048 魔法陣の本購入

「あ、そうだ。セラさん、魔法陣に詳しい人知らない?本でもいい。魔道具を作りたくて勉強したいんだけど」


 アルは思い出してちょっと訊いてみる。


「何冊か書物の扱いはございますが、アル様、錬金術の方は飽きたんですか?」


 つい先日、錬金術を教えてもらった所だからか、そう思ったのだろう。

 まぁ、普通ならポーションを何度も作って、腕を磨いてる所だろうが、アルはまったくもって規格外であり。


「いやいや、便利に使ってるよ。だからこそ、魔法陣も勉強したいなと思って。本持って来てもらえる?」


「かしこまりました。少々お待ち下さい」


 サポートしていた店員がすぐさま応接室を出て行き、ウラルたちが支払いをしていると、さほど待つ程なく店員が本を持って戻って来た。三冊だ。

 アルは中を見せてもらったが、ちゃんとそれぞれ中身はバラバラの内容だった。

 よく見ると重複は多少はしているかもしれないが、マジックバッグに使ってる魔法定着の魔法陣も、ダンジョンにある転移魔法陣もちゃんと載っている。魔法陣が書けても、魔法陣を書く素材が中々手に入らない物ばかりだし、何人も、ヘタすると何十人も魔力を注がないと発動しないから、気軽に載せてあるのだろう。

 時間停止の魔法陣まであった。何か無駄が多いのか、


『平均的魔力量を持つ五人なら魔力が必要量に達するまで三ヶ月ぐらいは魔力を注ぐ』


 ……などと書いてあるが。検証せねばなるまい。


「三冊全部欲しいけど、おいくら?」


「金貨30枚でいかがでしょう」


「え、安くない?」


 魔導書程ではないが、本というだけでも高価な物だし、How to本は実用書なだけにかなり高価なハズだ。


「お得意様価格です。アル様が錬成した物を見せて下されば、更に勉強いたしますよ」


 錬金術習い立てで、いきなり中級ポーションを作ってしまったからこそ、見たいと言うのだろう。


「じゃ、金貨30枚で!」


 アルはマジックバッグ経由で空間収納からさっさとお金を出した。

 キャリアのある錬金術師に、アルが錬成した物を見せられるワケがない。規格外過ぎるのがバレバレというだけならまだしも、いいように利用されそうだ。


「ご購入有難うございます。売れる物があれば、是非とも当店にお持ち下さい」


 何もかも売れない。


「その時はよろしく」


 アルは適当に流して魔法陣の本をマジックバッグにしまい、三人を促して応接室を出た。


「ここも武器や防具を扱ってるけど、見て行く?」


「魔道具じゃないんですか?」


「魔道具じゃねぇのもあるぞ。鍛冶で作った物じゃなく、錬金術で錬成した物だな」


「…んん?錬金術で最初から武器も作れるんですか?」


「作れる。質は腕に左右されるのは鍛冶師も一緒だろ。鍛冶師が作れない物も錬金術なら出来たりもする。魔物の素材の合金は一度錬成して、鍛冶師が打って仕上げてるそうだ」


 これはダンから聞いた。


「そうなんですか。…アルさん、ドロップの牙を使ってナイフを錬成出来たりします?」


 気付いたか。


「普通に売ってるって。牙も爪もドロップで多いんだから」


 さらりとかわすが、事実だった。


「あ、ホントだ」


 ラズは結局、ウルフ系の爪を使った合金のナイフを買った。ぬいぐるみもあるし、重く思われるかも、とネームは入れない。

 この後は、まだ宿に帰るのは早いので、自分たちの服や雑貨を買いに出かけた。買い食いもしつつ。

 アリョーシャの街は治安が割といいので、昼間に見境なく絡んで来るような輩には遭遇しなかった。

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