228 柄巻きは青紫のスパイダーシルク
エレナーダダンジョンは60層からなる中規模ダンジョンだ。
50階までは地下洞窟・鉱山坑道タイプで51階からはフィールドタイプになり、51・52階草原、53・54階森林、55・56階渓谷、57・58階荒野、59・60階砂漠と二階ずつになっている。
60階のダンジョンボスフロアだが、砂漠フィールド内にあり、ボス部屋を探すことになる。
フロアボスは20階ごと。
転移魔法陣は5階ずつ、セーフティルームは各階層にあっても、ダンジョン内に泊まる冒険者たちは少ないだろう。
鉱物ダンジョンと呼ばれている程、鉱物が多いのは、つまり、重いドロップばかりということなのだ。マジックバッグを持っている冒険者ばかりじゃない。
魔物は無機物系、ゴーレム、人形ばかりだが、その種類はかなり多く、深層には普通の蜂サイズの小さい人形までいる。そんな小さい魔物は攻撃手段は集団攻撃か毒。どちらもだった。
さて、おニュー刀のデビュー戦だ。
アルは久々に剣帯を出して刀を腰に差す。どうせなら居合も試したい。
浅い層は新人冒険者に譲り、邪魔な魔物だけ切り捨てて走り抜けたが、あっさり過ぎる程、あっさり斬れる。
『石のゴーレムは斬撃武器では折れることもあるので、メイスや斧のような打撃を与える武器で足から砕くべし』
これがセオリーらしいのだが、やはりアルは例外らしい。
頭か胸に魔石があるのでそれを砕くか切ると倒せる、というのもアルには何だか当てはまらず、手足を斬ってもドロップに変わる。
一定以上の斬撃だと衝撃で内部が壊れるのだろうか?
戦闘不能になった所で負け確定でドロップになるのだろうか?
…どちらもかもしれない。
本来、初心者にゴーレムは荷勝ち過ぎなのに、このダンジョンでは推奨されてるのはそれが原因らしい。
走り抜けながら、初心者・初級冒険者たちの戦いぶりを見た所は。
他のダンジョンのゴーレムでも同じだと思うとかなり危険だと思うが…まぁ、アルがダンジョンマスターになったら、もう少し考えよう。
深い層に行くにつれ、ゴーレム・人形の動きが速くなって行き、ドロップ品の鉱石の粒も大きくなる。
フロアボスはやはり人気らしく、20階はリポップ待ちだった。
倒さないと進めない構造だったら、かなりの足踏みになっただろうが、このエレナーダダンジョンではクラヴィスダンジョン100階のような仕様はない。
物足りないなぁ、とアルは思いつつ、31階のセーフティルームで休憩することにした。
そこそこ冒険者がいて、難易度がまだまだ低いからか、パーティだけじゃなく、二人、三人の少数パーティ、ソロも多い。
アルはいつものようにソファーセットとコーヒーテーブルを出し、まずは刀の点検。欠けたり曲がったりヒビが入ったりはしてないと思うが、目視でも鑑定でも確認。
【一般的な合金刀・切れ味特化武器】
買った時の鑑定とまったく変わっていない。
刀の柄に巻いてある布が少し滑るので布を取り、トカゲ革で巻き、スパイダーシルクの青紫の糸で巻いて行く。
柄巻きと言ったか。捻って巻いてクロスしてグリップよくして行く手法だ。異世界産刀は単に布を巻いてあるだけなのも、少々気に入らなかったり。
一割ぐらい巻いた所で錬成する。握り具合を確かめて、素振り。
…よし、大丈夫そうだ。
鞘に付ける組紐も同じ青紫糸で錬成して取り付けた。端は房で。
お茶するのに刀は邪魔なので【チェンジ】で収納し、替わりにお茶セットを出す。
ダンジョン内は適温だが、動いていたので少し暑い。冷たいレモンティーに。お茶菓子はプチシュークリーム。
「甘いもんよこせ~」
一昨日の夜、そうボルグにねだられて錬成した物だ。
カスタード、生クリーム、生クリームジャム、チョコクリーム、と四種類だ。ボルグや他の人たちにはしっかりと料金はもらっている。
周囲でゴクリッと唾を飲み込む音がしていても気にしない。
高級店になるが、アリョーシャの街でも洋菓子店はあったのだから、王都にないワケがない。
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