どうすれば僕達出られますか?……あ、無理?
「……ぐぅ」
「お、起きたか」
目の前でのびている男の呻き声を聞き、俺は
俺の本気の三発が炸裂してから、数分が経過した。その間も紫の壁が消えることはなく俺は暇を持て余すしか出来なかった。
……なぜこの壁は消えなかったのだろう。もしかしたら気絶させるだけでは駄目だったのだろうか。ということはこの男の息の根を止めるべき?
それとも、実は先程のが原因ではなく、第三者による遠距離支援だろうか。どちらにしても、内側から壊す方法が無い俺にとっては大迷惑だ。
「どうなった?」
ゆっくりと起き上がる男。俺の攻撃をもろに食らっておいてすぐ立ち上がるなよ。悲しくなるだろ。
「まだ闘技場、あれから数分しか経ってない。壁も消えてないし、あれから動きも無いよ」
先程のは意識があったのだろうか。俺の顔を見た男はすぐに聞いてきた。
俺の言葉を聞いた男は「そうか……」と言葉を零す。その言葉を最後に俺達の間に沈黙が流れる。正直気まずいのでやめてほしいのだが、決戦中ということもあり気軽に話しかけられずに時間だけが過ぎ去っていく。
「……すまなかったな」
沈黙を破ったのは俺ではなく、男だった。
まさかの初手謝罪。この言葉は想定していなかったため、目を見開いて驚いてしまう。
「なんでお前が謝るんだよ。気持ちわりぃ」
俺の言葉に男は動き出そうとしたが、それを遮るように俺は言葉を続ける。
「あれは異常事態だったし、そもそも俺のような一般人を受け入れる奴の方がおかしいんだよ。だから謝ることは無い」
そう、そうなのだ。確かに親は軍人だったが、それは俺がこの学校に入ってから知らされた話だし、殆ど一般市民と称してもいいような人間だ。この位のことなら起きると何となく察していた。
それはそれとして、こいつのこれまでの行動にイラついていたのは本当だがな。
「にしてもどうにか出来ないか?これ」
俺は腰の銃で誰も居ない空間に向けてゴム弾を放つ。
「それなんだが……」
視線を壁から男に移すと、ポリポリと後頭部を掻きながら珍しく申し訳なさそうに口を動かした。
「あれは俺の意識外で
……ちょっと待てよ。俺の考えでは男が起きれば壁をどうにかできたはずなのだが。
「つまり……俺らは出られないってこと?」
俺の言葉に男は、無言という肯定を見せることで問への解答を表した。
◇◇◇
「はあ……ところで、お前名前なんなんだ?」
俺は少しの間目を閉じて現実から逃避し、思考を切り替えてから男に訊く。
「今、聞くことじゃなくないか?」
男は困惑する。煩いそんなん分かっとるわい。流石にこの現実を受け止めるのは無理なんだ。少しでも気を紛らわさせろ。
という意を込めて俺は無言で男を睨む。
「……
男、いや
「変な名前だな」
名を聞いて思ったことを素直に言いながらクスッと笑うと、正義の剣が俺の真横を通過した。少しでもズレていたら、両手を上げる暇もなく俺の頭は体から離れていただろう。
「わ、わるいわるい」
冷や汗をかきながら平謝りをする。
なんだよ。意外と細かいこと気にするんだなこいつ。この地雷は踏まないようにしよう。
などと、未来の自分に向けて注意喚起するのであった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます