戦闘。今日初めて会った教師

 ……やはりこうなるのだろう。少し考えればわかることだ。

 本来入ることの無い一般市民、そしてこの学校は機密情報の塊。この時点で何かしら対処が施されて当たり前なのだ。

 そしてこの教師。わざわざ俺一人だけ隔離されて教師と一体一タイマン、それにこの教師は片手に銃を持っている。そりゃあ察しますよね。ここまで消される準備されていて理由もあるんだから。

「嫌だ。と言ったら?」

 ニヤリと笑って教師に問う。笑う余裕があるのかと言われればない。これは見栄を張ってるだけで実際は背中にイヤーな汗がびったりだ。

「勿論、拒否権なんてないよ」

 目の前の教師もまたニヤリと笑う。

やっぱり拒否権なんてないですか。

「でも、流石に無抵抗の人を殺すのは私でも心が痛んでしまうね……」

 すぐにでも撃たれて終わるのかと思っていると、突然目の前の教師がそんな事を言い出した。

 正直死ぬ覚悟は出来ていなかったし有難いのだが、少し拍子抜けてしまった。

 軍人というのは無慈悲な人達ではないのだろうか。心が痛むなど嘘にしか思えない。

「ということで、君にこれを授けよう」

 少し何かを考えたフリをした彼女は、手に持っていたグロックを投げ渡してくる。

 驚きつつも何とかそれをキャッチすると、次に何個かマガジンが渡された。

外見ではよく分からないけれど、彼女の武装はこのグロックだけな気がするのだが。なぜそれを俺に渡してしまったのか。

「……抵抗しろ、ということですか?」

 グロックのセレクターをセミオートに変えながら彼女を睨む。

「ふふ、元々そのつもりでしょう?」

 彼女は武装を自ら手放したというのに不敵な笑顔を顔に貼り付けたままだ。

 不利な場面は慣れているということなのだろうか。

「それじゃあ、とことん抵抗させてもらいます……よっ!!」

と不敵な笑みで返しながら胸のあたりで銃を構えて即発射する。

 どうせ銃を撃ったこと無いと思っているであろう彼女の不意をついた一撃。普通の人間であれば絶対に避けられない必殺の攻撃のはずなのだが……


キィンッ!!


という甲高い金属音がしながら彼女の目の前で弾頭が弾かれた。

 正直、理解が出来なかった。俺の一撃は確実に彼女の眉間を射ていた。……だが目の前の何も無い空間で弾かれた。

 どういうことだ?何故弾かれた。何か動いたか、いや動いたとしても銃弾を弾くことなんて出来るわけない。それに彼女は今何も持っていない。

 一体どういうことなんだ?

「C.A.Rシステムのハイポジション……ただの一般人がその構えをするわけないも思うんだけど……君、何者?」

 思考を回して疑問を処理しようとしていると、目前の教師はそんなことを訊いてきた。

 C.A.Rシステム。室内などの近接戦闘向けの射撃スタイルでその中のハイポジションという胸の前あたりで構えるスタイルを俺はとっている。

 どうしてこの射撃スタイルを知っているのかというと、昔親父に教えてもらったのだ。

 あの人は何故か軍事系に長けており昔から色々な話を聞かされているのだ。だからこそ俺は九九式小銃とかを知っていた。

「ただのミリタリーヲタクの息子ですよ」

 苦笑しながら発砲する。……がそれもまた弾かれてしまう。どうして何も無い空間に弾かれるのか検討もつかないため内心滅茶苦茶焦っているのだが、それを悟られてはいけないため何とか笑顔を貼り付ける。

「……そう。それより、どうして弾が当たらないのか気になっているんでしょう?」

 ギクッという効果音が頭の中に流れる。

 この人エスパーか何かなのか?……いや単純に俺の知らない技術を使っているという予測から俺の心情を当ててきているのだろう。

「さあ、それはどうでしょうね?」

 彼女の声的にきっと俺の焦りを確信しているのだろうが、念の為しらばっくれておく。

「ふふ、強がらなくてもいいのに。……じゃあ気になるという仮説を立てて説明させてもらおうかな」

 そうして人差し指をピンッと立てながら、彼女はその謎の現象を説明し始めるのだった……

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