第21話
「一体、どういうつもりだっ。あいつは」
「確かに、どういう事ですかな? これは」
カールの冷静な言葉に、陣兵衛は動揺を押さえた。ここで、自分が焦っては、足元を見られてしまう。自分の力量に疑問を感じさせる訳にはいかない。
「どうも、宗次郎は奴らに利用されているかもしれん」
「そう思う根拠は?」
「あいつがここに来たのは、わしの心配をしての事だ。他意は無かった」
「そうかもしれませんが、得体の知れない者達が小夜殿を連れ去ったのは間違いありません」
「その理由は、奴らを捕まえれば分かるでしょう」
「一応、言っておきますが、私の希望を叶えてくれる人がいれば、それは誰でもいいのです。私には、三好でも他の勢力でもどこでも構わないのです。私を高く買ってくれる所があれば」
「分かっています。ですが、今この国でゾンビを無条件で受け入れるのは三好しかいないという事も忘れないで頂きたい。他家に行っても、わし程理解がある者はありませんぞ」
ふたりの間に一瞬の緊張が走った。
「まずは、その三好の旗揚げが出来るかどうか、ですが」
「ふん。それは問題ありません。もし、小夜を取り戻せなかったら、他の者を連れて来ればいいのですからな」
それが難しかったのではないのか。
カールは、それ以上問い詰める事はせず、剣士のゾンビを連れて扉に向かった。
「良いでしょう。では、私のゾンビ達の力を見て頂きましょう」
「あいつらはそのゾンビ達をすり抜けて来たのですが。大丈夫ですかな?」
「私の子供達を疑うのですか? 私が心配するのは、あなたの教え子が犠牲になっても構わないのか、という事なのですが……」
陣兵衛は、表情を変えずに言った。
「取り戻すのは、小夜だけだ。我々の秘密を知る他の者には、死んでもらう」
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