これが特異の宿命……なんちって

俺は普段、昼間授業を受けた後、第三室内訓練場に行って先生とのマンツーマントレーニングをしている。

第三室内訓練場とはあれだ。俺が入学式の日に殺されかけたあの場所だ。

今日も今日とてトレーニングを受けに行くのだが、向かう途中で事件は起きた。


「いってえな」

廊下の硬い床に座り込みながら、目の前の男を睨みつける。目の前の奴は真顔で俺を見下す。……エリートが平民を見下しているような感じの目をしている。少しイラつく。

何故こうなっているのか、それは少し前に戻る。


授業が終わり、荷物をまとめて訓練場に行こうと廊下へ出て歩いていると、目の前から周りより更にガタイのいい男が歩いてきた。

俺はソイツから避けるように横にずれたのだが、思い切り肩が衝突した。

俺は吹っ飛ばされ尻もちをついたのだが、目の前の男はガタイがいいからか微動だにせず俺を見ていた。

俺はこの男のことを少し知っている。


この男はことある事に俺の事を敵視しており、少し厄介だなと思っていたのだ。

どうやら本来入学するはずだった奴が凄い剣士らしく、俺が代わりに来たことで手合わせが出来なくなり八つ当たり。といった感じらしい。一番困っているのは俺なのだから辞めて欲しいものだ。


「すまないな。想像より軽かった」

知ってただろうが。ていうかわざとぶつかった事を隠そうともしないなコイツ。

「そうですか、そんで……なんか用っすか?」

俺はゆっくりと立ち上がり、見上げるように睨む。身長は頭一つ分違う。……俺これでも人並みの身長してるんだけど。


「……お前に決戦を申し込む」

少しの沈黙の後、口を開いたかと思えばそんな事を言われた。

「いきなり何ですか。俺の事決戦する価値があると認めてくれたんですか?」


決戦とは、この学校に存在する特殊なルールのことである。

戦いで決する。そのままの意味で、揉め事とか何かあった時、他にもただの勝敗を決める目的にまで使われるルールだ。

内容は単純、両者の同意のもと闘技場にて試合を行い、負けを認めさせるか戦闘不能にしたほうの勝ち。というものだ。

そして、決戦では両者戦う前に敗者に要求するものを宣言する。

金を貰うも良し、謝らせるもよし、生命を奪う行為以外であれば許されている。


……とこういうものなのだが、今まで散々授業でボコボコにしてきた俺に何故決戦を申し込んだのか。

「お前に価値など無い。ただそろそろ終わらそうと思っただけだ」

終わらそうと思っただけ。……一体どういう訳なのか。いやこの男が俺に要求する事なんてひとつしかないか。

「俺が勝利した場合、お前には学校を辞めてもらう」

あの戦闘を逃げ切り入学出来たのにまた死にかけるのかよ俺。てか俺辞める必要無いと思うんだけど。

「お前が勝利した場合は好きにしろ。死ねでも何でも呑んでやる」

ちょっと待て。何でも……だと?

そこで、俺の心に火がついた。

「おうやってやろうじゃねえか。てめえの首飛ばしてやる楽しみにしやがれ」

流石の俺も今までの嫌がらせから怒りが溜まっていたらしい。廊下ですれ違えば肩をぶつけられ、授業の模擬戦ではボコボコにされ、隙を見せたら攻撃され、鬱陶しかったとこなのだ。こんなチャンス見逃さないわけない。


……と、決戦を受け入れたのだが。時間が経つ事に辞めておけばよかったと後悔したのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る