第4話

「ぼく、何年生?」

「五年生です。」と兄。

「ぼくは三年生です!」

「山公園で遊んでいたんだよね?見つけるから安心していいからね。お兄ちゃんも一人で心配だっただろう。妹と二人だったの?ほかに誰かいた?」


ぼくがいるのに何を言っているんだろうと思った。ぼくたちはいつも三人だ。


「妹とふたりです。ほかには誰もいませんでした。」


ぼくは兄を見た。兄の目を見た。兄の目にぼくは映っていなかった。


 いつも一緒に遊んで、三人で話したり、お父さん、お母さんとも話す。でも、それはぼくではなくて、家族の会話にぼくが紛れ込んでいただけだったのだと気が付いた。家族のみんなが感じていた座敷童と思っていたのは「ぼく」だったのだと初めて気づいた瞬間だった。


「座敷童って五才くらいじゃないのかよ。ぼくは小学三年生だ。じゃあ座敷童じゃないのか?幽霊か?」


自問自答している暇はないとすぐに思い出し、ぼくは気づいたら走り出していた。妹を見つけられるのはぼくしかいない。ぼくはぼくだ。座敷童だろうが、幽霊だろうが、関係ない。妹が無事でいてくれたらそれでいい。走る足がいつもより速く感じた。建物や車がよけてくれているみたいに。山公園についた。息も切れていない。ぼくってすごいじゃん。妹も絶対見つけてやる。


「おお~い、どこだ~~」


大きな声で叫んだけど、聞こえていないかもな、と頭がよぎった。でも、叫ばずにはいられなかった。座敷童の力はこんなもんなのか?家族を幸せにするのが座敷童じゃなかったのかよ?ぼくの力よ、頼むよ、妹を見つけてくれ!


声が枯れそうになる。でも叫び続けながら歩いた。山公園のいつもの遊び場所。秘密の場所と秘密基地。三人でいつも遊んでいるぼくたちにしかわからない場所はたくさんある。


ひとつひとつ確認していったが妹はいない。


一体どこに行ったんだ?誘拐?神隠し?ぼくの頭の中ではいろいろな不安が交じって爆発しそうだった。


「山の神様!!!」ぼくは叫んだ。

「ぼくは座敷童です!どうか妹の居場所を教えてください!!!!!」

「・・・・・・」


山は暗く、とても静かだった。

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