297 まだ『鈍器にも使える』
夜食はすぐ出せるジンギスカン丼にした。
カーマインには洗面器のような大きな丼を錬成し、そこに盛った。
『ああは言ったものの、こっそりサポートぐらいはした方がいいのではないか?』
美味い!とジンギスカン丼を食べながら、カーマインがそう訊いて来た。
「神獣様はお優しいな。そんなに心配なら隠蔽をかけてついて行ったらどう?」
『そこまでするのもなぁ。その時に他のダンジョンで
「神獣様は一歩離れた所で見てた方がいいだろ。遠見スキルがあるんだし」
『ダンジョン内までは見えんがな。アルは?』
「おれ?おれは冒険者なんで好きな時に好きなダンジョンに潜るさ」
『お
「いやいや。これだけ頑張ったのに台無しにされたくねぇだけだって。騎士団や兵士たちがどのぐらいの実力かも知らねぇしな。おれがこんな所にいるのがバレたらマズイから、冒険者ギルドには顔を出さねぇけど。で、氷のドロップは冗談じゃなく、本気なんでまずは王都にあるサルタナダンジョンで出してみよう」
氷のサイズは立方体。ちょうどかき氷器にセット出来る感じで。15cm四方ぐらいだったか。
それを四個セットで7.5kgぐらい。肉ドロップのように食品によく使う大きい葉に包んで出す。
少々重いが、一個より溶け難くなるし、マジックバッグがあれば問題ない。不純物を除いた氷はただでさえ溶け難く、密度が高いので重い。この暑い国で氷をいらない人はほとんどいないだろう。
かき氷だけじゃなく、かち割って飲み物に入れたり、食べ物を冷やすのに使ってもいいのだ。
シロップはそれこそ、果汁だけじゃなく、砂糖水やはちみつ、冷製スープでも何でもありなので色々工夫して欲しい。
「あ、3階辺りでかき氷器をドロップすればいいんじゃね?自然と奥に行くことになるし」
『…そんなドロップありなのか?』
「何でもありがダンジョンだぞ。カップケーキやクッキーが出るダンジョンだってあるんだし」
『え、そうなのか!』
「かき氷器は、ウチの魔道具のようなふわふわ氷にはならねぇかき氷だから、サーコにかき氷器作って、と言って出て来るのでいいんじゃねぇかと。で、『こおりやさん』のかき氷器はエイブル国で登録。商業ギルドは他国とも繋がりがあるから、いずれブルクシードまで来るだろうし」
これでいいだろう、とアルは早速、サーコに連絡して、ドロップするよう指示しておいた。
ジンギスカン丼を食べ終わると、アルはかき氷の自動販売魔道具を一台出し、中を開けて改造した。
『ん?何やってるんだ?』
「改造」
『それは見れば分かるが、改造せねばならんようには見えなかったが』
「カーマイン専用に改造。お金を入れなくても器を置いてシロップボタンを押せばかき氷が出来る、ストロースプーンはいらない、容器もゴミになるから使い捨てじゃない皿があればいい。で、肝心の氷とシロップをしばらく補充しなくてもいいよう、たっぷり入れておく、だ」
『え、いいのか?貴重な物だろ』
「おれ以外にとっては、な。レア素材を使ってあるし、機能面でも値段なんか付けられねぇから、やたらな人間に渡すと、その人間を殺して奪う強盗が出るだろうけど、カーマインから奪えるような
カーマインなら自動販売魔道具を気軽に渡せる。
『それは確かに。しかし、見回りに行くから、わしがここにおらん時も多いんだが…』
「防犯設備はほぼ完璧だ。ドラゴンブレスでも耐えるし、杭を抜こうとすると、おれに連絡が来る。ま、ここに設置してあるとは誰も知らねぇだろうから、強盗なんざ来ねぇだろうけど。魔物や動物が触っても動かねぇよう、魔力登録制にしたし」
そう難しい改造じゃないので、すぐ改造出来た。
カーマインが使い易い洞窟奥に杭を打って設置。カーマインも生活魔法の【クリーン】が使えるので、衛生面でも問題ない。
早速、登録して試してみたが、問題なかった。普通に魔法で作れるアルだが、自販に不具合が出た時に使うため、アルの魔力も登録しておく。
『わしが誰かにご馳走するのは構わんワケだな?眷属とか顔見知りの魔物とか』
「もちろん。じゃ、容器をもうちょっと作って、ちょっとした食器棚も作ろう」
かき氷ならガラス容器だろう、と耐熱で丈夫で鈍器としても使える器だ。色柄違いでささっと作れる。
…というか、まだ『鈍器にも使える』とか出るのはどうしてだ。
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