107 一瞬裸になるとかもなし!
さて、どうするか。
テント替わりの小屋をコアに作ってもらいたい気もするが、当分はディメンションハウスでいいし、レアアイテムは迷うばかりだし、【魔法陣の書】【冒険の書】【召喚魔法関連書物】を読む、研究し出したらキリがないし……。
「あ、コア。一瞬とは言わねぇけど、着替えが楽になるアイテムか魔法ってない?」
前からこういった魔法があれば便利だな、と思っていたアルだが、自分では覚えられないようなので。
【創作魔法で可能です。ご自分の荷物やマジックバッグ、或いは空間収納から任意で選んだ服に着替え、装備も身に着ける、ということでよろしいでしょうか?】
「ああ。着ていた服や装備をしまう時はクリーンが自動的にかかると更にいい。出来る?」
【可能です。術式に組み込みます。魔法名はどうしましょう?】
「シンプルにそのままでいいか。【チェンジ】で」
【服や装備の入れ替え魔法【チェンジ】。…スクロールです】
相変わらず、スクロール作製が速い。
アルは早速スクロールを開いて覚え、シヴァ衣装・装備に【チェンジ】で着替えてみた。
「おお~バッチリ。一瞬裸になるとかもなし。コア、いい仕事だ」
【お褒めの言葉、有難うございます】
「この魔法って生活魔法程度しか魔力使わねぇよな?」
アルの感覚だと虫に刺された程度も魔力消費を感じないので。
【そうです。魔力節約に配慮しました】
「素晴らしい!じゃ、もう五本【チェンジ】のスクロール出して。ダンたち…友達も欲しがるだろうから」
【かしこまりました】
すぐに出て来たスクロールをウエストポーチ型マジックバッグにしまい、アルは変幻自在魔法でシヴァになった。
「じゃ、ちょっとアリョーシャに行って来る。通信バングルも渡したいし」
【お気を付けて】
コアに見送られたアルは、転移魔法でまずはまたイディオスの所へ。
「よぉ、イディオス」
『…ああ、アル、じゃない、シヴァだったか、その姿の時は』
昼寝していたので邪魔してしまった。
「そう。昼寝の邪魔して悪ぃな。ちょっと見せびらかしに来た」
『何だそれは』
「人工風竜をコアに作ってもらったんだよ。長距離移動用に」
説明してからじゃないと、イディオスが攻撃しそうなので、乗って来なかったワケだ。
アルが人工風竜…騎竜を出すと、さすがに驚いていた。
『これで人工なのか?本物かと見間違うぞ』
「そこはダンジョンコアだから、だろ。大きさも自由に変えられるけど、ここじゃ狭いからこの程度で」
人工騎竜を車ぐらいの大きさにしてみた。
『ほう。すごいものだな』
「ホントだよ。魔力も溜めておけておれだとほぼ無制限だし。イディオス、小さくなって乗れよ。空の散歩しようぜ」
『それは面白そうだ』
イディオスが小さくなってひょいっとシヴァの後ろに乗った。
「手綱しかないけど、くくる?」
同乗者用手綱もあった。
『平気だ。我も少しは飛べるし』
「なら、平気か。隠蔽魔法は?」
『やらないとマズイか、やっぱり』
「苦手ならおれがかけるぞ。覚えたばかりだけど」
『じゃ、よろしく。細かい魔法はどうも苦手で』
…ということでシヴァが隠蔽をかけた後、空にふわりと飛び上がった。
『おお、気持ちいいな』
「だろ?おれ、アリョーシャに一旦戻るんだけど、一緒に行く?今のサイズなら大丈夫だろうし、帰りもちゃんと送る。暗くなったら転移でな」
『じゃ、たまには出かけてみるか』
「よしよし。じゃ、アリョーシャへ!」
今まではゆったり飛ばしていたが、スピードを出してみたかった。速いとコアが行っていた風竜なのだから。
イディオスは落とさないよう、結界魔法でシートのようにして軽く抑えておく。風の抵抗はなしにしたので、なくても大丈夫だったと思うが。
騎竜は本当に速かった。
景色を楽しめる程度の速度に落としても速い。
…というか、気を付けてないと通り過ぎてしまいそうだ。
『すごい速いな。これなら隠蔽魔法をかけなくても見えんと思うぞ』
「おれも今思った。まぁ、スピード緩めて止まる時はどうしても見えるし」
そんなことを話していると、もうアリョーシャだった。速い!
防壁からそう遠くない所で降り、騎竜をしまう。
『ん?ちゃんと手続きして入るのか?』
「もちろん。この格好だしな。門を通らず入った方が騒ぎになる」
『身分証はあるのか?』
「おう。作った」
シヴァは、ウエストポーチ型マジックバッグからギルドカードを取り出す。
『案外、考えてるのだな』
「ちょっと失礼だし~」
門の警備兵にギルドカードを見せて通ろうとしたら、
「そちらの犬は従魔ですか?」
とイディオスのことを訊かれてしまった。
大型犬に見えるサイズなので、何も言われないと思ったのだが。
「違うが、何か必要か?」
「いえ、綺麗な毛並みですから、盗られないよう何か対策をした方がいいかと思いまして」
気遣いだったか。洗ったことで確かにかなり毛並みがいいのだ。神獣様だけあって。
「大丈夫だ。気遣いありがとう」
礼を言って通り過ぎると、
『優しい門番だな』
とイディオスが念話を送って来た。
「だから、この街が好きなんだよ。他の街に行った後だと余計にそう思う」
まぁ、冒険者ギルドのギルマスは少々ウザイ時もあるが。
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