珍武器入手、そして作戦決行
「ギブズ……ウェポン?」
俺のオウム返しに彼女はゆっくりと頷く。
「そう。その剣は中でも『プロト』という名がついている」
プロト、先程試作品と言っていたしプロトタイプから取った名前なんだろう。
「これは、どんな剣なのですか?」
剣を鞘に戻しながら、問う。主にトリガーのあたりの説明を聞きたい。
「それは魔法が使えない人用に作ったもの。
ニュービー君、魔法使えなさそうだから丁度良いかなと思ってさ」
魔法が使えない人用の剣……か。そんなものが作られていたのか。試作段階ということは実用には程遠いわけだが。
「その剣は名の通り与える剣。魔法が使えない人間に魔法の力を与える剣なんだよ」
と彼女は説明を続ける。
どうやらカートリッジというものを先程落ちてきた部分に挿入し、トリガーを引くことで剣に魔法が付与されるらしい。仕組みは聞いたって無駄だから聞かなかった。
「それで、これがそのカートリッジだよ」
と言いながら、懐から巾着袋を取り出して俺に向けて投げた。それを受け取ると意外と重くてびっくりした。
「試作品である理由の一つがそれ。専用規格のカートリッジでないと使えないんだ。だから互換性がなくて不便というわけだ」
作るのも時間がかかるしね。と彼女は付け加えた。なるほど、残弾管理を徹底しなければいけないというわけか。
「なるほど……説明ありがとうございます」
この剣を貰えたのは幸運だった。能力があるとはいえ力不足感は否めなかったからな。
「気にしないで。それじゃ、頑張ってきてね」
彼女は微笑んで、立ち去る。終始不気味な人だったな、と離れていく彼女を見て思う。
「あ、名前聞いてねえや」
鞘に付いていた紐を使って何とか腰のベルトに付けた直後、そんなことを思い出した。
でもまあ、彼女とはまたどこかで会う気がする。その時にでも聞けばいいか。
剣を一度出し入れした後、武器庫を出て走る。……と、そこで俺は気づいてしまった。
「集合場所、聞いてねえや」
結論から言うと、なんとか親父と再会することが出来た。あまり時間をかけずに会えたので良かったと思う。親父はキレてたけど。
「遅せえよバカ」
玄関に居た親父に駆け寄ると、再会早々に悪態をつかれてしまった。そんなこと言われてもしょうがないだろう。
「しょうがないだろ。男だって準備に時間をかけたいんだ」
「いつも数分で終わるお前が言うな」
くそ、なんでいつもの俺は準備時間が少ないんだ。言い訳として成り立たなかったぞ。
「まあ、そんなことより行こうぜ」
とりあえず、話を変えることにする。
「そうだな」
もう少しグチグチ言われると思ったが、親父はすんなりと話題転換に乗ってくれた。流石の彼も理解しているのだろう。急がなければいけないということを。
結構道草を食ってしまったからな。早く現場に向かわないと犠牲者が増えてしまう。
「ふむ、どうしたものか」
目的地に向かって走っていると、親父は何か悩んでいるかのような声を漏らした。
「どうしたんだよ。なんか忘れ物したか?」
「いや、そうじゃなくてな……」
少し言葉を詰まらせている。何か言いづらいことなのだろうか。今の状況でやめて欲しいものなのだが……
「作戦名をどうしようかなと──」
「──どうでもいいわバカオヤジ」
クソどうでもいい事だったので、つい食い気味でツッコミしてしまった。
作戦名とか決めなくていいだろう。どうせ誰も気にしないんだから。そんなことより戦術とか作戦内容とかを考えて欲しいものだ。
結局、俺のツッコミ虚しく親父は作戦名を考え続けていた。流石に呆れるしかない。
何度も唸りながら考え続け、やがて「決めた」と呟くと、満足したかのような顔になって宣言した。
「作戦名、ガーディアン……決行だ」
「気張っていこうぜ」とこちらを向いて笑う親父に、俺は心の中でツッコミを入れる。
ガーディアンて、そのままじゃねえか。
だがまあ、確かに名前があった方がやる気が出るのかもしれない。たまには親父にも乗ってやろう。
「りょーかいだ。クソ親父」
親父の脇腹に拳を押し付けながら、俺も笑う。相手がどれほど強いのかは分からないが、こんなところから緊張していても疲れるだけだしな。親父も俺の緊張を察してのことなのかもしれない。
いやこの人に限ってそれはないか。
と、彼にバレないように苦笑して、足の速い親父を追いかける俺なのであった。
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