191 SSランクのギルドカードはルビー付き

「ま、まぁ、ともかく、メリットは少なくてもSSランクに昇格するのは別にいい、ということでいいのか?」


「ああ。おれと敵対すると国が消えるかもしれん、となると敵対出来んだろうし」


「…おいおいおい、何故、一気に国消滅…」


「上層部が消えると国として成り立たんから。復興したとしても別の名前を付けるだろ。縁起悪いし、仕切り直しという意味でも」


「……確かにまぁ、そうかもしれんが…もうとっくに貴族に絡まれたことがあるのか?」


「そこそこ。友人の友人が領主に不当に拘束されたこともあるし」


 アルのことだ。

 …あ、そういえば、領主から没収した書物がアリョーシャの街の冒険者ギルドに届いているハズだ。

 二ヶ月弱も経つのだから。


 近々アルになってエイブル国のアリョーシャの街に戻るか。

 王都フォボスからバイクで陸路の旅を楽しみつつ。

 護衛依頼をそこそこは受けてもいいか。

 荷台に乗せるやり方で。馬車の旅は本当に遅いのでたらたら進んでいられない。


「シヴァ殿が助けた、と?」


「いや、友人に事後報告されただけだ。友人の友人は自力で解決したが、強引な手段を使っていたから何かあれば力になって欲しい、と」


 ダンならそういったことをしそうだが、当事者がアルだと「へー」で流すだろう。どうにも出来ないと知っているので。


「その友人は貴族のことがよく分かっているな。どこかで繋がっていて面倒なことになり易いんだ」


「そうだろ。ま、貴族にも例外はいるが、本当に少数だし。…お、来たな。商業ギルド」


「ああ、呼びに行かせていた。では、倉庫の方に移動しよう」


 ドロップ品を広げられないからだろう。

 移動した倉庫には長机がずらっと並べてあった。


「シヴァ殿、読み上げるドロップ品と数を机に並べてくれ」


「分かった」


 大型ダンジョンがある街のギルドなだけに、こういった買取も慣れているらしい。

 一々騒いだりはせず、テキパキと進む。

 食材は全部買取に出さないが、今後の参考のため、リストには載せてある。その旨も書いておいたので食材指定はない。

 レアアイテム、レア武器・防具の類のほとんどは買取ってもらえなかった。

 値段が付けられないものばかりなのだから、しょうがない。


「そういえば、ここのダンジョン産じゃないが、エリクサーはいらないのか?三本出せる」


 実際は二十本以上ある。

 コアたちに貰ったものではなく、自作で。

 この辺はこだわりだ。


「欲しい!…しかし、そこまでの予算は…」


「商業ギルドで三本とも買取ります!しかし、オークションに出された方がいいのではないでしょうか」


「面倒臭い。ドロップ品の買取でかなりの額になるんだから、そこそこの価格でいい。一本金貨100枚でどうだ?」


「…安過ぎませんか?」


「ダンジョンの下層だと割と出る」


 ドロップ率のいいシヴァでもドロップしたことがないので、後でコアたちに出すよう言っておこう。


「…あっ!そういえば、Cランク冒険者の大怪我、シヴァ殿が治したんだってな?エリクサーで?」


「エリクサーでも間に合いそうもなかった大怪我だったんで、先に回復魔法で腕を繋いでから、エリクサーで。あいつらは借金持ちだそうだから、タダ働き。他にも結構タダ働きはしてる。それに比べたら値が付くだけいい、と思うもんだろ」


「……実はかなりお人好し、なのか?」


「まさか。後で貸しは返してもらおうと、しっかりとチェックしてある。ステータスまで鑑定出来るからな。おれだとイマイチ効果が分からん薬とかアイテムとかの被験体になってもらおうかと考えている」


 脅しじゃなく、本当に。命の恩人なのだから、キュアやポーションで治る程度の怪我や不具合ならいいかと。


「…ええっと、シヴァ様、エリクサー、一本金貨100枚で本当にいんですね?」


 冗談には聞こえなかったらしく、商業ギルドのギルドマスターはスルーして話を元に戻した。


「ああ」


 金貨100枚なら冒険者ギルドにも、ということで一本買い、商業ギルドは二本ということになった。


「隣のネストの街の冒険者ギルド、商業ギルドでもドロップ品を買取りたいと言って来ているが、どうする?」


「歓迎。何なら持って行くぞ。近辺の街にも訊いてくれ。中級・上級ポーションの在庫もたっぷりある」


「そう言ってもらえると助かる」


 すぐに通信魔道具で問い合わせると、是非とも、とのことだった。

 では、午後から回ろう。


 その前に、受付にてSSランクにランクアップ手続き。

 もうギルドカードは作ってあったので、今までのギルドカードは返し、新しいカードにシヴァの魔力登録だけだ。


――――――――――

 SS Rank SIVA

――――――――――


 ギルドカードの素材は、Sランクと同じミスリル合金だったが、黒地に文字を刻み金を流し込んであった。右下には冒険者ギルドのマークにも小さいルビーが埋まっている。ちょっとした特別感の演出だろう。

 3×2cmとギルドカードは元々小さいのでタグと言ってもいいのだが、どこもカード呼びで統一している。

 裏には冒険者登録の日付とキエン、アリョーシャ、ミマス、クラヴィスの攻略日と名前。

 そして、『クラヴィスダンジョンで昇格』とまで銀色の小さな字で入っていた。


 ギルドカードはペンダントとして使う人が多いからか、穴が空いているが、シヴァはそのまま使っている。

 マジックバッグに入れておけばなくすこともない。

 アルがバチカンを付けてペンダントにしているので、かぶるのも、というのもあった。

 いくら、一般的だとしても。後で短いチェーンを通し、キーホルダーにしておこう。付ける鍵はないが。

 確認すると、シヴァは【チェンジ】でギルドカードをしまっておいた。

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