第23話

【アクアマリン視点】


 ご主人様とソルジャーキャプテンが対峙する。


「素手で戦うんですか?」

「ん?ああ、そうか。でも、もう終わる」


 ドスン!


「え?」


 ソルジャーキャプテンが倒れた。

 そして何事もなかったかのようにご主人様はソルジャーキャプテンを収納した。

 生きている魔物を収納することは出来ない。


 ご主人様が倒したのだ。


「え?何をしたんですか?なにも、分からなかったです」

「それよりもすぐに帰ろう。今日はゆっくり休もう」


 ご主人様はいつも答えない。


 パチパチパチパチ!


「さすがイクス、万能の救い手、瞬殺」

「アクリスピ、い、いつからいた?いつから配信していた!?」


「ん、キャプテンか、来いよ。相手をしてやる。の時から」

「最初からか!」

「最初から、ばっちり配信してる。アクアマリンのゴレショを壊しても無駄、全部配信してる」


「ご主人様が何をしているか分かりませんでした」

「ん、圧倒的な力の差があれば、分からないように倒す事も可能、後で解説する。解説動画を出す」


「はあ、はあ、待って、解説動画は私のチャンネルでやり、たい」


 ニャリスが追い付いてきた。


「く、くっくっく、アクアマリンが倒しかけていた魔物を奪ってしまったか。今後は気を付けるとしよう」

「もう無理、ごまかしは無理」


「まずは帰ろうではないか」


 ギルドに移動する。


「出来ればニャリスチャンネルの独占で解説動画を配信したいなあ。登録者数を増やしたくて」

「良い。それでいい。これからはニャリスチャンネルで配信する。そっちに飛んで」


 そう言ってアクリスピは配信を切った。


「あっしゃああ!これで登録者数5万は超えるぜええええ!いえええい!」


 ニャリスが喜ぶ。

 配信者はハイテンションな方がいいのかもしれない。

 私にはできない。



 ギルドに帰ると冒険者が謝って来るがニャリスが止めた。


「待って!新しいタイトルで配信を始めるから、一旦配信を終わらせるよ!お母さん魔王の無双ネタバレっとよし、配信開始!ニャリスチャンネルへようこそ!続きを始めるよ!冒険者さん、謝ってOKでーす!」


「あ、ああ、アクアマリン、すまなかった」

「私は、ご主人様が助けてくれましたから大丈夫です」

「俺たち、頑張って投げ銭するぜ。借りは返す。1人100万を投げ銭する」


「そ、そんなに!」

「くっくっく、受け取っておくのだな」

「魔王様は許してくれるって、それでは無双ネタバレをやっていくよ!」


 こうしてニャリスが司会進行を進める。

 手慣れている。


 コメントをチェックする。


『お母さんはこの配信に出ないかと思った』

『アクリスピタンが暴走しないように見張るんだろ?」

『出るしかないお母さんwwwwww』


 ご主人様の落ち着きが無くなっている。


 強いのに、


 隠さなくていいのに、


「わあ!質問が一杯だね!」


『報酬はいくら出た?』

『アクアマリンの首輪が光ったのは何で?』

『お母さん魔王の意味不明無双について詳しく』


「OK!まずは報酬から、時間がかかるから最初に納品しよ!」


 ニャリスとアクリスピがボススライムを出す。


「全部ニャリスの報酬でいい」


『大漁だ!』

『こうしてみるとすごいな!』

『回収を無視したスライムだけでもかなりの金額だとおもう』

『雑魚スライムの回収無視って強者感があるよな』

『さすが小さき巨人と期待の新奴隷』


「次はアサルトアントだよ!」


 ニャリスが私とご主人様を見る。


 私は大量のアサルトアントを出した。


『おお!大漁すぎる!』

『アクアちゃん、成長したなあ』


「魔王様も出して!」

「う、うむ」


 ご主人様が回収したアサルトアントのソルジャーとソルジャーキャプテンを収納から出す。


 ニャリスがソルジャーキャプテンにゴレショのカメラを誘導する。


『これがキャプテンか』

『頭にとげが生えてて気持ち悪い』

『無傷に見える。おかしくね?』


「報酬はアクアマリンに出すのだ。2人に分けると動画的に分かりにくくなるだろう」


『さりげなく報酬を寄付するお母さんwwwwww』

『気遣いお母さんだよなwwwwww』

『アクアマリンの首輪が光ったのは何だ?』

『復活効果だろ?』

『完全回復してなかったか?』


「魔王様、アクアマリンの首輪について話そ」

「う、うむ。あれは復活の効果がある首輪だ。以上だ」


「お母さん、もっと詳しく!」


 ニャリスがおどけてご主人様に近づく。

 ご主人様の落ち着きが無くなった。

 絶対に何か隠している。


「私から説明していい?」

「おお、革新の魔女・パープルメアさんの解説、聞きたいなあ!」


「イクスがアクアマリンに着けた首輪には復活の効果があるわ。そしてただ復活させるだけじゃないわ。魔力もスタミナもすべて回復させるエリクサーの効果を内包していて作るのが難しいわ。価値は、時価になるわ。そもそも作ろうとしても失敗するから出回ること自体少ないわ。私やイクスでも簡単には作れないわね」



「売れるとしたらいくらになるかな?」

「そうね、10憶、いえ、30憶ゴールド以上の価値になるわ。作ったのはイクスでしょうね。彼は何でもできるのよ?」


『はあ!30憶!おかしくね?』

『絶対に死なせたくない感が凄い』

『おかあさああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんん!!!』


『おかしくね?その30憶で奴隷を買って育てればよくね?』

『何か始める時は最初が肝心なのよ。もし仮にそうしてたらアクアが死んだだろ?アクアが死ぬ→奴隷を買って訓練して魔物を狩る行為自体に批判が出かねない。むしろ賢い選択』

『同意、最初に大きな問題が発生すればどんなにいい事をしても潰されかねない。トータルでみんなにプラスでも1つの事件で商会が潰されたりしてる。要するにただ騒ぐだけのバカ対策だな』


『お母さんのやろうとしている事を潰せば陰でこそこそ奴隷を買ってゾンビアタックをさせている奴らが勢力を増すだけ、お母さんを潰すのは間違っている』

『少数の声だけが大きいバカがこれまで色々潰して来た。それを続けてきたのが今までの流れだ。結果裏でこそこそと悪い事をする奴らが得をする奴隷労働が蔓延している』


『みんな考えすぎだ。お母さんは単純にアクアを殺したくなかったんだろ?』

『それもある。お母さんの行動は1手で複数の利点が出るように考えている気がする』

『策を張り巡らせて策に溺れるお母さんwwwwwww』


 コメントがどんどん流れていく。

 流れが止まらない。


 私の為に、そこまで。


 ご主人様が私に装備を作ってくれた時、呪いのまだらが酷くなっていた。


 そこまでしてくれて、私は。


 涙が流れて来た。


「う、うえええええん、う、うぐう、ええええん」


 私は、感情が溢れだして、泣いてしまった。

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