154 不可解な行動をするのが人間だと思っています

 あまりにも美味しかったうなぎを狩りに、ミマスダンジョン24階。

 飾りだけになってしまっているので、シヴァはナイフ投げで仕留めることにした。練習はしているのだが、そこそこなので投擲スキルはまだ生えてない。

 こんな時のために、錬成で投げナイフは量産してある。

 …まぁ、練習でも的に刺さったナイフを一々、取りに行くのが面倒で大量に作ったワケだが。


 1m~2mと太くて長い大きいうなぎだが、頭が急所なのは変わらないので、眉間…頭頂部を狙って投擲。

 狙いは多少外れても、ほとんど膂力りょりょくで粉砕している。

 ちゃんと称号は切ってあるのでうなぎの身のドロップも多かった。


 投げナイフなので投擲に向くよう重りが付けてあるワケだが、本来、威力としては大したことがない。シヴァが膂力りょりょくで粉砕してしまっていると、投げナイフ自身が酷いことになってしまった。

 切っ先が潰れているだけならまだいい方で、折れたり曲がったり潰れたり。

 後でもう少し細くして丈夫な素材で作り直すか。


 ナイフ投擲術、とならず、投擲術を期待しているのは、投げナイフなのに石と大差ない扱いをしている自覚があるからで。

 サクッと刺さると気持ちいいのだが、動かない相手にしか成功していない。



 命中率が上がって来たので、ひと段落した所でステータスボードを表示させてみた所、【投擲術】が生えていた!

 ついでに素早さもSに。これはいつ上がったのか分からない。

 本気で動いてないので、差が分からないからだ。HPもいつの間にか1万台に。

 ここまで高ステータスになると、ふーん、な感じがとってもする。ある程度上がったら結構どうでもいい。

 必死にレベルアップしている人たちに怒られそうだが、隠蔽でバレないので問題ない。


 24階のうなぎを狩り尽くした後、シヴァはディメンションハウスに行き、投げナイフを錬成し直した。

 丈夫な合金で更に【硬化】を付与して。


「う…柄まで刺さるってさ…」


 練習用の的に向けて投げたら、新しい投げナイフは柄まで刺さってしまった。

 的の強化も必要だったか。

 あまり硬くても刺さらないし、柔らか過ぎても粉砕されてしまうので、加減が難しいのだ。

 自分のナイフ投げの腕を信用していないので、囲むようには結界が張ってあり、的以外は刺さらない。

 ナイフの硬さはこのぐらいでいいだろう。


 スッポンの甲羅には弾かれそうなので、もう一種類【切れ味強化】付与の投げナイフも作る。

 すぐ見分けが付くよう柄に青いラインを入れる。


「あ、ヤバイ!危ない所だった!」


 ホルスターも強化しないと、スルッズバッ!と行きそうだった。

 …いや、ステータスが高いので怪我はしなさそうだが、ズボンは切れる…切れるか?上位種のスパイダーシルク混で斬撃耐性があるのに。


 まぁ、ともかく、ホルスターも作り直した。

 錬金術が使えると作り直すのも簡単なので、素材が無駄にならなくていい。


 そして、38階に転移して、スッポンを狩りまくった!

 思惑通りに斬撃強化ナイフはいい仕事をしてくれた。

 投擲スキルが生えたおかげで範囲攻撃も出来るようになっている。【ナイフ投擲術】が生えると嬉しいが、まだ先だろう。


 ダンジョンの魔物ならナイフを引き抜く手間もいらず、ドロップする時にそのまま落ちるので、ドロップ品と一緒に収納してしまえるのもよかった。

 すると、手を触れずとも【チェンジ】でいつでもホルスターに戻せる。弓矢も同じく補充の手間要らずだろう。

 しみじみと汎用性が高い魔法だった。


 大剣も使わないと、とその後、シヴァはダンジョンボスのグリーンドラゴンも大剣だけで討伐した。

 細切れになっても小さい竜になり、少し待つと育って大きくなって増えて行くので、鍛錬相手にはちょうどよかった。

 そういえば、ブレス攻撃に結界はどれ程、持ちこたえるのだろうか?…とワザとブレスを受けてみたが、通常結界でまるで平気だった。


 ドラゴンブレスにはもっと魔力を注いだ頑丈な結界じゃないとダメかも、と思い、徐々に魔力を減らしてみた結果。初期設定でかなり頑丈な結界だった、ということだ。


 グリーンドラゴンを大剣だけでどうやって討伐したのか?というと、細切れよりもっと細かく、料理のみじん切りレベルまで切り刻んだだけだ。

 ミートソース、ならぬ、ドラゴン肉ソースが作れるレベルのほぼミンチに。さすがに復活はしなかった。


【マスター、ドロップ希望はございますか?】


 ドロップに迷ったらしく、ミーコが通信バングル経由で念話を送って来た。


「魔石とたっぷりのドラゴン肉で」


【かしこまりました】


 ぽんっと手元にドロップしたのを、シヴァはすぐ収納した。


「ミーコ、『ダンジョンマスターなんだから、命じればいいだけなのに、何やってんの、この人』とか思ってる?」


 ちょっと訊いてみた。


【不可解な行動をするのが人間だと思っています】


「それもまた正解だな」


【マスターは本当にお強いですね。なのに、慢心しない。それも不思議です】


 ミーコは結構話すタイプらしい。


「自分ではあまり強いと思ってねぇだけ。キーコがスゲェ反論しそうだけどさ」


【反論したくなる気持ちが分かるような気がします。キーコが一番マスターの規格外さを思い知ってるでしょうから】


「そういや、ミーコ、かなり前にマスターがいたんだっけ。話し方が流暢だ」


 【冒険の書】にそんな情報も載っていた。

 前マスターはここの攻略はしてない。

 アリョーシャダンジョンコアが、出して来たことのある【マスターキー】のようなマジックアイテムを持っていたらしい。

 どこかのダンジョンマスターじゃないとドロップしないようなので、どこかのダンジョンマスターだったのだろう。

 その前マスターも死亡して、このミマスダンジョンはフリーになっていたワケだ。


【有難うございます】


 さて、運動も出来たし、再び『ごろ寝旅』に戻るか。

 シヴァは騎竜を出し、『くつろぎセット』モードにしてから、続きに転移した。

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