密室っぽい殺人2
「ごほん」軽く咳払いをして、ちゃんと死体を観察する。背中は血にまみれている。血を触ってにおいを嗅いでみたが、絵の具のようだ。この後洗濯が大変だろう。帰ったらこの人は親に怒られるんだろうなー。ご愁傷様です。手を前に合わせる。髪の毛が背中にかかっていたのでどかしてみると、背中に赤いテープがはってあり、刺し傷と書いてあった。なるほどこれで傷を表しているのか。一応仰向けにしてみるか。彼女の腕を引っ張って無理やり仰向けにする。やはり大きい。つい目で追ってしまうが男子高校生なら普通の反応だろう。そうに決まってる。すぐに目線を下におろした。すると腹部にも同じ刺し傷があった。こっちが致命傷だろう。まあ凶器は包丁に違いない。おもちゃだけど。手をみてみると何かを握りしめていた。彼女が握りしめていたものは紙だった。中を見てみると「14時に予備室2に来てください」と書いてあった。だれかが彼女を予備室2に呼び出したのだ。十中八九犯人だとおもうが。文字はプリントアウトされたもののため筆跡による特定は不可能か。ここまでするか?この部活はよっぽど暇なのかもしれない。ちょっといいかも。まあ、彼女から得られる情報はこのくらいだな。「ふーー」僕はひと段落して深呼吸した。ここまでの状況を整理しておこう。まず、雷先輩は何者かに眠らされて、この部屋に連れてこられた。そして凶器のナイフを持たされた。どうやってこの部屋に連れてこられたかは不明。次に中央の死体だが、背中に刺された傷あり。腹部の刺し傷が致命傷。何者かに呼び出された模様。
メモしておこう。カバンからノートを取り出しメモした。よし、次は最も大きな謎について調べよう。なにかというと「部屋が密室であった」ということだ。その謎を調べるためにはこの予備室2の鍵を探す必要がある。一番可能性があるのはそこの死体のポケットの中だが、女性のポケットをまさぐるのはなんかだめな気がするので最後にしよう。決してびびったわけではない。決して。次にスマホをいじっている雷先輩に聞いてみる。「雷先輩。ポケットに鍵とか入ってますか?」「あー。ないぞー。」「ありがとうございます。」めちゃくちゃ暇そうだな。やばいなるべく早く解こう。死体のふりもきつそうだし。しかし教室を隅々まで調べる必要があるようだ。一人だとあれなのでだれか先輩に頼んでみるか。先生はなんか恐いのでやめよう。まあ風林先輩しか頼めそうにないな。「風林先輩。鍵探すの手伝ってもらえませんか?」「いいよー。僕は後ろの机らへんを調べるから、君は入り口の掃除用具を調べてみてー。」「分かりましたー。」僕は言われた通りに入り口に散乱してある、ほうきやちりとり、モップなどを調べた。すると、ほうきにガムテープがはってある。剥がしてみると、中には鍵が入っていた。「先輩―、鍵ありましたー。」「おおー。よかった。」僕は風林先輩に伝える。なぜわざわざほうきに貼り付けたんだ?もう一度ほうきを見てみるとガムテープが貼ってあった場所に糸がぐるぐる巻きにしてあり、1メートルほど余った糸がガムテープ外に伸びている。とにかくほうきと糸と鍵これが密室に使われたトリックに違いない。密室を作る方法は俺が知る限り4通りだ。一つ目は鍵を閉めた後、鍵だけ部屋に入れる方法。二つ目は元々鍵を閉めた状態で中のターゲットを殺す方法。3つ目は鍵を閉めた状態で別の入り口から脱出する方法。合鍵を作る方法。この内のどれかが使われたに違いない。
まず、合鍵を作る方法だが、今回の場合マスターキーがある。つまりマスターキーが使われたなら容易に密室を作ることができる。先生に聞く必要があるな。先生を見てみるとさっきからずっとたばこを吸っている。ちょっと注意してみよう。「先生、たばこは体に毒ですよ。」「次たばこについてふれたら、お前を学級委員長にするぞー。」「たばこさいこー!」あぶない今後たばこについて触れるのはやめよう。そうだった「先生、今日の放課後に鍵を借りに来た人ってだれですか?」「ああ。この予備室2の鍵はそこの死体が。演劇部の部室は風林が借りに来たな。」「マスターキーはだれか借りに来ましたか?」「だれも借りてないな。私は12時から14時まで管理室にいたが来たのはそこの二人だけだ。」なるほど、これで合鍵の線は消えたな。マスターキーは犯行には使われていない。しかし、演劇部の部室が使われたのは何か気になる。風林先輩は演劇部なのだから当然ではあるのだが。演劇部の部室にいく必要があるな。僕は部屋から出ようとすると、先生が止めてきた。「おい、どこに行くつもりだ?」「ちょっと演劇部の部室に行くだけですよ。」「そうか。」そういうとたばこをまた吸い始めた。確実に元ヤンだ。この先生だけは怒らせないようにしよう。そうして部屋をでて演劇部の部室についた。窓が開いており、中は意外にも片付いていて、左右の棚には段ボールが丁寧に置かれている。赤ずきん、白雪姫などが書かれている。床にはシンデレラと書かれた段ボールがあり中には衣装がたくさん入っていた。中を調べてみるとビニールに包まれた王子様役の衣装があった。ところどころ赤いインクが付いている。なるほど、犯人はこれを着ていたに違いない。これで犯人と雷先輩をどうやって怪しまれずにここまで運んできたかは分かった。後は密室の謎だけだ。窓が開いていることが気になる。窓を調べよう。窓から予備室2の方を見てみた。予備室2の窓までは思ったより近い。2人が手を伸ばしても1メートル足りないくらいか。窓の下枠を見てみるとガムテープが張ってあった。そしてガムテープから糸が伸びていた。その時、風林先輩が声をかけてきた。「何か見つかった?」「はい、ここにガムテープとガムテープから伸びた糸があって。」「うーん。これを使って鍵を向こう側に持って行ったのかなー?」「いやでもここから投げ入れるのは無理そうですよね」「でも二人いればなんとかなりそうじゃない?」「二人?」たしかに犯人が二人いる可能性を考えてなかった。もう一度密室を作る方法を思いだす。一つ目は鍵を閉めた後、鍵だけ部屋に入れる方法。二つ目は元々鍵を閉めた状態で中のターゲットを殺す方法。3つ目は鍵を閉めた状態で別の入り口から脱出する方法だ。2つ目の元々鍵を閉めた状態で殺すということはないだろう。刺し傷は2か所あった。しかも背中と腹部に二つだ。いくら糸を使ったとしても不可能だろう。ということは鍵を後から入れるか、鍵がかかったまま自分が部屋から出るかだ。鍵がかかったまま自分が部屋から出るなんてできるか?ここは学校だ。秘密の抜け穴なんてあるはずがない。窓から頑張って一階に降りる?それはない。ミステリーの鉄則の一つの「犯人は超人的な人物ではならない」に反する。とすると答えは一つだ、犯人は鍵を閉めた後、鍵だけ部屋に入れたのだ。考えろ。もう手掛かりは揃っているはずだ。ほうきにガムテープで固定されていた鍵。ガムテープから伸びていた糸。予備室2の開いている左右の一番手前の窓。演劇部の部室の開いている窓とガムテープと糸。なるほど分かった。僕は予備室2に戻りこう言った。「犯人が分かりました。」そういうと、死体がとびおき目を輝かせてこう言うのだ。「さあ、君の推理を聞かせてくれ。」
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