襲撃者発見。少年相対す

「そいえば、それどしたんだ?」

親父は走りながら俺に聞いてきた。

「どれのこと?」

何も指していないので、どれのことか聞いてしまう。そんなに察し良くないからな。

「その剣のことだよ」

「ああこれ……」と剣に手を添えながら呟く。

「なんか白衣着た女の人から貰った」

面倒くさかったので簡潔に伝える。間違ってはないし問題なかろう。

「白衣?……ああ、神木からか」

知らない名前が出てきた。話から察するに先程俺に剣を投げてきた白衣の人か?

「ソイツは神木零夜かみきれいや。お前のひとつ上の先輩で、技術部の人間だよ」

あの人先輩だったのか。良かった、生意気な態度取ってたら終わってたかもしれない。

「でもなんでお前に剣を渡したんだ?」

「知らねぇよ。ギブズウェポンってヤツらしいぞ。中でもプロトだとか」

俺に彼女の考えが分かるわけが無い。分かる奴が居るのだとしたらソイツはエスパーだ。

「ギブズプロト……なるほど、アイツらしい」

剣の名前で親父は思い当たる節があるのか、勝手に納得していた。

「んだよ、なんで俺に渡したんだ?」

俺の問いに親父は苦笑を返す。

「お前は良いように使われたってだけだよ」

良いように……まあ、実験台ってことか。

あの人、隙のない人なんだろうな。見た目通りって感じだ。

「さて、そろそろ気ぃ引き締めろよ」

親父がそう口にした後、前方から押し返されるようなプレッシャーが飛んできた。

「なんだ……何が居るっていうんだ?」

とてつもない殺気と圧。多分只者ではない。軍学の人間でもここまでは出せないだろう。

「ようやく見えたぜ……主犯格」

徐々に、人の影が見えてきた。この周辺はより状況が酷いことになっている。

辺りはボロボロで、赤く染っている。

「あれが……敵か」

影が晴れていき、姿が鮮明になる。

あれが今から戦う相手。多分、正義に入ってきたやつの仲間……つまり悪魔だ。

もっと人外的な姿かと思っていたが、意外にも人間らしい姿だった。

しかし体調が悪い人レベルの白い顔で、眼は紫色に輝いている。そしてなにより、額から突き出た大きな角が人外感を出している。

「止まれ。人間」

近づいていくと、ある距離で止められた。

「お前は……隊長格だな?」

悪魔は、まっすぐ親父の方を見る。

「隊長格、てのは分かんねえが……てめえにとって天敵であることは間違いねえな」

親父は挑発するように笑う。俺は二人の会話に一切入ることが出来なかった。

俺は悪魔の圧倒的なプレッシャーで今にも倒れそうだってのに、親父は余裕らしい。

「お前の目的はなんだ。日本の敵なのか?」

悪魔が襲撃をしてきた理由、今回それが一番大切な情報だ。なぜ、攻撃してきたのか。なぜここなのか。それが分からなければ何も出来ない。

「お前が知る必要は無い」

と親父の問いを短く切り捨てた後、少し悩んだ素振りをしてから親父を見る。

「そうだな……今すぐ目の前から消えるのであれば見逃してやろう」

ゆっくりと視線を親父から俺に向けてくる。

「だが、お前はダメだ」

一度瞬きをした瞬間、そいつは目の前に立っていた。その現象に俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

悪魔は紫色の剣を作り出し、その剣で俺の首を捉えた。それを目で追いながら、いつぶりかの死を感じていた。

俺……これ死ぬわ。と、いつぞやと同じようなことを思っていると……


金属音が、耳元で鳴り響いた。

そして、後ろから声が聞こえてくる。


「早とちりすんなよ。思春期かお前」





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