100 ヒュドラって竜の仲間?

 さっさとアルに戻って着替えて装備も変えた後、キエンの街に来た一番の目的を果たすことにした。

 ダンジョンの3階、『シャルトリューズ』採取である。


 アルはさっさとダンジョンに入ると、低層は大したドロップはないので移動を優先し、邪魔な魔物だけ倒して行く。

 速度優先なのでミスリル刀で斬り捨てる。【冒険の書】でだいたいの構造も把握しているし、探知魔法でも分かるので、迷うことなく最短距離を進んだ。

 塔型だからか、一つの階の広さはさほど広くない。


 すぐに3階まで上がり、シャルトリューズ群生地域を探す。

 洞窟型なのだが、林と言ってもいいぐらい植物が生えている大きな部屋があるのだ。

 探知魔法で植物も分かるのだが、近寄らないと詳しいことは分からないので側に行く必要があった。


「お、あった!」


 小さな薄紫の花が付いた薬草は、他の草花に混ざりながらも目視出来る範囲でも数十本は生えていた。

 一応、鑑定もかけて確認する。間違いなくシャルトリューズだ。

 念のため、周囲には結界を張ってから、採取に専念した。

 ダンジョンなので一時は取り尽くしても、またすぐ生えて来るのだ。

 たっぷりと収納した後は、上の階へとダンジョン探索開始。

 ひとまず、さっさと進み、気になるドロップの所だけまた来ればいい。一度来た所なら転移が出来るのだから。


 ザクザク斬って進んで行くうちに、少々不愉快だった気持ちも落ち着いて来た。

 これもまたアニマルセラピー?いや、モンスターセラピーかも?

 …殺してるけど。


 10階まではほとんど軽いランニングな感じで走り抜けた。

 フロアボスはあいにくと倒されていたので次回。

 休憩はまだいいので、続いて11階から上も走り抜けつつ、斬り捨てて、いつの間にやらリズムが出来ていた。

 …ということは、魔物出現パターンがあったらしい。

 たまにイレギュラーが襲って来るが、アクセントな感じだ。


 20階のフロアボスも倒されていた。

 転移魔法陣で1階からダイレクトに来れるとはいえ、ボスは強いのでリスクも高い。

 なのに、倒されてるとなると、ドロップが結構いいのかもしれない。

 気軽に討伐してるのはアルぐらいなものだろう。

 【冒険の書】でリアルタイム状況確認して転移するのが確実か。


 アルは適度に休憩を挟みつつ進むと、30階のフロアボス…ジェネラルオーガは健在だったのでさくっと討伐。

 ジェネラルだけじゃなく、手下のオーガ十匹も連れており、中々の連携を見せて来たが、ただそれだけだったのだ。身体が大きいこともあって攻撃が遅く、時には仲間同士でぶつかったりもしていた。

 うっかりミスリル刀で首をねてあっさり討伐してしまったので、今度機会があった時は素手でチャレンジしよう。

 ドロップは魔石と木の宝箱。中身は後で確認しよう。


 そんな感じでアルのダンジョン探索…というか踏破はたびたび休憩や昼食を挟んで順調に進み、40階のバトルクイーンビー、50階のノーライフキングといったフロアボスもあっさり討伐し、今までの最高到達フロアの52階も通り過ぎて……。


 60階。最上階であり、ダンジョンボス、ヒュドラ。

 九本の首を持つ再生能力がかなり高い伝説の魔獣であり、竜の仲間でもある、とされることもあるが、実際は分からない。

 さすがのアルもボス戦前にたっぷりと休憩し、万全の用意を整えてからチャレンジした!


「……オーバーキルって言うのかもな、これ」


 アルはちょっと途方に暮れてしまった。

 ああ、またダンジョンエラーになってしまった。

 城より大きいかもしれない巨大ヒュドラは、探知魔法でも鑑定でも絶命しているのにドロップにならない。


 ヒュドラは九本の首のうち真ん中の一本が本体で、これを倒せば他の首も一緒に倒せる、という説もあれば、九本全部を一緒に斬らない限り、絶命しない、という説。

 はたまた、首を斬るごとに倍々ゲームで増えて行き、限界がないので倒せない、という説もある。


 どれにしろ、ジャイアントワームの教訓から火魔法を使うより、再生能力が高いのならこれしかない、と【次元斬じげんざん】で斬りに斬りまくった所、細切れのどろどろに。

 どろどろ、は自らの猛毒で溶けたのだ。

 戦闘開始から三十秒も経たず、という短時間討伐でエラーが出たらしい。


 アルが全力で対策を立てて実行すると、何かこういったことが多い気がする。キマイラの時といい。


 ダンジョンエラー四回目になる今回、アルはお茶したりはせず、ダンジョンコアルームへ。

 …と言っても、出入口がないので【次元斬じげんざん】でこじ開けた。

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