023 食欲に支配される!

 4階の肉は結構集まったので、5階に行く。

 この階層は森林フロアで川もあり、ここに魚やカニがたくさんいる、とギルドの資料には書いてあった。

 出現魔物は水辺に大角トカゲ、魔石以外のドロップは革、肉、爪。森にファンモンキー。あざ笑うかのような鳴き声が特徴で群れで行動する。魔石以外のドロップは毛皮、ランダムの木の実…といった具合に魔物の種類も十種類前後まで増える。


 それでも難易度が初級になってるのは、森林に近寄らなければ襲いかかって来ないからだ。全部は無理だが、なるべく避けて通ることは可能だった。


 アルは避けるワケがなく、さくさくと魔物を狩り、魚もカニも捕まえる。

 適当に森を歩いていた所、綿の木をたくさん見つけたので、嬉々として採取する。この階層での綿の情報はなかった。魔物が採取の邪魔をするので、それもあって情報がギルドに届いてないかもしれない。アルは瞬殺だが。


 そろそろ昼飯にしよう、と森林の木を切り倒して切りひらき、防臭でドーム状結界を張り、作って置いた料理で昼食にした。

 ダンジョンの木材も色々使えそうなので、枝葉を落として収納してある。


 そういえば、この階層は木の魔物のトレントが出ないのだろうか。資料によると中層階には出現するのに。


 昼食後、途中だった作り置きを再開し、たっぷりと作って収納する。

 アイスボックスクッキーも氷魔法で冷やし、包丁で切り分けフライパンで焼いた。これも美味しいのだが、やはりオーブンが欲しい。


 午後はドロップ食材集めより、10階の転移魔法陣まで行くことを優先する。

 すると、人が少なくなり、階層をまたぐ転移魔法の検証も出来るからだ。


 移動優先とはいえ6階の山もある高原フロアのスリーピングシープの魔石以外のドロップは、羊毛と羊肉と羊腸なので、かなり多めに倒した。

 ジンギスカン、ラムチョップ、腸詰め、ふかふか布団・ベッドのために!

 群れで行動し、スリープ魔法を使って来る厄介な魔物、という世間の認識だが、魔法耐性と結界があるアルにはまったく関係なかった。


 7階は草木の少ない山フロアで、崖を登り降りするジャンピングゴート、跳ね回るヤギが圧巻だ。魔石以外のドロップは、角、革、チーズ。山羊革は薄くて丈夫で扱い易い素材で財布や靴でよく見かける。

 チーズも美味しかったので、もちろん、たくさん狩った!


 崖壁を巣にしていたパラライズホークがウザかった。

 その名の通り、麻痺させるパラライズアローを羽を使って打って来たので。魔石以外のドロップは矢に使える硬い羽根と爪。ドロップもしょぼいので、尚更、ウザかった。


 数が多くてウザいのがソルジャーアント。

 その名の通り兵隊蟻で酸攻撃をして来て、外殻もそこそこ硬い。魔石以外のドロップは防具に使える外殻、鉄の粒。

 かなり小さい粒なので、旨味は全然ないのだが、鉄の粒の方がドロップ率が高い。


 8階の湖がある草原フロア。

 ワイルドカウの魔石以外のドロップは、待望の牛肉と牛乳と革なので、これまた多めに倒した。

 すき焼き、ローストビーフ、ビーフシチューを食べるぞ!である。

 牛乳は生乳じゃないので、生クリームが作れないが、まぁ、バターで作る簡易生クリームで何とかなるか。後でどこかに牛牧場がないか、冒険者ギルドで訊いてみよう。


 更にランニングバード、つまり、地面を歩く走る鶏系魔物も出現し、魔石以外のドロップは肉と卵と羽。

 この羽が水鳥のように柔らかく適度な弾力もあったので、羽布団、ダウンコートを作りたいがため、虐殺ばりに狩って回った。


 9階の遺跡のような建造物がある盆地フロアで、ようやく異世界物で有名な二足歩行豚人間オークが登場。魔石以外のドロップはもちろん肉。ランダムで様々な部位が出る。

 いかにも魔物モンスターな可愛げがまったくない外見で、動きも人間とは全然違うので、二足歩行でもまったく抵抗がなかった。


 そして、アルは10階に到着。

 フロアボス戦は早い者勝ちで、倒された後、リポップまでの間はボス戦をパスして転移魔法陣まで行ける。ボスを倒さないと当然、ドロップもない。

 10階のボスはブラックベアだ。

 アルは運よく待つことなくボス部屋に入れた。

 レッドベアの下位種になり、戦闘力も同様だが、アルは今回、長剣だけで戦ってみる。


 スタートダッシュして三秒後には決着が着いていた。

 タフなベア系なので剣が折れては堪らない、とアルは長剣に魔力を通して硬化と切れ味をよくして、首を斬った。

 おわり。


「呆気ない…」


 ブラックベアは反応もかなり遅かった。もうちょっと強いボスを推奨したい。


 ドロップは魔石と毛皮と宝箱。

 宝箱は木製の無骨なタイプで作業デスクサイズで大きめ、中身は何かの革のショートブーツとフード付きのグレーのマント。


「何か特殊なアイテムなのかな?」


 アルは一度空間収納にしまってみて、品名を確かめた。


【素早さアップシューズ+10】

【丈夫なマント(防御力+10)】


「うーん。シューズはともかく、マントは動き難いからいらねぇな」


 シューズを収納から出して履いてみると、自動的にサイズ調整され、ぴったりになった。手で持った時より軽い。品名はダサダサだが、結構、いいものだった。こっちを履こう。


 ボス部屋の奥の扉から入ると小部屋に出て、そこに転移魔法陣があった。

 一度使ってみて1階へ行くことが分かると、再び10階に戻る。そして、9階の人気のない所に転移。

 ダンジョン内でもまったく問題なかったらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る