助けてーーー!!!パパーーーーン!!!!!

「うし……いくか」

呆れた顔で見る正義まさよしを放って大きく息を吸う。そして、誰も居ない空間に向かって……



「助けてーーーーー!!!!!!!

パパーーーーーーーーーーーン!!!!!!」



……………何してんだ俺。

虚空に吸い込まれていった俺の声を聞き届けつつ、冷静になる。

「馬鹿なのか。こいつは」

「うるさいぞソコ。俺も思ってるよ」

ボソッと呟く正義の事は絶対に見逃さない。上半身だけ後ろに振り向き指をさす。

「人に指さすな」

正義はため息をつく。

どうしてこうなったのか。ということなのだが……これはとても簡単な話だった。



話は、数分前の会話に戻る。

正義の名を聞いてから、また脱出する方法を考え始める。

「これ、本当になんなんだ?」

俺は壁際に寄って紫の壁をナイフで叩く。すると硬い何かに当たる感触の直後、ナイフが弾き飛ばされた。

「多分だが、それは防御魔法だ」

男はゆっくりと歩いてこちらに来ながら言う。その顔は少し呆れていた。

……なんだよ、しょうがないだろ少し前まで一般人だったんだぞ。見ただけじゃ分からねえよ。

「お前じゃ壊せないのか?」

俺には壊せないと思うので、正義に聞いたのだが……奴は無言で首を振った。横に。

「まじか。どうすればいいかな」

後頭部をポリポリと掻く。コイツの力で壊せないのであれば俺らにはきっと力ずくでの破壊は不可能。だが他の方法も思いつかない。

「……先生達なら、もしかしたら」

正義は顎に手を当てながらそんなことを言った。確かに教師陣なら行けるかもしれない。

「でもよ、じゃあなんで外から壊さないんだ?」

ここで当たり前の疑問が浮かんでくる。

……そう、どうして教師陣はすぐに結界を破壊しなかったのか、だ。

「……確かに。それじゃあ教師陣だとしても無理なのか?」

でも、先生ですら無理なのか?あの人は魔法のプロフェッショナルでもある。そんなあの人がこれを壊せないとは思えないのだが……

それに、生徒の避難誘導の為に全員が居なくなるなんて有り得るか?

「……もしかしたら、別の魔法もかかってるのかも知れないな」

別の魔法か。確かにそれは有り得てしまう。

「でもどんな魔法がかかってんだ?」

俺は完全に素人だからな。魔法のことなんて見てわかるわけが無いので経験者に聞いてみたのだが……

「俺は剣一筋だからよく分からないが……多分だがこちら側から外が見えないようにする魔法はかかっていると思う」

そうだった。正義も剣だけで戦ってきた男だった。魔法素人ふたりでこれをどうしろと?

「外を見せない……てことは外で何かが起きてるってことか?」

「多分だがそうなのだろう。そうでなければ先生達が対応しないわけが無い」

……仮にそうだとすれば、俺達はここに居るしかないのか?

「まあ、叫んでみたら届くかもな」

正義は鼻で笑う。俺はそれを聞いて顎に手を当てた。

「……じゃあ、やってみるか」

「バカなの?」

「うっせ」



……そして現在に至る。というわけだ。

「バカなの?」

「うっせ」

数分前に聞いたような会話をする。

何回も言わんでいいわ俺だって思ってるよ。


……瞬間、轟音が鳴った。

あまりに突然過ぎる出来事で、俺達は何かが起きたと気づくのに数秒後のラグが生じた。


「助けに来たぜ!!!!!!!

マイサーーーーーン!!!!!!!」


俺と正義は音に釣られて空を見上げる。

そこには砕けた紫の何かと共に降りてくる影があった……


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