どうすれば僕達出られますか?……あ、無理?

「……ぐぅ」

「お、起きたか」

目の前でのびている男の呻き声を聞き俺は胡座あぐらの姿勢から立ち上がる。

俺の本気の三発が炸裂してから、数分が経過した。その間も紫の壁が消えることはなく俺は待つしか出来なかった。

……なぜ消えなかったのだろう。もしかしたら気絶させるだけでは駄目だったのだろうか。内側から壊す方法が無い俺にとっては大迷惑だ。


「ここは……?」

ゆっくりと起き上がる男。俺の攻撃をもろに食らっておいてすぐ立ち上がるなよ。悲しくなるだろ。

「まだ闘技場だよ。あれから数分しか経ってない」

先程のは意識があったのだろうか。俺の顔を見た男はすぐに聞いてきた。

俺の言葉を聞いた男は「そうか……」と言葉を零す。その言葉を最後に俺達の間に沈黙が流れる。正直気まずいのでやめてほしいのだが、決戦中ということもあり気軽に話しかけられずに時間だけが過ぎ去っていく。



「……すまなかったな」



沈黙を破ったのは俺ではなく、男だった。

まさかの初手謝罪。この言葉は想定していなかったためとても驚いた。

「なんでお前が謝るんだよ。気持ちわりぃ」

俺の言葉に男は動き出そうとしたが、俺は言葉を続ける。

「あれは正直異常事態だったし、そもそも俺のような一般人を受け入れる人の方がおかしいんだよ。だから謝ることは無い」

そう、そうなのだ。確かに親は軍人だったが、それは俺がこの学校に入ってから知らされた話だし、きっと入っていなかったら教えられることもなかっただろう。つまり殆ど一般市民といってもいいような人間だ。この位のことが起きるとは何となく察していた。

……まあ、イラついたのは本当だがな。

「にしてもどうにか出来ないか?これ」

俺は腰のハンドガンを誰も居ない空間に向けて撃つ。するとその弾は紫の壁に阻まれた。

「それなんだが……」

ポリポリと後頭部を掻きながら申し訳なさそうに口を動かす。

「あれは俺の意識外で行ったことで、俺自体はどうやってやったんだよ……って状況なんだ」

……ちょっと待てよ。俺の考えでは男が起きれば壁をどうにかしていたはずなのだが。

「つまりそれは……俺らは出られない?」

俺の言葉に男は……無言の肯定という名の首肯をしてきた。


「はあ……ところで、お前名前なんなんだ?」

俺は少しの間目を閉じて現実から逃避し、目を開けてすぐに訊く。

「今、聞くことじゃなくないか?」

男は困惑する。煩いそんなん分かっとるわい。流石にこの現実を受け止めるのは無理なんだ。

俺は無言で男を睨み続ける。

「……正義正義まさよしせいぎ

男は観念したように溜息をつきながら答える。

「変な名前だな」

クスッと笑うと正義の剣が俺の真横を通過する。少しでもズレていたら死んでいた。

「わ、わるいわるい」

冷や汗をかきながら平謝りをする。

なんだよ。意外と細かいこと気にするんだなこいつ。この地雷は踏まないようにしよ。

……と、未来の自分に向けて注意喚起するのであった……


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