少女招集、戦地へ急行
Yayoi's side
『一年五組、水凪弥生さん。至急職員室に来てください』
いつものように教室で静かに本を読んでいると、突然そんな放送が流れた。
「わたし……?何かあったのかな」
正直何も思い当たる節がない。この高校ではあまり目立ったことはしないようにしていたし。……といっても中学時代だって目立ちたくて目立っていたわけじゃないのだけど。
とりあえず、呼ばれたら行くしかないだろう。
「弥生ちゃん、なんかやったー?」
本をしまって席を立つと、隣から声をかけられた。
彼は朽木君、入学式に声をかけられて以来の関係で、何気に私に話しかけてくる数少ない人物でもある。
「何もやってないと思うんだけど……」
「じゃあなんで呼ばれてるんだろうねー」
本当に、なぜ呼ばれたのだろうか。軍事学校関係の話だと嬉しいのだが、この一ヶ月の間一度もコンタクトがなかったので、多分何か起きていない限り無いと思う。
「とりあえず、行ってくるね」
とりあえず私は朽木君に手を振って、教室を出た。
「来たね、水凪さん」
職員室に入ると、担任に声をかけられた。
「ええと、どうしましたか?」
率直に疑問をぶつける。すると担任は「ついてきて」と言って、職員室を出た。
私の質問への返答は無い。答えて欲しいのだけど……向かう先に答えがあるのかな。
向かった先は、会議室だった。
担任はノックして扉を開ける。担任に続きながら会議室に入ると、男の人が数人居た。
「来たね、水凪くん」
男のうちのひとり、唯一座っている男は私を見るなり席を立った。
「あなたは……」
私は、この人を知っていた。
この人の名は
私が所属する予定だった中央軍事高等専門学校の校長にして、英雄の一人だ。
現在陽王と呼ばれる男と肩を並べ、共に戦い続けた歴戦の戦士で、両手に剣を持ち敵陣で暴れ回るその様から
私は、この道に進んでからずっとこの人のことを追いかけ続けている。
陽王霊継妖都が有名になっていき、陽王の噛ませ犬とすら呼ばれてるが、それでも私は陽王よりもこの人の方がカッコイイと思っている。
そんな人が私の目の前にいて、私を待っている。これは、本当にどういうことなのか。
夢じゃないのだろうか。夢であるなら、一生覚めないでいて欲しい。
「急に呼びつけてしまって申し訳ない。僕は晴嵐、今日ここに来たのは他でもない。君を呼びに来たんだ」
彼はそう言うと、開かれていたパソコンをこちらへ向けて私に見せる。
そこにはどこかの映像が表示されていて、私は驚愕を隠すことが出来なかった。
「君に、僕達を助けて欲しい」
彼の言葉と、今見せられている映像から、私は驚きつつも冷静に状況を分析する。
彼が「助けて欲しい」と言うほどの危機、それにこの写真から考えると、襲撃されたと考えるべきだろう。そして、きっと任務の内容は防衛だ。私が力になれるかは分からないが、やるだけやるしかないだろう。
覚悟を決め晴嵐さんに向けて首を縦に振る。
再び視線を落としてパソコンの画面を見る。
そこには、瓦礫に囲まれた男が二人映っていた。
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