密室っぽい殺人
死体だと思った女性が実は生きていて?!僕はこれからこの死体の謎を華麗に解くことができるのか!
「ふーー、帰ろう」僕は出口に向かって歩き出す。すると、先生がおもむろにたばこを取り出し出口の前に立ちふさがった。「まあ、待て。こいつらがここまでやったんだ。この部屋から出ることは許さん」先生はそう言うとたばこを吸い始めた。こわ、この人絶対元ヤンだろ。心の中で思う。そういえば、人が刺されているというのに対応が冷静すぎた。それに僕に鍵を取りにいけというのはおかしい。なぜ予備室2の鍵がかかっていたことを知っていたのか。当たり前だがこの人もグルらしい。隣にいる男が話かけてきた。「いきなりごめん!でも部長に付き合ってあげて。後でお礼はするから。」男は申し訳なさそうに手を体の前で合わせて懇願する。そういえばこんなやつもいたなー。えらくドアの前で騒いでいたやつ。こいつもグルらしい。演技と分かっていてよくあんな騒げたなーと感心する。お前は今すぐ演劇部に入部したほうがいい。ともかく、僕にこの人たちを説き伏せられるコミ力はないのでこれは大人しく謎を解くしかないみたいだ。こうなったら解いてやる。気持ちを切り替えた。とりあえず、もう一度先生を見てみる。部屋に入ってすぐ左側にある、開いている窓で外を見ながらたばこを吸っている。あの窓いつ開けたんだ?少なくとも僕が部屋に入ったときには窓は閉じていた。僕が死体に夢中になっているときに2人のどちらかが開けたのだろう。とにかく先生を観察してみる。歳は20代後半くらいか。性別は女性。身長は170cmくらい。職業は教師。長い黒髪を後ろでしばってまとめている。端正な顔立ちに似つかわしくない鋭い眼光。元ヤン。胸はあまりない。今睨まれたきがしたが気のせいだろう。こわい。男子がいうところの叱られたい美人みたいな感じなのだろう。名前はたしか「山木 利恵(やまき りえ)」。自分のクラスの担任だ。そういえば先生はなぜあそこにいたんだ?聞いてみる。「先生はなんで3階にいたんですか?」「14時になったら、予備室2に行くようにそこの死体に頼まれたんだ。」「それまではどこに?」「一階の管理室だ。」なるほど、だから一階の管理室に誰もいなかったのか。先生が管理室の日を狙ったんだろう。もし僕が校舎まで行って人が刺されていると教師に言えば大事になる。それにしても何部なんだここは?隣の男に聞いてみるか。「ここって何部なんですか?」「ごめん、秘密にしろって部長に頼まれてるんだ。」なんで秘密なんだ。「あっ、自己紹介がまだだったね。僕は「風林宗助(かぜばやし そうすけ)」高校2年。演劇部も掛け持ちしてるんだ。よろしくね。」そういうと彼はにこやかに笑った。そういえばシンデレラの王子様役だった気がする。よく見なくてもイケメンだ。金色の髪に整った顔立ち。身長は160cmくらいで、どこかの国の王子様といわれても冗談に聞こえない。女子がいうところの、守ってあげたい王子様という印象だ。僕はイケメンというだけで嫌いになる男ではない。こういう社交的なイケメンはむしろ好きだ。逆にウェイウェイいって周りを威圧するタイプのイケメンは大嫌いだ滅べばいい。「こちらこそよろしくお願いします。」僕はそう言ってお辞儀をした。なかよくなれるといいな。さて、2人はこんなとこだろう。僕は部屋の状況を確認する。ミステリー小説の探偵がまずやることは状況の確認だ。探偵は些細な違和感を感じとることから始める。状況を整理してみよう。ここは3階の一番奥の部屋、予備室2。出入り口はドアの一つだけ。ドア付近に散乱した掃除用具。中央には女子生徒の死体。そして血まみれの包丁を持って床にうなだれているもう一人の女子生徒。開いている窓は左側の一番手前の窓と右側の一番手前の窓。後は部屋の後ろに机といすとホワイトボードがある。こんなところだろう。とりあえず、血まみれの包丁を持って床にうなだれている女子生徒に話を聞く必要があるのだが。なぜかシンデレラの服を着ている。あまり近づきたくない。ほんとに刺してきたりしないよな?おそるおそる近づき顔をのぞきこんでみる。すると美少女だった。いやそうではない。気持ちよさそうに寝ている。びくびくしていた自分が恥ずかしい。肩を揺らして「起きてください」と言ってみた。彼女はゆっくりと目をあけた後、思いっきり背伸びをした。手に持っている包丁を忘れて。「あ。」包丁がちょうど僕の胸のところに刺さる。「ぎゃあああああー」思わず叫んだ。いたい、いたい、いたい、いたい?痛みは何もないことに気づく。血もまったくでていない。触ってみるとただのプラスチックのおもちゃだった。なぜか無性にはずかしい。「うるさいなー。こっちは気持ちよく寝てたっていうのにー。」そういうと眠っていた彼女は不機嫌そうな顔で僕を見てきた。お前のせいだよ。と心の中でつっこみつつ彼女をもう一度見る。やはり美少女だ。身長はおそらく150cmちょいくらいで茶髪。髪型はボブ?とかいうやつで、無気力さが目に現れている。たれ目で眠そうだ。男子がいうところのゆるふわ系美少女というやつだろう。「だれだお前―。」彼女は無気力そうに言った。「えっと、僕は今そこの死体の謎を解かされている者です。」「あー。なるほどなー。私は「雷 志津香(らい しづか)」2年。よろしくー。」「よろしくお願いします。」彼女は眠いとかそうではなくいつも無気力なのだろう。そんなことより、なぜ刃物を持ってここで寝ていたのかを聞く必要がある。「先輩、その刃物はどうしたんですか?」「あー。知らない。いつのまにか握っていた。」そういう設定らしい。「じゃあ、どうやってここの部屋にきたんですか?。」「覚えてない。」「そのシンデレラの服は?」「あー。私は演劇部も掛け持ちしていてなー。シンデレラ役だったんだ。」いわれてみればそうだったような気がする。「最後に覚えている記憶は?」「演劇部の打ち上げにいたことは覚えているんだが。風林もいたぞー。」「なるほど。」「ちなみに本当に私は眠っていたぞー。」「えっ。」「リアリティーをだすため私は今日一日何も考えず過ごしていたんだ。部長の指示でな。そうしたらいつのまにかこの部屋にいたんだ。」ずいぶん設定が作りこまれているなー。ここまでするのか。「風林先輩」「雷先輩はいつまで打ち上げにいましたか?」「うーん。1時にはいたはずだけど。それ以降はわからないなー。」「ありがとうございます。」考えられるとしたら、雷先輩が嘘をついているか、何者かが雷先輩を眠らせた後、ここに運んできたかのどちらかだ。普通に考えればどうみても雷先輩が殺したように見えるが、それはないだろう。雷先輩が犯人ならば殺した後、その場に留まっていること自体がおかしいし、わざわざ部屋に鍵をかけ密室にしてだれかがくるのを待つなどしないだろう。自分が犯人だと言っているようなものだ。とすると、だれかが雷先輩を眠らせた後、ここまで運んできたことになる。でもどうやって。普通連れていくなら保健室だ。本当に眠っていたとしたら眠っている生徒を抱えながら部室棟にいくのはリスクが高い。途中でだれかに話しかけられたら、言い訳できないだろう。とりあえず、後回しにしよう。そして最後に中央の死体だ。この事件のある意味での真犯人。おれをこの事件に巻き込んだ悪役。それがここに転がっている死体だ。とにかく観察だ。身長は170cmくらい女性。黒髪で腰まで髪が伸びている。綺麗な顔立ち。顔が小さく目が大きくまつ毛も長い。おまけに胸も。モデルといわれても疑わないだろう。男子がいうところの付き合いたい女性ランキング1位といったところだ。だが、おそらく性格に難あり。それにしても全然うごかないなー。本当に死んでいるのでは?そう思って、頬をつついてみる。体がびくっと動いた。生きているようだ。僕は仕返しとばかりに頬をつつく。楽しくなってきた。夢中でつついていると背後から3人の冷たい視線を感じたので辞めた。ここで一旦僕は背伸びをした。
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