052 大失敗!とドジっ子属性
25階は火山フロア。
少々暑いという程度だが、せっかく作ったので『少し涼しい服』にアルは着替えた。
魔物はやはり火属性の魔物で、ファイアリザード、ファイアバード、フレイムウルフ、ファイヤータートル、フレイムタイガー、フレイムゴート…と暑苦しいラインナップである。
物理攻撃はほとんど無効だが、魔力を通した剣なら斬れる。
アルは実験的にミスリル刀に氷属性を付与してみた。
これなら魔力を通さなくても斬れる。
属性媒体がない付与は短時間しか効果が続かない所はデメリットじゃなくメリットだ。その時々で属性を変えられていい。
ここまで来ると魔物は群れでちゃんと連携した行動も増えて来たので、さすがのアルも魔法を併用する。
広範囲大魔法を使ったことがないな、と他に人がいないのをいいことにドカーンッ!と使ってみたり。
ゲームでお馴染みの広範囲を凍り付かせる
見渡す限り凍り付いた。
ただ、本当にしっかり凍り付いてしまい、絶命していてもドロップにならないので、また火魔法で溶かした。
無駄な魔法を使ってしまった。
何が効率がいいか考えた結果、探知魔法で敵をマーキングし、重力魔法でぐしゃっと潰す。
…うん、魔力消費半端ない。
その後は地道にせっせと斬って回った。
アルは刀の方が性に合ってるのかもしれない。
断熱結界を張ってしっかり休んだ後、26階の砂漠フロアに進む。
ここで要注意なのはジャイアントデザートワームではなく、サイレントアーントライオン、隠密スキルを持つ蟻地獄(虫型魔物)である。
気配遮断スキルも持っているので気配も音もなく近寄り、すり鉢状の蟻地獄に獲物を沈め、角で挟んで分解し酸で溶かして捕食するのだ。
素早さがないのが救いで、この階層のドロップは諦め、駆け抜けて行く冒険者が多い。
このサイレントアーントライオン、魔石以外のドロップはルビー、サファイヤ、稀にダイヤ。
一攫千金を狙うならこの魔物、と言われるぐらいだが、かなり難易度が高く、この砂漠の個体は土魔法も堪能で厄介過ぎるのでAランク認定されていた。
何とか倒してもドロップが砂の中に沈んでしまい、ということもよくあるのがまたせつない。
アルは他の冒険者のように駆け抜けず、サクサクという足音を楽しみながら普通に歩いて進む。
砂が動いてすり鉢状の蟻地獄が出来始めて来たら、重力魔法で蟻地獄本体(虫型魔物)を宙に浮かせてざくっとミスリル刀で一閃。ドロップは宙にある時にそのまま収納した。
注意力と砂の中から無理やり引きずり出す程の強力な魔法がないと苦労するだろうが、アルは違うので全然苦労しなかった。
最初はサイレントアーントライオンが探知魔法にひっかかるのが遅かったが、何度か繰り返すうちに習熟したらしく、やがて、事前に察知出来るようになった。
隠密スキル、恐れるに足らず。
どうせなら、隠密スキルも覚えたいな、とサイレントアーントライオンの動きを探知魔法でよーく見張ってみるが、よく分からない。
なるべくそっと歩いて足音を殺してみても、スキルが生えることはなかった。【忍び足】ぐらいは欲しかったのだが、やり方が違うのだろう。
******
この砂漠にはデザートマンティスという人間より大きいカマキリの魔物も出て来るが、蟻地獄にハマったり、ジャイアントデザートワームに潰されたり、駆け抜けるデザートリザードに撥ねられたり、スモーキースカラベにフンと一緒に転がされたり、と何故だかドジっ子属性だった。
しかも、デザートマンティスの魔石以外のドロップは、羽根と針金で別にいらない物なのがまた泣ける。
アルは魔石だけ拾っておいた。
パターン化して来て飽きて来たので、半球状に断熱にもしてある結界を張って休憩することにした。
日差しよけと迷彩で結界の半分に砂をまとわせる。
水分補給をしてから、作り置きのアイスクリームにフルーツを添えて食べ、
「そういえば、空を飛ぶのは試してねぇな」
とふと気付く。
他人や魔物を無理矢理飛ばしたことはあっても、自分は飛んでない、と。
重力魔法で浮かせて、風魔法で推進力を、と今までと同じ使い方でいいと思うが、問題は姿勢制御か。スー○ーマンやパ○マンのように腕を伸ばして飛ぶ姿勢だと安定するのだろうか。
……うん、イメージ出来た。
休憩を終わらせると、結界を解除して、ちょっと飛んでみた。
あっさりと…拍子抜けする程、あっさりと飛べる。元々無詠唱だし、他人や魔物を飛ばしたことはあるのでイメージが固まっていたこともあるかもしれない。スピードを出すには修練が必要だろうが、やがて慣れることだろう。
着地も問題なく体重を感じさせないで軽く降りる。
飛べるのが分かったので、これで更に戦い方の幅が広がる。
せっかくなので、これ以降の魔物狩りは、飛ぶのも交えながらにして練習してみた。
空中での急ブレーキは手頃なサイズの結界を足場に。すると、壁がなくても三角跳びが出来る。
いや、いっそ、ピンボールのようにタンッタンッタンッと急反転急旋回で速さを増しつつ、跳び蹴りしたり、斬り伏せたり。
レベルがかなり上がってるらしく、内臓が付いて行けなくて踊ってしまうようなことも、目が回ってしまうようなこともない。
そういえば、この所、ステータスボードを全然見てないが、もう見なくていい気がする。
どうせ規格外過ぎだし、怖い称号が付いてそうだし。主にランニングバードに関して。
そんな風にしてアルは鍛えたり、魔法を試したりもしてもいたが、遊びもしつつ、26階を踏破した。
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