力が落ちるんだよなあ』

『つまり余裕でキャプテンを倒せるって事か?じゃあDランクも偽装か』

『ちなみにBランクなら時間を掛ければ倒せるレベル。でもばれないようにすぐ倒すのは無理だ』

『キャプテンを簡単に倒すにはBランクパーティーじゃないと無理』

『Bランクってエースクラスじゃないか!』

『なんの魔法を使ったの?』


「何の魔法を使ったかは、予想でも良ければ答えられる。パープルメア、ドレインで合ってる?」

「え?なに?」


 パープルメアはアクアマリンをなぐさめていたため話を聞いていなかったようだ。


「イクスがキャプテンを倒した魔法、ドレインで合ってる?」

「そうね、多分そうよ」


『革新の魔女でも分からないのか!』

『怖い怖い!お母さん怖い!』

『ラスボス感が凄い。ほんと魔王だわ』

『お母さん、何使ったの』


「そんな事は良いとしてアクアマリン、落ち着いたか?」

「こんな感じでいつも答えないのよ」


『こいつ、マジで答えないのな!』

『答えましょう。答えないのは良くないと思いますよ?そうやっていると魔王感が出て目立ってしまいます。後仮面を外しましょう。顔がもやもやしていて気になります。それとアクアマリンの装備の詳細も答えましょう』

『そこは答える所だろ!』

『こいつはああああああああああああああああ!』


 アクリスピが俺の顔に手を伸ばした。


「仮面に触るな!!!」


 アクリスピの手を払った。

 まったく、こいつは隙があれば仮面を外そうとする。

 だが俺はアクリスピを完全にマークしていた。

 こいつはこういう事をする。


 俺は前を向いているようでアクリスピの気配を常に監視していた。

 またアクリスピが手を伸ばす。


「やめろ!ふざけるな!!次は電撃を食らわせるぞ!!」


 俺は両手から雷撃を放ってアクリスピを痺れさせた。


「おかあ、ご主人様」

「アクアマリン?」


 俺は振り返る。


 アクアマリンが俺に両腕を伸ばした。

 抱きつくのか?


 アクアマリンが、


 俺の仮面を外した。


「え?」

「あ、つい」


『来たああああああああ!遂に顔と声を晒したあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!』

『ついに正体を現した!魔王の第二形態!』

「来た来た来た来た来たああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 コメントが荒れる。

 俺は固まった。

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