204 透明人間の盗賊団討伐

 さて、依頼も終わったことだし、ダンジョンの特殊アイテムの検証をするか。

 やはり、各ダンジョンで特殊アイテムが根幹に設定されていた。

 それが何かはコアにも分からないが、どれもダンジョンエラーで出るようになっているらしい。


 キラキラ宝箱の素材についても、コア側はまったく関知しておらず、しかし、アルが分解しているのを見ても、キラキラ宝箱によって合金がバラバラで、レア素材が出るのも今まで疑問にも思わなかったらしい。

 そういったものだという洗脳が施されていたらしく。…いや、脳はないので、設定として疑問に思わないよう組み込まれていたようだ。


 おかしいことに気付いたのは、アルと接することが多いキーコである。コアに訊いても分からない。そういった風にしたかった『誰か』がいるワケだ。


 そして、合金から出るレア素材はコアが出せる物が大半。

 【道標の珠みちしるべのたま】が特殊だった。

 しかし、中には出せない物もあり【悪魔の眼球】も【フェニックスの羽】も【星のかけら・隕鉄】も出せなかった。似たような効果の物は出せる。


 どういった基準かはイマイチ不明だが、これからもキラキラ宝箱を集めるべき、というのは分かった。こちらが分からない物はコアとて出せないのだ。


 【道標の珠みちしるべのたま】と【賢者の石】【オーブ】【虹貝の貝殻】ガラス、鉱物その他を使い、何でも探せる【ぐーるぐる】を作ることは、まだまだ素材が足りず出来なかった。

 命名はアルである。

 探すだけじゃなく、ナビ機能も地図表示機能もあるのでこれ程、ピッタリな名前はないが、某検索エンジンそのままだとマズそうなので、ちょっと捻ってみた。


 足りないのは【星のかけら・隕鉄】。持っている量では全然足りないのだ。魔力を溜める性質があるので魔力タンクに使うのだろうが、他の代替品では容量が足りない。

 まぁ、こんなことだと思った。後一つという所までレア素材を持っているアルがおかしいのだ。

 商業ギルドのコネが出来たので、キラキラ宝箱を探してもらおうか。ああ、冒険者ギルドに依頼を出してもいいかもしれない。


 バイクで飛ばして走っていると、やはり気持ちいい。後ろを気にしなくてもいい、というのはやはりいい。

 荒れ地を走れるようにはしてあるが、デザインはロングドライブに向いているクルーザータイプなのに、絶妙な弾力のタイヤとサスペンションのおかげで困ったことがない。泥にハマって空転することもない。

 ハマったのなら飛行モードにするだけなのだが、それ以前にアルの膂力りょりょくだけで十分かもしれない。


 街道を走っていると時々、荷馬車や箱馬車、隊商と遭遇するが、別に用事もないのでスルー。

 しかし、騎士二人はスルー出来なかった。何かあったらしく、馬に負担がかかる早駆けをしていたからだ。


「どうかしたか?Cランク冒険者のアルだ。こちらの魔道具の方が早いから、急ぎなら手助けするぞ。馬が可哀想だし」


 アルはギルドカードを見せつつ、並走する。


「それは助かる。クレモナの街に指名手配の盗賊団が現れ略奪を始めたため、隣のラジャスの街に応援を呼びに行く所なんだ」


 騎士たちは馬の速度を緩めて止まったので、アルもバイクを停めた。


「って、騎士なのに?その場合、呼びに行くのって警備兵じゃねぇのか?」


「わたしたちはこの辺一帯を治めるネルソン侯爵の騎士だ。たまたま、ネルソン侯爵子息のルカン様が視察をしていた時に遭遇してな。警備兵に加勢しても急では連携が取れないと、命令されたのだ」


「それもそうか。じゃ、ラジャスの街に送ってあげよう。医者も必要になるだろ?」


「それはそうだが、送るとは?」


「影転移が使える。ラジャスの街は前に行ったことがあるしな。お馬さんごと門前に送ってやるよ」


「…え?影魔法の転移はそこまでの距離は…」


「おれは例外なんだよ」


 まだクレモナの街寄りだが、このぐらいなら本当に影転移だけで送れる。


「じゃあ、申し訳ないが、頼めるか?報酬は後になるが…」


「別に期待してねぇよ。気にすんな」


 アルは騎士二人をさくっと影魔法で送ってやった。

 そして、自分はバイクをしまい隠蔽をかけてから、クレモナの街の上空へと転移する。

 盗賊団がどこで暴れているのかはすぐ分かった。

 止めようとした警備兵が切られて、悲鳴が上がっていたからだ。


 アルは警備兵のすぐ側に転移し、盗賊は影拘束で縛ると、すぐに切られた警備兵にヒールをかける。鎧で止まってさほど深くなかったのは幸いだった。


 盗賊は影拘束を解くと手足を折って、空へぶん投げる。簡易足場結界に乗せて置いた。10mの高さがあるし、コップ型なので落ちない。まぁ、落ちたら落ちたで別にいい。


 さて、次…とアルは隠蔽をかけたまま、盗賊を倒して行き、盗賊以外の怪我人にはヒールをかけ、盗賊は途中から広場に埋めて行った。うるさいので周囲に防音結界をかけて。


 アルが捕まえた盗賊は全員で57名。

 盗賊団などと言うから百人以上はいるかと思いきや、身体強化を使う奴と魔法を使うのがいる程度で、練度は警備兵以下。既に捕まっている盗賊も十人いたし、応援を呼ぶまでもなかったのでは。

 まぁ、強ければ盗賊なんてやってないか。


 このままだと王宮の中庭の二の舞で、掘り出せる人がいなくて景観が悪くなってしまう。

 なので、土魔法で檻を作って、その中に放り込んでおいた。

 ギリギリの大きさなので身動きも取れないし、そうなると集中する必要がある魔法も使えないが、念のため、土魔法でテープを作り口を塞いでおく。鍵は警備兵の部屋に届けておこう。

 出せなくても構わないので、ひっそりと。テープは時間がくれば土に還る。


 ボスがどこかに隠れている、ということもあるかも、とじっくり探してみたが、そんなことはなかった。


 ちなみに、アルが手を出したのは善意からではない。

 盗賊連中が我が物顔で好き放題に暴れているのが腹立つからだ。ワケの分からないまま倒され捕まったことで、いつ、どこから襲われるか分からない、という認識を与えた。

 しばらくは恐怖を味わうがいい。

 盗賊は基本的にバカなので、それ以上は覚えていられまい。


 さて、では、旅の続きをするか。

 その前に昼飯を食べよう。

 この街では騒がしいので、ディメンションハウスで一人気楽に。

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