106 コアと一緒にバイク改良

 自分で作る、と言えば。


 アルは昼食後、ダンジョンコアルームに来ていた。


「なぁ、コア。…っつーか名前ないの?」


【好きにお呼び下さい】


「ん~とりあえず、思い付かないんでコア。おれの作った物でも複製か、改良出来る?」


【見てみないことには何とも】


「これ」


 アルはバイクを出した。


「バイクって言う異世界産の乗り物。ただし、外観だけ。中身は魔道具で魔石と魔力貯蔵タンクと魔法陣と付与魔法、と色んな技術使ってる」


【分析してもよろしいでしょうか?】


「いいけど、壊すなよ」


【細心の注意を致します】


 コアから光の糸みたいなのが何十本と伸びて来て、バイクを色々と触り出し、内部にも侵入し出した。

 そう簡単にコピーは出来なさそうで、苦労して作ったアルはちょっとホッとする。


 コアが分析している間にアルはソファーセットを出し、昨日ドロップでもらった召喚関係の本を読んでいた。

 三十分ぐらい分析していたので、コアにとっても複雑な構造だったのだろう。


【興味深い構造でした。魔力貯蔵タンクはもう少し改良出来ますが、それ以上はわたしにも無理です。こんな精密で高性能な物を作製したマスターを尊敬します】


「おお、ありがとう。じゃ、改良はどういった方法で?」


 コアに任せきりではなく、改良方法も知りたいアルは、その後、コアと散々話し合い、一緒に改良した。

 複製の方はまったく同じ素材での複製は出来ない。

 何故なら、キエンダンジョンでは扱ってない素材があるから。

 スライムの皮とかキラキラ宝箱の合金に含まれていた超レア素材とか。

 どこのダンジョンにでもある物ではないらしい。


 違う素材でなら複製は出来るが、魔石もたくさん使うし、魔法も付与もたくさんしてあり、魔力もたくさん必要になるので、一週間はかかるそうだ。

 訊いてみただけで複製しなくていいが、簡単に作られなくてよかった。物作りが得意な者の面目躍如である。


「長距離移動の時に使える、空飛ぶ魔物の人工的なものか、マジックアイテムって作れない?使いたい時に呼び出して、出来れば、ステルス…目撃されないようにするとか」


 長距離移動を便利にしたい、とアルは考えてみた。


【どちらもどれも可能です。マスターを運ぶことが出来れば、半透明の精霊のようなものでもよろしいんでしょうか?】


「ああ。お薦めが精霊のような半透明?」


【はい。でしたら、身に着けるアイテムに仕込めますし、餌の心配もありませんから。速いのは風竜です。目撃されないように、という要望は隠蔽魔法をアイテムに付与すればいいかと】


「あ、それ、スクロールでも欲しい。隠蔽魔法を覚えると、姿を隠すだけじゃなく、気配遮断も覚えるんだよな?」


【そうです。…スクロールはこちらになります】


「おう、ありがとう」


 コアが出してくれたスクロールを早速使い、アルは【隠蔽魔法】を覚えた。確認のため、ステータスボードを表示する。

 よし、ちゃんと覚えていた。


【マスター。人工騎獣は風竜でアイテムは何にしますか?】


「ペンダントにして【ディメンションハウスのペンダント】と一緒に着けるってのはどう?」


 ギルドカードも首にかけてるので、これ以上はかけたくない。


【可能です。では、合うデザインにします。【ディメンションハウスのペンダント】をお貸し下さい】


「よろしく」


 アルがペンダントをコアに渡すと、コアの中に取り込んで何らか作業した後、すぐに戻って来た。

 六芒星デザインのペンダントヘッドのネックレスを通すバチカン部分が変わっており、赤い石が埋め込まれた竜モチーフのデザインが小さく付いていた。これならまったく邪魔にならないし、ちょっとオシャレだ。


【人工騎獣風竜のペンダント…【ディメンションハウスのペンダント】と組み合わせてある。長距離に向いた人工風竜の騎獣が入っている。隠蔽魔法の付与があるので、姿を隠したい時はそう念じる】


 一応、確認してみると、希望通りの物になっていた。


「大きさはどうとでもなるのか?」


【そうです。ペンダントの隠蔽魔法は装着者と人工騎獣限定ですので、どなたか乗せる際にはお気を付け下さい】


「おお、そりゃヤバイな。気を付けるけど、当分、誰も他に乗せる予定がねぇな」


 アルは早速人工風竜を出してみた。

 まぁまぁ広いコアルームでも、大きくはせず、それこそバイクぐらいの大きさで。

 風竜は西洋竜で半透明の水色。乗り易いよう最初から鞍と手綱が付いていた。付属品だからか、こちらも半透明で茶色である。


「コア、今空いてるボス部屋ってない?」


 出すと乗りたくなるもので。ボス部屋はそれなりに広くて天井が高いのだ。


【30階はまだリポップ待ちで、他に人もいません】


「じゃ、そっちに行く」


【マスターわたしが…】


 コアが転移してくれようとしたが、既にアルは人工風竜と共に30階に転移していた。

 馬すら乗ったことがあるのは数回なので、飛ぶ竜はどうかと思ったが、“人工”なだけあり、乗り心地も操作性も抜群によかった。

 身体に当たる風の調整まで出来る。

 動力は魔力だが、ディメンションハウス同様、普段から所有者の魔力も浮遊魔力もチャージしているので、余程の長距離でもなければ、追加魔力もいらないぐらいだ。

 まして、魔力が豊富なアルなら、実質、無制限である。

 後は隠蔽魔法の確認だが……。

 アルは通信バングルでコアに繋いだ。


「コア、そっちからここの様子が見えないか?ちゃんと隠蔽出来てるか、確認したいんだけど」


【可能です。隠蔽を作動してみて下さい】


 やはり、どこのフロアでもコアには見えるらしい。


「じゃ、隠蔽作動と防音結界」 


 アルは隠蔽を発動し、アクティブ結界で防音にもした。


【大丈夫です。マスターも騎獣も見えませんし、音も聞こえません。しかし、魔力の流れが不自然になりますので、魔力感知能力が高い方には分かってしまうでしょう】


「まぁ、それは仕方ねぇな。…解除」


 アルは地上に降りて風竜をしまうと、再びコアルームに戻った。

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