決戦が始まる、そして俺はお腹を壊す。
それから、約一週間が経過していた。
注文した銃は届き、慣れてきたというところで決戦の詳細が届いた。
翌日、闘技場にて決戦を行うらしい。相手の要望は俺の退学。そして俺の要望なのだが……まだ決めていなかった。
「君、ここから落ちるということがどういうことなのか。分かっているよね?」
先生から、圧がかけられる。この一週間は先生の特訓地獄と共に過ごしていた。
今日は最終調整の日で軽い手合わせしかしていない。連日の地獄のせいで久しぶりの軽い手合わせが楽しいとすら感じてしまう。
「勿論、分かっていますよ」
この学校の中へ入っただけで先生直々に殺しに来たのだから。嫌でも理解している。
先生の脅しを受けながら、今日が終わる。
自宅に帰還した俺はベッドに寝転がりながら考える。決戦について、軍事学校について。
死神から逃げても逃げ切ることは出来ない。本当に最悪だ。どうしてこんなにも死ぬ寸前で生活しているのだろうか。
「とりあえず、明日も頑張ろ……」
独り、誰も居ない部屋で呟き、調子ガチャを数時間かけて回し始める。どうせなら超絶レアが出て欲しいものだ。でなければ死んでしまうのだから……
◇◇◇
翌日、俺の調子はレアといったところだった。こういう時って大体最悪か最高の二択じゃないの?
そして学校へ行き授業を受けてから、直前に先生と軽く手合わせをして時間となった。
こういう時でも授業はさせられる。生徒間の問題のため教師は関係ないらしい。
決戦の会場である闘技場は校舎とは別の建物にある。……どんだけ広いんだこの学校。
戦場へと入る通路で、心を落ち着かせる。
流石の俺も、緊張している。ファイブセブンの弾薬はある。勿論、殺傷能力の無いゴム弾だ。ナイフの刃は潰れているが訓練用なので仕方がない。
「ふふ、流石に緊張しているね」
はぁー、と長い息を吐いていると、斜め前くらいから先生の声がした。
「そりゃしますよ。決戦なんて初めてですし」
まずちゃんとした戦いだって二回目なんだ。慣れるわけが無いだろう。ていうか慣れるものでも無いだろう。
「そんな貴方に、妖都さんと私からアドバイスだよ」
ニコッと笑う先生。アドバイス……先生は分かるが、親父からもあるの?
「アドバイスですか」
先生は縦に首を振る。使えるアドバイスだと良いな。いや、きっと有益な情報だろう。
「まず、妖都さんからだけど……『能力はその力を相手に教えることで強くなる』だってさ」
……何言ってんのあの人。相手に教えたら対策されちまうじゃねえかよ。
「まあ、これは世界のルール的なものなので、何故は気にしてはだめだよ」
世界のルール、そういうものがあるのか。全く気にしたことも無かったが。いや多分軍人の世界でなければ気づかないことなのかもしれない。
「分かりました。……それで、先生のアドバイスとは?」
とりあえず考えても無駄だと分かったので、先生のアドバイスを促す。
「私からはルールとかそういうものじゃないんだけどね」
と先生は前置きを挟んでから、俺の頭に手を乗せる。その行動に俺はビックリしたのだが、先生は話を続ける。
「相手は強い。だけどね、君だって負けてない。後は気持ちの問題なの」
この言葉は、とてもありがたいものだった。相手はずっと戦ってきた猛者。俺とは経験も実力も段違いだ。
……だが入学からずっと俺を見てきた先生がこんなことを言ってくれるのだ。安心できない訳が無い。
「原動力は心。心が折れない限り、貴方は負けない……分かった?」
その先生の言葉に、俺はゆっくりと頷いて短く返事をする。
「はいっ!!」
そのまま先生に背中を押され、いざ戦場へ。……というところで俺は正反対へ向き直り、戦場とは反対方向に駆け抜ける。
「えぇ!?」
先生もあの流れで行くのかと思っていたらしく、目を見開いて驚愕している。
そんな先生に俺は一言だけ告げた。
「トイレ行ってきます!!!」
……そう。勝てなかったのだ。緊張に。
俺こと霊継風斗は、緊張すると腹に来てしまうタイプの人間なのだ。
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