206 結界の効率化!
…ん?ふと何かひかっかった。さっきのキーコバタの言葉の中の何かが。
言葉を思い返す。そんなに長い内容じゃなかった。
「あっ、『マスターの魔法が早々解けるとは思えない』か!」
ポータブル結界の仕組みを根本からひっくり返して、結界魔法を発動するのではなく、あらかじめアルが早々解けない結界を張っておき、取り出せるようにすればいいだけでは?
範囲は指定されるが、余裕を持った広さにすればいいだけで。それなら、水を出す魔道具程度しか魔力も使わないし、魔石もそこまで高ランクじゃなくてもいい。
…となると……。
「自動販売魔道具、もっと効率化出来るじゃねぇか…」
自動販売魔道具を守る結界も稼働中は、結界魔法を発動するものであり……。
一体、何日保つのか、検証せねばなるまい。
いや、キーコなら結界そのものを分析して分かるのか?
キーコに訊いてみると分析すれば分かる、とのことだったので、早速、色んな大きさの通常結界、防音結界、防音防臭結界、防音防臭断熱結界、と色々作って分析させてみた。
アルの結界は特に魔力を込めていない結界でもドラゴンブレスを防げる。
持続時間は大きさと機能に関わらず、三年以上は確実、という結果が出た。
…キーコが分析出来てよかった。そうじゃなければ、一体いつまで、と思いながら検証することになっただろう。
ちなみに、ダンジョンの魔力を元に無尽蔵に魔法が使えるコアでも一年がせいぜい、そこまで保つ結界は無理らしい。
アルが使う魔法とこの世界の人が使う魔法とは根本的に違うようだ。
ゲームのイメージと物理法則を知っているからこその違いのようだが、この世界の魔法はどういったものかが分からないので、検証は出来ない。
『マスター。思ったのですが、マスターの結界は足場結界のように短時間で消えるようにも、曇りガラスのようにも形を変えることも出来るんですよね?容器に応用してみてはどうでしょう?時間停止のマジックバッグに入れて販売すれば、回収の手間が省けます』
「…!!その手があったかっ!」
『しかし、マスターに負担はかかりますよ。わたしたちにそんな短時間限定の結界を作るのは無理ですから。何らかの素材で出来ないか考えてみます。人体に負担がかかるものなら簡単なんですが』
「こらこら、ダメだからな」
『分かっております。塵はどうしても残ってしまうような…
「こらこら、方向性が変わってねぇぞ。揮発するので安全なのはねぇからな?塵ぐらいはよし」
『はい』
さて、風呂から上がってラーメン作りをするか。
どうも露天風呂に入ってる時は色々と考えてしまう。リラックスするから考えも捗ることもあるのか。
アルは海水と材料を揃えてから、キーコバタに連絡すると、すぐに戻って来た。
『バカな受付嬢、影に沈められたままで誰にもどうにも出来なくて困ってました。『ざまぁみろ』ですね』
「うるさく騒いでなかったのか?」
『そんな元気もないようです。首だけ出てるんですから飲み食いは大丈夫ですよね?不思議です』
「座れねぇし、公開垂れ流しだからじゃね?顔だけしか見えねぇにしても」
『見えなければ平気では?そういった機微はよく分かりませんが』
「平気じゃねぇだろうな」
『マスターは分かっていてああいった罰を与えたんですか?』
「もちろん。もはや自慢するしかねぇけど、散々嫌がらせされて仕返しもしたせいで、嫌がらせバリエーションは豊富にあるんだよ。魔法がない世界だと物理的に身動き取れなくした程度だけどな」
『程度…』
「シヴァの容姿の印象が強いんだろうけど、小さい頃はこんな感じでさ」
アルは久々に【変幻自在の指輪】を装着して、小さい頃の元世界の自分になってみた。見せかけだけなら、服もイメージすればいいので。小学一年生、七歳の頃になってみた。
鏡を出して確認してみる。うん、そのままだ。
『…なんて可愛い…』
「誘拐多発時期。で、十三歳でもこのぐらいだったんで女子からも妬まれたり恨まれたりでさ。女顔はおれのせいじゃねぇのに。ちなみに、勘違いした野郎どもにも勘違いしなかった野郎どもにも、肉食系女子たちにも襲われまくった。返り討ちにしたけど」
『罪作りですね。ここまで可愛いと。大人になっても美人だと言われるワケですね。お母様似なんですか?』
「そう。妹ともそっくり」
アルは【変幻自在の指輪】と鏡をしまい、さて、とエプロンをし、ラーメン作りを始めた。
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