060 『何でもあり』認識はやめろ
アルが宿に帰る途中、道端でダンたちとばったりと会ったので、一緒に帰る。
「おう、アル。今帰りか」
「そう。錬金術師のセラさんとちょっと話し込んじゃって」
「何か小難しい話っぽいなぁ」
「そういや、アル、聞いた?隣のイリヤの街でオークの集落が見つかって、こっちにも流れて来るかもしれないから注意しろって」
ギルド間で緊急連絡があったらしい。
「今、聞いた。オークの集落が見つかってどうしたんだ?」
「それがよく分からないことになってたんだって」
「何が?」
「知らせを受けて慌てて人集めて準備して討伐に向かったら、全部のオークの首が斬られてたんだって。ジェネラルやキングも全部。抵抗した形跡もなくて仲間割れではないみたいなんだけど」
「不思議なこともあるもんだなぁ」
「そうか?飛行魔法を使えるようになった誰かさんの仕業のような気がしてしょうがないんだが、気のせいだろうか」
ダンがアルを見ながらそんなことを言ってくれる。
「えー?さすがに、あり得ないだろ~。馬で半日の距離だぜ?なら、アルが何でここにいるよ?」
ボルグ、ナイス質問。
「飛行魔法の所をツッコミ入れようぜ」
「まぁ、アルだしな」
「それもそうだな」
「アルなら馬で半日の距離ぐらい何とかしただろ。森を消滅させなくてよかったな」
アリバイ工作が無駄か。
『アルなら何でもあり』認識のせいで。
「確定で言うのやめてくれねぇ?」
「この辺の冒険者で他の誰に同じ事が出来る?」
「おれらが知らねぇだけかもしれねぇだろ。騎士だって警備隊だっているんだし」
「奴らはそう身軽に動けないだろ」
むむ。
「で、ギルマス何か言ってた?」
【秘技!話のすり替え】だ。
「『あいつなら地形変えてるよな』とか言ってた」
いつまでも成長しないと思っているがいい。
「へぇ」
「アルばっかりを気にかけてるから、『実はあっちの…』ってささやかれ始めてたぞ」
この国…エイブル国では、危険な街の外へ行くのは男ばかりで死亡率も高いため、街の中に住むのは女の方が多かった。
それだけに、女同士の恋愛は市民権を得ていても、男同士の恋愛は非難される傾向があった。
この場合、ギルマスは妻子持ちなので、単にからかいだろう。
「おいおい、巻き添えの風評被害も甚だしいんだけど~」
アルの性的嗜好はノーマルで、同性愛にも偏見はないが、自分が関わるとなると別である。
幼い頃は女の子だと普通に思われていた程、女顔だったので、散々、フラチな連中を叩きのめして来ている実績も持つ。
「暇人も多いんだろ」
「話題提供したくねぇし、おれ、しばらくパラゴのダンジョンに行こっかなぁ。まずはスライム狩りに」
「何でスライム?」
「スライムの皮が色々と使えるかもしれねぇんで」
タイヤに使えそう、ということは、ゴムの代用になるかもしれない。
「今までと違う使い方ってこと?」
「おそらく。そういったことを錬金術師のセラさんと話してたワケだ」
すっかり誤魔化しおおせた…のは無理そうだが、話題転換した所で宿に到着し、さっさと風呂に入りに行った。
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