霊継家直伝汎用確殺奥義
そういえば、靴下も先が少し無くなっている。あれもしかして足無くなりかけてた?
避けた気でいたが結構危なかったらしい。
靴を履いているのに肌に空気が当たる感覚は違和感があるが気にせずにいこう。
先程気づいた可能性を少し試してみたい。
これで出来なかったらそれこそ一巻の終わりだが、まあやらなければどうせ終わりだ。
そして俺は力を込めて床を蹴って教師に急接近しながら……
舌を千切れるほどの力で噛んだ
その瞬間、世界は再び色を失った。
……やっぱり、これが
多分相当な力で噛まなければ発動しないのだろう。発動するのだとしたら今までの人生で発動しているはずだし。
さて、今の加速倍率は先程と同じ十倍だ。
つまり一秒しか余裕は無いのだが、その為に前もって接近しているのだ。
一秒しかない。しかし一秒もあるのだ。
目の前の彼女に攻撃されることも、避けられることもない時間が一秒もある。命をかけた戦闘での一秒は大きなアドバンテージとなる。勝敗を左右するほどに。
そして灰色の世界を駆け、彼女の目の前まで辿り着いた時、世界は色を取り戻した。
……だが、もう彼女の眼前だ。有り得ないスピードで接近してきた俺に彼女は目を見開いて驚いているが、余程守りに自信があるのか防御することもなく攻撃の準備を始めた。
油断大敵。この勝負、俺の勝ちだ。
確かに、銃弾とかではあの魔法は抜くことが出来ないだろう。……しかし俺にはその魔法をぶち壊す秘策がある。直感的にできると思ったのだ。それを信じるしか道は無い。
そして俺は能力の連続使用回数の限度を確かめることも含めて更に舌を噛む。
どうやら連続三回は使用出来るようだ。
俺は能力のことを徐々に紐解きながら、握った銃を思い切り振り上げる。
本来銃というのは撃つ……つまり銃弾を音速で飛ばす為にある。しかし今回俺はその銃口を向けるわけでもなく振り上げている。
この技は俺の家、霊継家に伝わる奥義だ。
本来はあまりやらない方が良い技なのだが、もう詰みに近い状況だ。しょうがない。
そこで、力は解かれ世界に色が戻った。
だがもう遅い。俺の魔法すら貫く奥義は完了する。
霊継家直伝汎用確殺奥義『
振り上げた銃をそのまま振り下ろし、グリップの下部……マガジンを差し込む部分で思い切り教師の額辺りを叩く。
その攻撃は少し何かに引っかかったがその引っかかりを何かが砕ける音と共に貫き彼女の額にダイレクトアタックするのだった。
ガァン。という重々しい音と共に手に衝撃がかかってくる。所謂反作用というやつだろうか。それすらも気にせずに銃を振り抜く。
彼女は振り抜かれた銃によってまるで金髪の吸血鬼のように仰け反ったが、流石は軍人。踏みとどまっている。
いや普通踏みとどまれないんだけどね、結構本気で殴ったんだけど今の……
……ただの打撃ではない。銃撃の一種だ。そんな「ただ殴ってるだけ」とかいうツッコミは受け付けていません。
体感的には五秒ほど──実際にはきっと一秒程──彼女は仰け反った状態だったのだが、その状態で少し多く息を吸い込み、まるで薄いバネ板が曲げた状態から戻るように跳ね起きた。
「いっっっっつぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
教師の絶叫はこの訓練場全体を震わせた。
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