026 錬金術を習い、製麺機とミンサーを買う!

 ギルドが紹介状を書けるぐらいだから、錬金術師がやってる店は大きい店だとは思っていたが、かなり立派な建物だった。

 店頭販売もしているので、客も多い。


 アルがまずは商品を見てみると、ポーション類だけじゃなく、暗視の目薬、ステータスアップの魔道具、錬成した武器・防具、何らか効果があるアクセサリ、と様々取り扱っていた。

 魔道具は魔道具師の領域では、と思ったが、店員によると錬金術師と協力して作っているものらしい。


「ギルドの紹介状がある。錬金術師に会わせて欲しい」


 アルが紹介状を渡すと、店員がすぐさま開いて読んだ。そう大したことは書いてないらしい。


「オーダーで何か作ってもらいたいということですか?」


「それもあるけど、錬金術を教えて欲しいんで」


「教えるのはちょっと難しいですね。忙しい方なので。少々お待ち下さい」


 店員は錬金術師に今、面会は大丈夫か訊きに行ったらしい。

 問題なかったようで、アルはすぐ店の奥の応接室に通され、待つ程なく、三十代ぐらいの男が入って来た。


「初めまして。当店のオーナー兼錬金術師のセラです。作ってもらいたい物があるとか」


「そう。おれはアル。冒険者だ。まずはこれを見てくれ」


 アルは自分のボディバッグを肩から外して、ファスナー部分を見せた。


「これは?」


「おれが土魔法で作った。でも、耐久性が不明だし、金属で作りたいから錬金術で作れないかと思って」


 ファスナーを開け閉めして機能を見せると、大きいサイズで作った構造モデルをダミーバッグを経由して出した。


「こういった構造なんだけど、作れそう?」


 構造モデルも開け閉めして見せてから、手渡した。

 セラはかなり驚いていたが、興味もかなり沸いたようで、構造モデルを色々と触ったり、違う方向から見たりし始めた。


「何だか背骨みたいですね。かなり興味深いですが、作れるかどうかとなると…土魔法でこれ程、細かい細工物を作れることだけでも驚きですし…」


「おれに錬金術を教えてくれれば、この細かさで作れると思う。どうかな?」


「金属錬成を、ということでしょうか?それとも、自分でスキルを生やして育てるので初歩のポーション作りでもいい、ということでしょうか?」


「後者で。実は土魔法、昨日覚えたばかりでその精度なんだよ。ステータスの器用さAだけあって」


「……そこまでの才能があって何故冒険者なんですか…」


「昨日分かった所なんで。ポーションの作り方、教えてもらえる?」


「構いませんよ。道具を取って来るので少しお待ち下さい」


 本当に教えてくれるらしい。

 講習料金はどのぐらい払ったらいいんだろう?

 ファスナー財布一つでチャラになりそうな気がしないでもない。


 そう待つことなくセラは戻って来ると、テキパキと道具をセットして、ポーション作りを教えてくれた。

 作業をするのはアルだ。

 薬草を均等に刻んだり、水を正確に測ったりするのは慣れてるので、サクサクと進み、煮出した薬草を濾して、魔力を込めたらパーッと光ってポーションが完成した。


「…アル様、魔力込め過ぎです。中級になっちゃってます」


「鑑定スキル持ってるんだ?いいなぁ」


「いえ、色で判別出来るだけです。アル様のスキルの方はどうですか?」


 アルは訊かれて当初の目的を思い出した。

____________________________________________________________________

スキル:多言語理解、物理・魔法・状態異常全耐性、魔力自動回復、浮遊魔力利用、剣術、錬金術

魔法:生活魔法、生活魔法、空間魔法(収納、転移)、属性魔法(火・水・風・土・雷・氷)、身体強化、結界魔法、付与魔法、探知魔法、重力魔法

____________________________________________________________________


 ステータスボードを出してみると、しっかりと錬金術が生えていた。


「おかげさまで錬金術スキルが生えてた。お礼はどうしたらいい?そのポーションで?」


「このポーションならもらい過ぎですよ。お釣りに薬草を差し上げます」


 自分でポーションを作って腕を磨け、ということだろう。

 アルは遠慮なく薬草をもらっておいた。

 ポーションを作るのは調理器具でいい。【クリーン】をかけて使えば、余計な物が入らない。瓶はポーション専用瓶なのでまとまった数を売ってもらう。


「あ、金属もここで売ってる?」


「多少ならお分け出来ますが、まとまった量なら鍛冶屋ですね。冒険者のアル様なら自分で採掘に行くのもいいんじゃないかと。鉱山まで少し距離がありますが」


 勧めるということは、冒険者でも採掘が出来る場所らしい。

 とりあえず、少し金属を買った。

 鉄、真鍮の二つだけだ。魔物素材と合わせて合金に錬金すると、丈夫になったり、伸びるようになったりと色んな効果が生まれるらしい。


「あ、そうそう、製麺機って売ってる?」


「ございます。手動のものと自動のものと、どちらがよろしいでしょうか?素材は錆び難い合金です」


「手動はいくら?」


「金貨5枚です。自動のものは大型になり、麺の太さが更に色々選べるようになり、初期魔石も付属してますので金貨15枚です」


 自動の方は魔道具なのに意外とリーズナブル。


「ミンサーはある?ひき肉を作る道具」


「ございます。油脂に強い合金製で手動のものが金貨3枚、自動のものが初期魔石込みで金貨5枚です。ミンサーは家庭用で普及していますのでリーズナブルに」


「そうなんだ。…あ、ダンジョンで肉ドロップが多いからか」


「左様でございます。お店にご案内しますので是非ご覧下さい」


 中々のセールストークに、懐の温かいアルは気持ちよく買い物した。

 結局、製麺機もミンサーも自動のものにし、セットで金貨18枚にしてもらった。

 小麦粉を更にたくさん買って来なければなるまい。


 ちなみに、魔石オーブンも発見したのだが、お店用でかなり大きく、金貨80枚とお値段もかなり可愛くなかった。

 大半の魔道具のように魔石をそのままセットするだけではパワーが足りず、また高ランクの魔石は高いので手に入り難いため、中ランク魔石を並列で繋いで細かな魔力回路を作り、その回路を作れる者が数少なく、作るまでの時間もかかり…とかなり技術力と開発資金がかかっているそうだ。


(魔石を使わず、魔力を溜めるタンクを作り、魔法陣に魔力が流れるようにして、魔法陣には火魔法の付与をすれば何とかなるんじゃね?)


 付与魔法が使えるアルはそんなことを考えたが、魔道具の作り方が分からないので、適当過ぎたかもしれない。

 魔法陣も勉強したいものだが、専門は魔道具師か?この店の提携魔道具師なら、教えてくれるだろうか。


 まぁ、色々と手を出し過ぎるのも何だし、まずは食生活を更に充実させるか。

 もう外は暗く、市場の店のほとんども店じまいをしているので、買い物は明日にし、宿に帰った。

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