050 物作り二週間

 アルは魔法陣研究をして行くうちに、本に載ってる魔法陣より無駄がなく必要魔力量が少なく、かつ効率化した魔法陣を作ることが出来た。


 試しに20m四方の大容量紺色のボディバッグ型マジックバッグを作り直し、時間停止のマジックバッグに作り変えた。

 Cランクの魔石を砕いた粉を接着剤と混ぜて使っていたが、それは錬金術で元の魔石と接着剤の状態に戻して保存。

 時間停止にするなら、Aランクの魔石(ワイバーンのもの)じゃないと魔力不足だったので、魔石入り接着剤も新しく作り直した。

 今回は魔法陣を書くインクの方にも魔石の粉を混ぜて魔力を込めている。色々試した結果、その方が安定するようなのだ。


 マジックバッグの中身がリスト化されて、どこかに表示する、或いは空間収納のように頭の中に思い浮かぶ、所有者限定にする、というようにしたかったが、やり方が分からず、まだまだ要研究だった。


 ダンジョンの転移魔法陣は同期にしてある魔法陣が描かれている所に転移出来る、という物なので、錬金術を使って魔石の粉を入れたインクで魔法陣を染め抜いた布を二枚作り、二枚を距離を離して設置して転移出来るかどうか試してみたが、布というのが不安定だからか、上手く発動しなかった。

 浮遊魔力を取り込むようにして魔力消費を抑えたのだが、こちらはやはり、一朝一夕で出来るものではないのだろう。

 マジックバッグだってそうなのだが…まぁ、そちらはアルが向いていた、ということか。


 他に成功したのは、『少し涼しい服』だ。

 これから夏になるのでその対策で作ってみた。

 首の下のぼんのくぼ、日本ならメーカータグが縫い付けてある部分に、Eランクの魔石の粉を混ぜた油性インクで小さく魔法陣を描く。

 それだけで空気中の浮遊魔力だけを使い、クール魔法が弱く発動するのだ。あまり冷やし過ぎても体調を崩し兼ねないので、あくまで弱くでいい。


 魔法を閉じ込める魔法陣の改変で、これは結構簡単に出来た。

 その替わり、魔法陣を消さない限り、停止させることが出来ない。

 オンオフをどうにか付けれないものか。魔力を遮断する、魔法陣の一部を機能しないようにする、と方法は思い付くが、成功しなかった。涼しくなり過ぎたらその服を脱ぐしかないか。

 温かいバージョンは低温ヤケドが心配なので、改良するより違う方式にした方がいいかもしれない。


 こうした一応の目処が立つまで二週間。

 三日間は宿にこもって三冊の魔法陣の本を読んでいたが、実験は外でやっていたので、四日目以降は毎日、アルはちゃんと門から出て出かけていた。

 ギルドにはダンジョンツアー報酬と報告書作成の報酬を受け取りに行っただけで、後はまったく近寄らずに。

 ダンたちを通して何だかんだと言っては来ているが、スルー。

 冒険者は自由なものなのだ!


 迷惑がかかっているダンたちには迷惑料として、錬成で作ったスパイダーシルク混コットンのTシャツ(斬撃・衝撃耐性、防御+10)をプレゼントしているので、問題ない。

 …いや、払い過ぎかもしれない。

 まぁ、実験台も兼ねているからいいだろう。アルだと怪我しないので実験にならないのだ。

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