299 ミニにゃーこたちが踊る!
【おーい、本体。ギルドカードがねぇから複製して送れ。街に入れねぇんだけど】
アルがガンザルダンジョンのマスタールームのいると、ブルクシード王国へダンジョンの間引きのサポートに行った分身から、通信バングルに連絡があった。
しまった。その問題があったか。
『いや、複製するのはマズイだろ。おれのを送る。こっちは商業ギルドのカードが身分証明になるし』
アル(本体)は念話でそう返す。
国家間での情報は共有してないが、身分証にはなるのだ。そうじゃないと、商人が困りまくる。
【じゃ、それで。…っつーか、隠蔽かければよくね?門を通るぐらいなら大した魔力を使わねぇし】
『記録がねぇのは不自然…って、そこまで見てねぇか。隠蔽で』
【了解】
なるべく不正行為はなしで行きたいが、しょうがない。
転移魔法陣を設置しまくっていたアル(本体)は、入国審査はどうするか、と頭を悩ませた。商業ギルド上層部だけに口止めして置いても、カップラーメンの店舗を設置するとバレるワケで。
『ガーコ、入国審査と街に入る審査、連動してねぇんだよな?』
【はい。ですが、マスターは知名度がかなり上がっている『こおりやさん』店長ですから、不審に思う人も出るかと】
『よし、開き直る。どうせ、元々胡散臭いんだし、絡まれたら『説得』すればいっや』
【『説得』ですか?】
『そう。人に絡んで来るような奴らは暇で暇でしょうがねぇんだよ。その期待に応えて暇じゃなくしてやる』
職人に育ててやるのもいいかもしれない。細かい部品が多い時計職人とか。
…そういえば、自動巻き時計を作ったのはいいが、通信バングルに時計も内蔵されたおかげで死蔵になっている。
魔石を使う魔道具の時計しかないので、この技術も画期的だろう。
問題は腕時計だと錬金術でも細かい部品を作る難易度が高いことか。
そして、ルーペや使う道具の精度もよくなければならない。
まずは大きい掛け時計か置き時計を…自動巻きでは作れないので手巻き式を開発するか。
振り子時計は、構造は分かるが、作ったことがない。
時計自体は小学生の時に自由研究で作ったことがある。ゼンマイはさすがに買ったものだが。
ガンザルダンジョンに転移魔法陣を設置すると、アルは確認ついでにキエンダンジョンへ移動した。そして、作りたくなったので自宅の作業部屋に行き、手巻き式置き時計を作る。デザインはアンティークっぽく。
そういえば、からくり時計も見たことないな、とこちらは魔道具で作ってみた。決まった時刻にからくりが動く、というのは手巻き時計では作り難いので。
置き時計のからくりは六時間ごとに時計の下の扉が開き、舞台が前に出て来て同時に音楽が流れ、ミニにゃーこたちが踊るものだ。
歯車に磁石を付けて回しているだけなので大した動きじゃないが、見ていると楽しい。
【…マスター、また何かすごいものを作りましたね…】
キーコが感心して声をかけて来た。
「こっちの世界には時計はあるのに、何でからくり時計がないのか不思議なんだけど。魔法も仕込めるのに」
【何の魔法を仕込むんですか?】
「花火や光線や風。いっそ、時計塔作って街ごとに寄贈する?…っていうのも強盗ホイホイだよな…」
【ほいほい?】
「宇宙から来たかもしれねぇ大半の人間が嫌悪感を覚える、台所の嫌われ害虫を捕獲する罠の商標。…あ、見せしめってのもいいかも。街の景観は損ねるけど」
【ダメじゃないですか】
アルはふと思い付いて自動巻きの腕時計を出した。
「キーコなら、これと同じ物が作れる?」
キーコは分身のキーコバタを出し、解析するためにスキャンみたいな光線を自動巻き時計に当てた。アルがこういった、と説明したことがあり、キーコの解析も進化しているのである。
【からくりのない置き時計でもギリギリ、それ以上小さいそちらは無理だと思います】
「え、置き時計でもギリギリ?…ダンジョンで出すか、いっそ」
人間の職人が作れないのなら。
【その場合、置き時計でもボスドロップでいいと思います】
「庶民にも手軽にって思ったんだけどなぁ」
作れないのでは、付加価値が付いてしまうのも仕方ない。
【マスター、からくり時計は王宮に献上してはどうですか?街の景観を損ねず、いい試金石になるかと】
「お、それいいな。採用。王宮なら目立つように柱時計だな。どんなからくりにするか、キーコたちも考えて。急いでねぇからじっくりと」
【分かりました。置き時計とからくり置き時計、それにそちらの腕時計も、分解して詳しく解析をかけてよろしいですか?】
「もちろん。色々と試行錯誤してくれ」
さて、横道にそれたが、ガンザルダンジョンに戻り、カルメ国王都ガンザルに行こう。
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