第4話
「騎士アンドルー、聞いたか?またあのお調子者のシザーリオに公爵がすりつぶされたそうだ。これで何人目だ?」
「八人目だ、騎士トービー。せっかく民主的な公爵の地位のおかげで騎士ごっこができるというのに、毎度毎度殺されていちゃあ世話がないよ。しかもそこで囚われているお姫様を救い出す役目もできない。ねえトービー、このままだと僕たちは毎日国に金をせがんで酒を飲んでいる酔っ払いと同じになっちゃうよ」
「何を言うんだ、騎士アンドルー。そんなはずがないだろう。俺たちは毎日政治の批判と監視を休みなくやっているんだ。どうして毎日はしゃぎまわって防衛のことを議論していると思っているのだ。まさか将来国からもらえる年金のことを考えているのではあるまいな」
「まさかそんな、ふざけてはいけないよ、騎士トービー。僕たちは年金という将来の少子化のために子作りをする貢献をしようと思っているんだ。そのためにも男ぶりを世界に向かって鍛えなくちゃいけない。国内であれ国外であれおいしいものを食べるのもそのためさ」
「それにしてもオリヴィアはどうしてあんなに体裁にこだわるんだろう。俺たちはどんな才能だって隠れた能力として引き立てられた結果としてここにいるのに。きっと流行のためだな。自分の実力を隠すのが主流みたいだし」
「そうそう。喧嘩の腕は隠してこそ価値がある。だけど僕たちは議論の冴えわたる巧妙な真実を追求しているから、他のみんなと意見を共有し合ってこそ生まれながらの栄誉にあずかれるというもんさ」
「ところでオリヴィアはどこに行ったか知っているか、騎士アンドルー?」
「んーん、知らない。シザーリオがどこかにやっちゃった。僕、オリヴィアのこと探してきた方がいいかな、勇気を見せに」
「最近彼女の兄が死んだばかりだというのに、オー公爵に言い寄られていたからな。早いとこそうした方がいい。さもないとシザーリオの女好きがまた誰それ構わずかっぱらっちまうぞ」
「何をやってるんだ、トービー、アンドルー。もう休憩時間は過ぎたはずだ」
「うるさいやつが来たな」
「休憩時間が過ぎたのなら、もう帰っていいってことだよねマルヴォーリオ」
「馬鹿か、お前は。そんなはずがないだろう。お前たち二人はいつも注意しなければならん。私の苦労も考えろ」
「苦労って腕前を感心しろってことか」
「なんて気が利かないやつ!僕だってこんなのろまにはなりたくない」
「過ぎた口先だな。仕事で信頼されるには黙ってやることだけをきちんとやることだ。お前たちにもその程度のことが分かればいいが」
「そうして自尊心だけが黙って膨れ上がるってことか」
「こんな体裁を取り繕うくらいならおしゃべり千万であった方がいい。少なくとも僕はそう思うな」
「なんとでも言え。お前たちに何を言われても気にならん。じゃあな、精進しろよ」
「クソっ、たかがお役人のくせに偉そうな顔をしやがって」
「僕たちが国を守ってこそ、安心して仕事ができるっていうのにね」
「あらお二人とも、おひさしぶりですね。この国の繫栄は大丈夫そうですか?」
「マライア、久しぶりだな!」
「ばっちりですよ、マライア」
「今日は聞きたいことが合って寄ったのですが、先にお二人の悩みの種を育てた方がよろしそうですね」
「そうそう」
「話が早い」
「マルヴォーリオは相変わらずのようですね。ここはひとつ罠を仕掛けてみるというのはどうでしょう」
「具体的に」
「詳しく聞きたい」
「オリヴィアが実は秘蔵の恋文をマルヴォーリオの宛名で持っていたという噂を流すのです。細かい服装や装飾品などを決めて、それに見とれていた、という文章をでっちあげるのです。それで彼女はため息を押し隠していて、でも兄に対する悲嘆からそれを明らかにすることはできなかった、というように。私はオリヴィアのデスクに恋占いの本でも置いてきて、マルヴォーリオとの相性がよくなるグッズという立場を示すものをそれとなく置いておきましょう」
「それはいい」
「わくわくするような冒険だな」
「ええ、是非鑑賞なさってください。ただこのことはくれぐれも内密に」
「俺の口はどんなセキュリティのアルゴリズムよりも固い」
「僕のあらゆる勇気に賭けて誓います」
「ではオリヴィアの亡くなった兄のことについて教えてくださいね」
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