024 結構いい買取金額になった

 色んな意味でドロップが美味しいランニングバードをもっと狩ってから、アルは街の外、昨日、お試しで円盤状結界を張った場所へと転移した。

 ダンジョンから他の場所への転移もやはり問題ない。


「お、まだまだあるな。解除しねぇ限り、ずっとなのかも。ま、丸一日保つのが分かったのは成果だな」


 曇りガラス風結界で宙に浮いたままなのは、誰かに見つかると騒ぎになりそうなので、さくっと解除しておいた。

 そして、再び10階の転移魔法陣側に転移し、転移魔法陣を使って1階に戻り、ダンジョンを出た。

 面倒でも手順は踏んでおいた方が怪しまれないので、アリョーシャの街へと歩く。

 歩きながら空間収納に入っている物のリストを頭の中でチェックした。多過ぎてこんなにいらないのは牙と爪と猿とウルフ系の毛皮か。ベアの毛皮は大きいのでベッドに使えそうだ。


 冒険者ギルドはまだ日が陰って来たばかり、という少し早い時間なので空いていた。

 まずは1階の隠し部屋で出た革手袋、それが入っていた宝石付き宝箱、丈夫なマントの鑑定をしてもらう。


「革手袋は呪いはかかってなさそうですが、詳細はちょっと分かりませんね。こちらの宝箱は本物の宝石なのでかなりの値打ち物です。マントは丈夫なマントで防御力が+10になるようです。全部、売りますか?」


「じゃ、マントだけ売る。…あ、そうそう、近くに牛がいる牧場ってない?」


 思い出したので訊いてみた。


「ちょっと分かりかねますね。ダンジョン内にも牛系魔物はいますが」


「ドロップしない物が欲しいんだよ。生クリームってどこかで売ってる?」


「ちょっと分かりません。商業ギルドに訊いてみた方がいいかもしれません」


「そうする。後、錬金術師のツテってない?」


「お店なら紹介出来ますよ」


 …ということでお店の場所を教えてもらい、紹介状も書いてもらった。

 丈夫なマントの査定は金貨30枚。現金でもらう。中々高額だが、効果を考えたら欲しがる人間が山ほどいるだろう。


 ドロップ品の買取もしてもらったが、


「ちょっと待て、待て!続きはこっちに…って、またお前か!」


と買取カウンターのおじさんに何か怒られてしまった。多過ぎて。


「昨日は二匹だけだろ」


「数じゃなく、驚くようなことをしでかす奴って意味だ!ソロなのに、何だこのドロップ率は!」


「あ、多いんだ?ウルフ系も猿も集団で出て来るから全部倒すだろ」


「普通のソロは集団を避けるんだよ!ったく、よくこんなにマジックバッグに入ったな」


「思ったより入るバッグだったようで」


 自分で作ったコインケース型のマジックバッグでも、余裕で入るが、出回ってる物はもっと容量が少ない。

 ダンジョン産だと言い張ろう。


「あ、ディアとラビットも毛皮がスゲェあった。出して…」


「いや、待て。倉庫に持って来い」


 昨日のキングレッドベアもでか過ぎだったので、運ぶのが大変だったのだろう。

 アルはおじさんの後について行き、倉庫でディアとラビットの毛皮をダミーバッグ経由で出した。

 手芸で色々使えそうなのだが、他の毛皮もあるので十枚もあれば十分だった。足りなければ、また狩りに行けばいい。


「そういえば、肉は?」


「食うんで」


「…毛皮がこうまであるんなら、肉もかなりの量だろう?」


「一人で食うとは言ってねぇだろ。氷魔法が使えるから長期で保存することも出来るし」


「それはすごいな。夏にバイトしないか?」


 バイトという言葉はあるらしい。

 この辺りの地域は六月でもまだ涼しいので、七月からが夏らしい。


「冷凍するだけの簡単なお仕事です?」


「そうそう」


「夏になってもまだこの街にいるとは限らねぇけど、気が向いたらな」


 この世界にいるかどうかも未定だ。

 おじさんは毛皮の枚数を数えて、倉庫の分とギルド内の解体受付側に置いた物を数えて、買取金額を算出した。

 金貨15枚。

 毛皮はかなり出回っているので買取額は安いのだが、量があるので結構いい金額だ。

 買取金額書類をもらったアルは、再び受付へ行き、書類を渡して現金をもらう。

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