王と呼ばれる男
「陽王……?」
悪魔はどこか思い当たる話があったようだ。
「まあ、話は後にしようや。今は……」
能力を発動して、悪魔の目の前まで一瞬で移動する。そして辿り着いた瞬間に解除。
「戦闘中だぜ」
相手に驚く暇すら与えない。ナイフを腹部に叩きつけ、止まらずに振り抜く。悪魔……イシフィアは吹っ飛び、地面を転がっていく。
追い打ちをかけるべく地を蹴って急接近。反撃のつもりだろうか、イシフィアは先程も出した紫の球を飛ばしてきた。
「その程度でぇ……止められっかよ!!」
球が射程範囲内に入ったタイミングを見計らって能力を発動し、停止した世界でナイフを振るう。能力を解除すると、後ろから爆発音が聞こえてきた。
イシフィアが射程圏内にまで入ったので、地をもう一度蹴って再加速、そのまま能力を発動して更に速度を上げてまたイシフィアの腹に叩き込む。
速度は、力だ。例えば野球ボールを投げる時、時速三○キロで投げたボールより時速一二○キロで投げたボールの方が痛い。
力の求め方は質量掛ける速度……つまり、今の俺の攻撃は、先程の攻撃とは訳が違う。
「ぐあぁ……なんだ、貴様のその力は……」
悪魔はヨロヨロと立ち上がる。どうやら相当ダメージは入ったらしい。
「あー……お前はまだ知らないんだな」
後頭部を掻きながら、ため息をつく。悪魔にこの言葉の意味は分からなかったようだ。
じゃあ教えてやるよ、と言葉を続ける。
「俺の能力は、速度を変える能力だ」
瞬間、俺の中で何かが外れる音がした。久しぶりの感覚、心地いいものだ。
「速度を変える能力……だと?」
まあ、これ以上は教える必要ないだろう。
条件は十分整っている。何かが起きない限り俺が負けることは無いだろう。……その何かが起きるのが戦闘というものなのだが。
俺の能力は、速度を変える能力。
風斗の言うことが正しいのであれば、あいつの能力とは似ているが違う。
アイツは多分だが、プラスにしか発動できない。しかし俺はアイツと違ってマイナス方向への発動が可能なのだ。その点がアイツの『加速』と俺の『変速』の大きな違いだ。
「ほら、話はこの程度でいいだろ」
はやくかかってこい、と言わんばかりに手招きをする。現時点で、俺とイシフィアの立場は接敵時から変わっている。
さあ、戦いはまだ始まったばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます