214 ごみ拾い隊結成!

 かき氷と冷水の自動販売魔道具設置がそれなりに広まって行くと、行列も長くなって来たので、台数を増やして対応したが、ゴミが散らばり始めたのは頂けなかった。

 ちゃんとゴミ箱は設置してあるのだが、行列に阻まれて見えなかったり、そこまで行けないということもあった。ラーヤナ国王都に比べて、パラゴはゴミ箱も少ない。


 ゴミ箱を増やしたものの、すでに散らばった物は片付けねばならないのでにゃーこたちを呼び寄せ、背中にカゴを背負ってゴミ拾いをしてもらう。アルも、だ。

 カゴの内側には結界を施し、残っている水滴が溜まって背中が濡れないよう配慮。もちろん、ゴミバサミ(火バサミ)もセットだ。


 ゴミ箱は普通の大きいだけのゴミ箱なので、溜まって行けば、溢れることにもなる。底にマジックバッグを仕込むことも考えたが、それだとすぐバレて自販だけじゃなく、ゴミ箱も狙われるので、アルが歩いて中身だけ収納して回った。

 にゃーこたちが集めたゴミも同じく。それが一番早い上、ささやかながら収納のレベル上げにもなる。


 ゴミのポイ捨てをする連中も当然いたので、注意しても反省しない場合は、強制的に反省させるべく『ゴミ拾い隊』に加えた。

 現地調達でこれはこれで助かる。にゃーこたちは有能だが、可愛いので誘拐リスクも高いのだ。


 パーコバタにマジックバッグを使いゴミ箱のゴミ回収をさせてもいいのだが、さすがに不自然過ぎる。王都のように人が多い所だと、「誰かが回収してるんだ」でさほど疑問は持たれないのだが。そう大きくない街ならではだろう。


「可愛いにゃーさんだ!にゃーさん!」


「あら、ダメよ。にゃーさんはお仕事中だからね」


 にゃーこはやはり子供にも人気が高い。


「暑いのに大変ですねぇ」


「頑張って下さい」


 しかし、そう労われるということは。


『パーコ、にゃーこは着ぐるみだと思われているのか?魔導人形じゃなく』


【どうやらそのようです。王都でもにゃーこたちのように滑らかに動き、時には複雑な作業をする魔導人形もあまりいませんから、着ぐるみだと思っていた人たちも多かったと思います】


『そうだったのか。まぁ、それなら問題ない。人間の誘拐になっちまうから、と思いとどまる連中もいるだろうからな。…っつーか、中身は可愛いとは限らねぇワケだしな』


 小柄な人間サイズのにゃーこたちなので、中身は小柄なおっさん、という可能性もある、いや、真夏にこんな重労働をするからには、と考えていると思う。

 中の人はいないので、お揃いのエプロンをした可愛いにゃーこなのだが。


 ゴミも大分片付いた後は、にゃーこたちは帰し、強制的に働かされていた『ゴミ拾い隊』も初期メンバーは解放し、次第によく働くようになったのでバイト料に銀貨1枚ずつやった。短時間でこの報酬は割といい。アメとムチである。


「また何かあれば声をかけて下さい!」


 機嫌よく帰らせ、そんな言葉まで言わせるアメ。まったく安いものだ。それを見た、まだ解放されない『ゴミ拾い隊』メンバーもやる気になる。

 あいにくと、銀貨がもうあまりないし、ゴミ回収と様子見ついでに商業ギルドに両替に行く。


「あ、アル様。猫の着ぐるみを譲って欲しい、という問い合わせが来ていますが、いかが致しましょう?」


「却下。あのにゃーこたちはゴーレム」


「…ゴーレムだったんですか。…あれ、でも、かなり動きが人間のような感じで指示されなくても、ごみ拾いをしていたようですし…」


「特別なゴーレムなんだよ。学習して成長するから、某所で育ててる。普通のゴーレムとどう作り方が違うのか、詳しい所はよく分からねぇ。おれが作ったもんじゃねぇから」


「…そんな凄腕のゴーレム使いがいるんですね…」


「そ。にゃーこたちはもう帰したからいない。フォボスの街でも人気で誘拐されそうになったんで。魔導人形と勘違いしてたけど。あ、で、両替を頼みたい」


 当初の目的を切り出すと、トリノは快く両替をしてくれた。両替の魔道具があるので簡単である。


「アル様、魔道具師ギルドが後日、是非ともお会いしたい、という申込みが来ています。どうしますか?」


「え、魔道具師ギルドなんてあったんだ?」


「マイナーなので中々知られていないんですよ。商品は店に並びますし、何か作って欲しい時も店を通しますから」


「錬金術師のように囲い込まれるのを防ぐ目的か、一応」


「はい。その通りです。密かに協力してくれている錬金術師も少しはいますけどね。魔道具師だけでは作れない物も多いですから。マジックバッグについての詳しい話が聞きたいようです」


「断っておいてくれ。実のある話が聞けなさそうだし、つきまとわれそうだから」


 アルにメリットがなさ過ぎる。


「では、そのように」


 トリノも受けるとは思ってなかったから、着ぐるみの件から切り出したらしい。


【マスター、キーコバタです。そろそろ休憩なさってはどうでしょう?朝からまったく休まれてませんし】


 そこに、キーコバタが通信バングルでそう伝えて来た。そういえば、そうだ。もう十一時近い。


『ありがとう。そうする』


 アルは高ステータスで中々疲れないが、それは身体だけの話だ。精神的には普通に疲労する。

 『ゴミ拾い隊』のフォローもコアバタたちに任せ、アルは休憩することにした。どこにいても転移で一瞬なので、ダンジョン温泉に帰り、炭火と網を用意してうなぎを焼きながら、お茶した。


 この暴力的な香りと視覚的インパクトは、かなり注目を集めてしまうので、やたらな所で焼けない。香りは結界で防げるにしても。

 アルはついでにご飯の在庫も増やすことにした。

 予想以上に迷惑をかけているので、トリノにもお昼に差し入れてあげよう。

 …うん、あまり休憩じゃない。

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