君は招かれざる客ってわーけ

「……えーっと?」

 現在、中央高校の目の前まで来たわけなのだが。なんか周りごつい人しか居ないんですけど。それにみんな銃とか剣とか法に触れるようなもの持ってるんですけど。てかここ日本ですよ、銃とか剣とか持ってて警察に捕まらないんですか?

 あ、AKアカじゃん。それにウィンチェスターM1887とかグレネードランチャーってター○ネーターじゃないんだから……


 ……もしかして俺やばいところ来ちゃった?


 中央‟軍事”高等専門学校校門前、ようやく風斗は自分が入学した学校のやばさの片鱗を見たのだった……

 聞いたことないんですけど銃とか剣とか持ってくる学校なんて。ていうかみんな俺見てるのなんで?怖いんだけど。防御力下がってしまいますけど。……まあとりあえず視線は無視して行きましょうか。気にしてたらやってられないわ。

 気にしないという方向で行くと結論付けた俺は入学式の受付に向かった。

「新入生の方ですね。お名前と得意武器を」

 うんやっぱりここやばいですね。なんで受付で得意武器なんて聞かれるんだよ。そんな学校聞いたことねえぞ。

「ええっと……霊継風斗です。得意武器……というのは分かりません」

 聞かれてしまったものは答えなければ失礼なので答えてみた。といっても得意武器なんてものは知らないのだが……

「霊継さんですね……えーっと……」

 受付の方は手元にある名簿らしき物で名前を確認する……のだが小首を傾げる。

 俺は視力が良い方なので今の位置から名簿を見ることが出来るのだが、探してみても俺の名前は見つからなかった。

 ……やはり俺がここに入学するのは何かの間違いなのだろう。んまあ来てしまったものはしょうがないのだが……

「すみませんが、招待状はお持ちですか?」

 受付の方は隣にいた人に何かを耳打ちすると俺にそんなことを聞いてきた。

 招待状……この学校から送られてきたやつか。合格通知とかではなく招待状という名前で送られてきたのだが、ここで使うとは。

 一応鞄に入ってはいるので、取り出して提示する。受付の方はそれをじっくりと見てから頷いた。

「確認致しました。それでは係の者が案内しますのでこちらへ」

 といつの間にか隣に待機していた係の人であろう人物を指差す。

「は、はぁ……わかりました」

 他の人は何かを貰った後普通に体育館へ向かっているのだが、俺だけはなぜか違うようだ。まあしょうがないか、と思い素直に着いていく。

 他の新入生とは違い校舎の中に直接入っていくのだが、その際に新入生や他の在校生であろう人達にめちゃくちゃ見られた。先程からずっと見られているのでもう慣れてしまったが。

 ……ていうか、屋上にいる人なんで俺を見てるのだろうか。

 先程から屋上にいるスナイパーであろう人物がスナイパーライフルを構えてこちらを見ている。スパイだとか怪しい人物に見られているのだろうか。

 スナイパーライフル見るの久しぶりだな。九九式狙撃銃か、親父に見せてもらったことはあるがここでも採用されているのか。

 ていうかもう銃刀法違反とかどうとか思わねえぞ。もう慣れたかんな。

「こちらです」

 横目で屋上の人物を見ながら歩いていると、案内してくれた係の方が止まった。

 ふむ。『第三室内訓練場』ですか。なんでここに案内されたんだ?

 まあ立ち止まっていても仕方ないので係の方にお礼を言ってから扉を開けて入る。

 扉が結構重かったが、そんなに丈夫にする必要はあるのだろうか?訓練場というくらいなのだから大事なのだろうか。

「あ、来たね」

 中は体育館とほぼ変わらないような広さでとても動きやすそうな部屋だった。

 その中央に誰かが立っている。腰に届くほど長い紫の髪を持った女の人だ。

 手にはハンドガンを持っている。あの四角い形状でスライドの左後方に丸い切り替えレバーがついているのできっとGLOCK18だろう。18cかもしれないが……

 グロック持ちの女性とか嫌な予感しかしないのだが、手招きされてしまっているので仕方なくその人に近づく。

「初めまして。霊継風斗君で良かったよね?」

 彼女の少し前に立つとそんなことを聞かれる。流石に情報は渡っているようだ。ていうことは嘘はつけないということだな。騙らずに素直に行こう。

「はい、そうですが。なぜ俺だけここに?」

 素直に行くと決めたので、単刀直入に理由を問う。

 ここに来たのは俺だけのようだ。扉を閉める直前に見たのだが、先程の係の人はすぐに場を離れていたし、他の受験生の姿も見えない。完全に俺とこの人の二人だけだ。

「うーんとね。まあ誤魔化すのもめんどくさいから言っちゃうけど……君は招かれざる客ってわけ」

 招かれざる客……まあそうだろうな。招待状は届いたが招待されたわけでもないし。

「この学校は軍事学校って言ってね。軍人を育成するところなの」

 軍事学校……だから銃やら剣やらを持っていたのか。しかし軍人の育成なんて必要なのだろうか?

「軍人の育成……戦争でもするんですか?」

 学校を作るほど軍人を欲しているということは、それだけ戦力が必要なのだろうが、そんなこと戦争くらいしかないのではないだろうか。

「うーん。まあ……この学校に来ちゃったことだし教えるね。戦争を始めるじゃなくて、今戦争中なんだよ」

 ……え?なんて言ったこの人、今日本が戦争中だって言った?

「日本が戦争中?そんなニュース聞いてないんですけど」

 ニュースでも新聞でもネットでも一切そんな情報はなかった。まあウチ新聞とってないんだけど。

「そりゃあニュースとかには出さずに裏で起きてるからね」

 そりゃそうだ。表立ってやってたら憲法に違反するもんな。平和主義とはみたいな。

「なるほどです。それで、俺をここに呼んでどうするつもりです?」

 そろそろ本題に移っても良いだろう。……んまあここまで来たら大体察しはするけど。

「軍事学校ってのは本来一般人が入ることは絶対にないの。そしてこの学校は機密情報の塊なわけです」

 だから、と先生は一拍置いて俺に告げた。ここに呼んだ意味を、そしてこれから何が行われるのかを……


「君にはここで死んでもらいます」


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