051 海フロア大好き!

 さて、そろそろギルマスの注意がそれてるだろうから、ダンジョン20階以降にチャレンジしよう。

 アルは夜目が利くし、パッシブで探知魔法が働いてるため、真っ暗な中でも不便はないのだが、初見の魔物はちゃんと見たいので、明るくなって来た早朝からダンジョンに行くことにした。


 他の皆と同じように、1階から転移魔法陣で20階へ移動してから進む。

さすがに、こんなに早い時間は人がいなかった。

 もし、人がいたら転移して避けるつもりだったのだが。目撃者を作りたくないので。


 魔法陣の研究をしていても、身体はちゃんと鍛えていたし、ショートソードとミスリルで新しい刀も作ったので、素振りもシャドーも欠かしてなかった。今日がミスリル刀デビューなので、メインで使って行く。


 魔力を通すのに相性がいいミスリルなのだが、通さなくても抵抗を感じない程、かなり切れ味がよかった。日本刀自体が『よく斬れる』というイメージなので、そのせいだろう。


 人は他に誰もいないので、空間収納をフルに活用し、落ちたままのドロップをダイレクトに収納して行く。


 22階の遺跡風洞窟タイプでは、ローリングアルマジロの魔石以外のドロップが爪とコーヒーの生豆だったので、狩りまくった!


 ギルドの情報には【食べられない赤い木の実が袋の中にいっぱい】とあったのだが、誰も知らなかったらしい。袋は両手のひらを揃えたぐらいの小袋だった。

 赤い木の実の中の薄い緑のものを出して乾燥して焙煎すると焦げ茶になり、それをコーヒーミルで挽いて粉にし、お湯を注いでドリップすると香り高いほろ苦いもののクセになる美味しいコーヒーになることを!


 …ああ、うん、これだけ工程が多いのなら、誰も飲み物だとは思わなかったのだろう。


 ダンジョンドロップの法則で、ドロップ品はこの世界のどこかにあるものなので、どこかの地域ではコーヒーが飲まれているハズなのだが、アリョーシャの街中ではそういえば、見てない。

 ローリングアルマジロの動きを見切ったアルは、もはや流れ作業で殲滅して行った。


「爪はいらん、コーヒーを出せ!」


 ランダムドロップにそうぶつくさ言いながら。


 24階、待望の海フロア。

 ジャイアントシュリンプ(エビ)、バーニングキャンサー(カニ)、クリスタルシェル(貝)、イエローオクトパス(タコ)、バニシングサーモン(鮭)、クレイジーツナ(マグロ)、スキップスキップジャック(鰹)と大きい海の幸が揃い踏み。

 もちろん、狩りまくった!


 少々腑に落ちないのが、クリスタルシェルのドロップで、魔石以外のドロップは大きい貝の剥き身か一欠片のクリスタル。

 そこは真珠じゃね?と腑に落ちない。


 まぁ、いい。

 海鮮焼きだ!鮭のちゃんちゃん焼きだ!寿司だ!フライだ!天ぷらだ!たこ焼きもやるぞ!

 バニシングサーモンは消えるので厄介、と聞いていたが、アルには探知魔法があるし、そうじゃなくても水の流れを見ればどこにいるのかすぐ分かった。

 厄介だと思った人は、慣れない海フロアに慌ててもいたのだろう。


 このフロアは海に浮かぶ浮島を渡って進んで行くもので、小さな浮島だと、当然、海の魔物も飛びかかって来るのだ。

 トビウオのように。

 クレイジーツナは体当たり、クリスタルシェルもピョンピョン身軽に跳ねてアクティブである。

 海なら浜辺に珪砂けいさがたくさん含まれているので、錬金術でより分けてたっぷり収納した。

 これでしばらくガラス作り放題だ。


 この階層は魔物も多く苦手な冒険者が多いようだが、アルは大好きになった。また来よう。

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