101 召喚関係の書物ゲット!
ダンジョンコアルームは、台座があるだけの殺風景な部屋だった。
りんごぐらいの大きさの光る石が、精緻に彫刻された台座の上に置いてある。鑑定をかけるとダンジョンコアに間違いない。
罠が仕掛けられていないかを確認してから、手を伸ばして触れる。
【冒険の書】によると、ダンジョンコアはプログラム通りに動くだけの演算装置ではなく、精神生命体みたいなもので、学習して成長して行くらしい。
そして、触れて魔力を流すと、意思疎通が可能、と。
【ただいま、エラー修復中。ダンジョンボス討伐おめでとうございます。もう少しお待ち下さい】
念話のように聞こえるが、女性の合成音声のような感じだった。アルのイメージから、だろうか。
「ダンジョンマスターはいるのか?」
【不在。ダンジョンボスを討伐し、ダンジョンコアに触れたあなたには、ダンジョンマスターになる資格が与えられます。どうしますか?】
「保留。その前に質問。このコアを持って行って、他でダンジョンを作るってことも可能になるの?」
【可能です。ただし、一から作り直すことになりますので、魔力が貯まるまでお待ち頂くことになるかと思います】
何もない所からは作れない、ということか。
「お前を作った創造主と会えるか?」
【質問の意味が分かりません。わたしは作られたのですか?】
「多分。知らねぇんじゃ無理か。じゃ、このダンジョンごと場所を変えるのは出来るか?」
【出来ません】
「ダンジョンマスターになるメリットは?」
【魔物の配置やドロップ率を自由に変更出来、ドロップアイテムを作る能力で、ほぼ何でも作ることが出来ます】
「食材もだな?」
【はい。この世界のどこかにあるものなら作れます】
「エネルギーはどこから?魔力で?」
【探索者が出入りすることで浮遊魔力の流れが変わり、ダンジョンに集まって来ます。その魔力をエネルギーにしています】
「魔力が多い所にダンジョンを作って、更に引き寄せる、ということだな?」
【その通りです】
「よし、ダンジョンマスターになろう。どうすればいい?」
【エラー修復後、魔力を流して登録して下さい】
「分かった。修復が終わったら教えてくれ。…で、このダンジョンと違うダンジョンとは意思疎通出来るのか?」
【分かりません】
「【冒険の書】というダンジョン攻略本がパラゴのダンジョンボスを倒した時にドロップしたんだけど、これ、世界中のダンジョンの情報がリアルタイムで見れるようになってるんで、すると、ダンジョン同士もどこかで繋がってるハズなんだよ。じゃねぇと、本にまとめられねぇし」
【現在の情報では少な過ぎて分かりません】
それはそうか。
「ダンジョンマスターになると、ダンジョン内、ダンジョンの外への転移も出来るようになるのか?」
【転移ポイントを設定すれば可能です。しかし、ダンジョン外で魔力の多い所ではないのなら短期間しか可動出来ません】
「やっぱ、大量の魔力がいるのか。あ、でも、ディメンションハウス…【ディメンションハウスのペンダント】は知ってるか?」
【はい。存じております】
「作れる?」
【はい。あなたがダンジョンマスターになった後にお命じ下さい】
「…作れるんだ、やっぱ。スゲェな」
【有難うございます】
「【ディメンションハウスのペンダント】はもう持ってるからいらねぇけど、ハウスレベルを上げるってことは出来ねぇ?」
【出来ません】
「だよなぁ。…あ。【ディメンションハウスのペンダント】自体、ダンジョンエラーを3回成し遂げた者に贈られる、ってあったんだから、ダンジョンの間で情報を共有しているか、おれに何か分かるような印でも付いてるのか、じゃねぇの?」
【後者です。あなたのステータスにダンジョン探索履歴があります。これはおそらくダンジョンコアにしか見えません】
「やっぱそっか。ボス討伐だけじゃなく、どこでどんなドロップを出したかも見える?」
【はい】
「そりゃ便利。後でおれ自身も見えるようにならねぇか、試してみよ。…じゃ、召喚魔法及び異世界召喚に関する書物は出せる?」
【わたしの持つ情報を書物にして作ることなら出来ます】
「コアには召喚関係の知識があるってことだな?」
【はい】
よしっ!
「じゃ、それをダンジョンボス討伐ドロップにして」
【可能ですが、書物にすると約300冊にもなります。あなたには持ち帰れないのではないでしょうか】
「全然平気。空間収納が使えるから。空間転移も。さっきマスターの転移について訊いたのは、おれのように転移が使える人は滅多にいないから、他の人がマスターになったらどうなのかと」
【昨今では空間魔法の使い手はかなり稀少になってるようですね。…そろそろダンジョンエラーの修復が完了します。あなたへのドロップ品は魔石と召喚関係の書物、ヒュドラの毒、でよろしいでしょうか?】
ヒュドラの毒もくれるのか。
いらないと言いたい所だが、防毒リングの強化には欲しい。余裕で防いでいたが、より万全にしたい。
「いいぞ」
【では、書物を作成するまで更に五分程お待ち下さい】
「了解」
じゃ、お茶してよ、とアルはコアから手を離すと、一人用ソファーセットを出し、作り置きコーヒーをコーヒーポットからカップに注いだ。
お茶菓子はベイクドチーズケーキだ。山羊チーズで作ってみたら、これがまたクセになる程美味しかった。
山羊チーズ好きのウラルに今度、差し入れてあげよう。ナバルフォール家の書斎に行く用事もあることだし。
懐いてくれると、つい甘やかしたくなるのは、元の世界でそんなような後輩たちがたくさんいたからか。
外見が変わっても中身は一緒、という証明でもある。が、相手は貴族なのでそこそこにしよう。
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