第一章二節 同学年
絶対に何かおかしいっ!!
「加速する能力……か」
父は言葉を繰り返し、やがて苦笑する。
「やはりお前は俺の息子だな」
俺はその言葉の意味が分からなかった。確かに俺はこの人の息子だが、なぜ今ここで再認識したのか。
「どういうことだよ」
とりあえず、問いかけることにする。すると親父は語り始めた。能力の詳細を、そして先程の発言の意味を。
どうやら、能力というものはいつどこで発現したのかまだ判明しておらず、発動条件もメカニズムも何も分かっていないらしい。
世界で初めて能力を発現させた人物も分からず、いつの間にか存在していたのだとか。
だが、そんな能力にも判明していることがいくつかある。
そのうちのひとつが、遺伝だ。
能力は遺伝するものらしく、親子で同系統の能力が発現する可能性が高いらしい。
そして俺の能力は『加速』で親父の能力は『変速』らしい。だからこそ先程「お前は俺の息子」という発言をしたのだとか。
「能力は謎だらけだし、どうやって遺伝するのかとか分からんのだけどな」
という言葉で親父は説明を締めくくる。
今までこの人と同じ家で暮らしてきたが、親父が能力を持っているのは知らなかった。それ以前に軍人だったことも、彼がやっている仕事についても、何も知らない。
「さて、そろそろ本題に移るか」
パンっと手を叩く。その瞬間空気は急速に変化し鋭く、硬くなった。
「……本題?」
「そう、俺が来たのはお前に良い情報を教えてやるためなんだ」
良い情報……この人から出る良い情報という言葉はあまり信用出来ないんだよな。
「良い情報、ねえ……なんなんだ?」
俺はここで死ぬとかそこらへんだろうか?この人なら言いかねないのが怖いところだ。
ゴクリ、と喉を鳴らして親父の言葉を待っていると、想像とまるで違う言葉が俺の耳に入ってくるのだった……
◇◇◇
Yayoi's side
「……やっぱり、何かおかしい」
廊下を歩きながら、誰にも聞こえないように呟く。周りには今私が着ている服と同じデザインの制服を身にまとった生徒達が私と同じように廊下を歩いている。
先程まで体育館で座らされ長い話を聞かせられていた。銃も剣も持たずに平和ボケしきった顔で話を聞く様を見て、何度も感じている。とてつもない場違い感を。
「ねえねえ、君名前は?」
クラスに入って席に座ると、隣の人から声をかけられた。
筋肉は多少ついているが痩せていて細く、顔は整っておりクラスのリーダー的存在になりそうな男だ。
「……
警戒は怠らないが、一応名乗っておいた方がいいのだろう。隣の席だし。こんな普通科高校だとしても、何があるか分からない。
「弥生ちゃんね。俺は
瞬間、背筋が凍るような感覚に陥る。
誰かに背後を取られるような、誰かに舐め回されるように観察されたような感覚。
でも私は1番後ろの席だし、近くで私を見ているのは朽木君ただ一人。
……つまり、朽木君がこの感覚の正体?
でも有り得ない。ここは多分普通科、こんなことできる人が居るわけない。
「……おと?どうしたの?」
ニヤニヤという今見れば不気味な笑みを浮かべながら心配の言葉をかけてくる。
「あ、いや……なんでもない」
多分、これは私の考え過ぎなのだろう。
一般校に入ることになって気が動転しているのかも。だからきっと変な感覚だったんだ。
「はあ。絶対におかしいよ、これ……」
と、隣の朽木君にすら聞こえないであろう声で呟く。一体、何が起きているというのだろうか……
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