097 称号のおかげでざくざくと発見!
それにしても、強い冒険者があまりいない。
攻略されてないダンジョンとなると、チャレンジしているものでは?…ああ、今現在、潜ってるのか。
階層が多いダンジョンで十層ごとに転移魔法陣があるとはいえ、その転移魔法陣に日帰りでの到達は難しいのだろう。
ここは十層ごとのフロアボスを倒さなくても、転移魔法陣は使える仕様だった。
【冒険の書】で予習したアルは、ダンジョンボスのヒュドラ以外はそこまでの強敵はいないような気がするのだが……まぁ、アル基準だからかもしれない。
そっとバングル型の時計を確認すると、もうすぐ三十分だったので、アルは再び倉庫へ行くと、ちゃんと解体出来ていた。
ごねられることなく魔石と皮と肉、買取金額書類をもらい、ギルド内に戻ってまだまだ列が長い受付へ行き、並んだ。
何か時間潰しが欲しい今日この頃である。
アルの鑑定レベルが高いので、勝手に鑑定をかけても気付かれないのだが、マナーとしてそれはやりたくない。怪しいのは躊躇なく鑑定するが、そんな人も気になるアイテムもない。
…こともなかった。
受付のカウンターにキラキラ宝箱が置いてあったのだ!
宝石は付いてない手のひらに載るサイズ。
中が見えるよう蓋が開いてあり、中には…『大量入荷したため、毒消しポーション特価!』と書いた札と共に毒消しポーション瓶が入っていた……。
ディスプレイケースとして使われてるなんて!
【悪魔の眼球・たまたま物質化したレア物。合わせる素材によって色んなマジックアイテムになる。魔眼の効果がある眼鏡、使い魔、ゴーレムの視界共有…等々】
……くっ、欲しい。
…待てよ?キレイなディスプレイケースがあればいいんじゃないか?
アルは列を外れて物陰に行き、ディメンションハウスへ入り、ステンドガラス風に色付けしたガラスと布と綿でディスプレイケースを錬成した。サイズはあのキラキラ宝箱と同じ。
よし、とアルはハウスから出て物陰に出、再び列に並んだ。
見慣れてるのか、誰もキラキラ宝箱を見もしない。
待ち時間、脳内で交換シュミレーションを色々しておき、やっとアルの番になった。まずは買取金額書類を出す。
「それと、これ。この箱、売ってくれねぇ?」
「え、これですか?中身ではなく?ただの箱ですけど」
「素材が欲しいんだよ。おれ、錬金術が使えるんだけど、色んな合金を勉強してて参考にしたい。金貨5枚で売ってくれる?」
あまり高い値段を付けると、怪しまれるかと、色々考えたワケだ。
勢いでステンドグラス風ディスプレイケースを作ったワケだが、この世界のガラス作成技術は低いので、これを出すのはマズイかも、と考え直した。
「いえいえ、そんな価値なんかないですよ。ちゃんと鑑定してある物ですし。でも、素材として欲しがる方がいるとは思いませんでした。少しお待ち下さいね。上司に聞いて来ます」
ダンジョン産なのは受付嬢も知ってるらしく、一応、お窺いを立てに行った。
奥の方で何らか書類作業をしていたのが上司だろう。
え?という顔をしているので、欲しがる人間がいるとはまったく思ってなかったらしい。
「物好きもいるもんだな。いいぞ。金貨5枚というのも詐欺だの何だの言われそうだから、銀貨1枚でどうだ」
「銀貨1枚でも貰い過ぎのような気がしますけど」
受付嬢が苦笑する。
「錬金術師の価値観は元々よく分からないからな。…あ、あの箱まだ五個ぐらいあったぞ。倉庫に。鑑定でもただの箱としか出ないし、他に使い途がないからと冒険者たちが置いて行くんだ。引き取ってくれそうな人か?」
「はい。若いですが、Cランク。バーサクゴートの解体と素材を売ってます。すごいですよね」
「……すごいなんてもんじゃないぞ。錬金術師なら何か魔道具を使ったのか?まぁ、金がありそうなら売っとけ。倉庫から持って来るから」
「分かりました」
…ということで、アルは素材買取の現金だけじゃなく、キラキラ宝箱を六個も手に入れた。
銀貨6枚という破格値で!
今後も手に入ったら取り置きよろしく、と頼んでおいた。
ちなみに、カウンターの奥で普通は声が聞こえない距離なのだが、アルは元々聴力がよかったので普通に聞こえたワケだ。
宿探しより、まず、とアルはギルドを出て物陰に入ってから、再びディメンションハウスへ行き、鑑定しまくった。
【虹貝の貝殻・素材を組み合わせれば、映像装置アイテムを作ることが出来る】
【星のかけら・隕鉄。磁力を帯びた鉄で硬く魔力もよく溜める】
【氷猫ヒゲ・他の素材と合わせれば、気温の低い環境でも問題なく過ごせるアイテムが作れる】
【月光虫の核・月の光で作動するアイテムを作ることが出来る】
【パラダイスバードの羽・他の素材と合わせれば、飛行石を作ることが出来る】
…レア物揃い踏みだった……。
こんな貴重な物ばかりなのに、何年倉庫に放って置いたんだ…。
それにしても、運が良過ぎないか?
【うさぎの後ろ足】を使ったラッキーアイテム、結局、まだ作ってないのに。
あっ!
【知的探究者・レアアイテムに遭遇し易くなる】
この称号のせいか!
てっきりダンジョン内だけのことかと勘違いしていたが、全般だったらしい。
ここまでたくさんのレア素材があると、ディメンションハウスにこもって色々研究もしたくなるが、後の楽しみに取っておこう。
アルはディメンションハウスから出て街中を歩き、宿を探しに行ったが、時間が遅くなったせいで、やはり、全然空いてなかった。
ま、ディメンションハウスに泊まればいいいし、と街中を散策する。
終わりかけだが、市場はまだ少し開いていた。
食材の物価が少し高い。アリョーシャのダンジョンより、食材ドロップは多くはないから、というのもあるのだろう。
情報収集がてら冒険者の多い店で夕食を食べたが、大した情報は得られなかった。まぁまぁ美味しい料理だったのが救いだ。
街中でディメンションハウスに出入りするのはリスクがあるので、アルはダンジョン側まで行き、そこからハウスに入った。
明日の朝は混雑する時間を狙って、シヴァとして冒険者登録をしに行くが、ギルド側に転移すればいい。門の出入りは個人が特定出来るようなチェックはしてないので、気にすることもない。
穏やかな音楽が流れる中、広々な風呂に入ってまったりする。
やっぱり風呂はいいなぁ、と入るたびに思い、このディメンションハウスの中だとちゃんと整えられた庭が見える窓が欲しい、と思う。まだハウスレベルが上がってないので、何も構えないのが残念だ。
さて、風呂から上がった後は、バイクのメンテと魔力貯蔵タンクに魔力をチャージしよう。
そして、いい加減、ラッキーアイテムのタリスマンを作成しよう。指輪も腕輪もペンダントもあるので、耳。穴は空けたくないのでイヤーカフにするか。
レア素材をたくさんゲットしたのはいいものの、それ以前にゲットしたレア素材のほとんどがまだ手付かずだ。色々使える物が多いので選んだり研究したりもしないとならないが、まずは一つ一つ。
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