第3話
「ちょっと外で遊ぼっか」
父が仕事に向かったので、兄の提案でぼくたち三人は外に出ることにした。明日からのお出かけに備えて体力づくりだ。
「お母さん、出かけてくるねー」
「いってらっしゃーい」
「体力づくりだから山公園行こうよ」と兄。
山公園とは、家から割と近くにあり、住宅街にポツンとある小さな丘のような山のこと。木々も生い茂り、カブトムシもいる。山公園までは自転車で移動できるけど、この日は体力づくりだと言って、歩いて向かった。
くたくたになるまで山を走り、かくれんぼと鬼ごっこが繰り返された。
「今の時代外で遊ばなきゃな」
兄は父のような言い方で僕たちに言った。
「って、いないじゃん」
兄はきょろきょろ周りを探している。妹がいるように思えたその影は小さな木だった。
「いおり~!おーーい」
「どこに行ったんだろ。帰っちゃったかな」
兄と急いで帰宅することにした。
「ただいま~いおりいる~?」
「おかえり」母が慌てて出てきた。
「どうしたの?いおりは?」
「え。帰ってきてない?」
妹のいおりはまだ山にいるのかもしれない。
「お母さん迎えに行ってくるから家で待ってなさい」
ぼくたちは家で待つことになった。
しばらくして母が帰宅。妹は一緒じゃなかった。
「いおりは?」兄も心配な顔つきで母に尋ねたが、母の顔もこわばっていた。
「お父さんにも連絡するからちょっと待ってて」
母は父に連絡し、ほかにも連絡できるところにはいろいろ連絡していた。外はもう暗くなってきていた。
父が帰宅し、ご近所の人も加わり、大勢で妹の捜索が始まった。警察もきている。ドキドキがとまらないくらいぼくも胸がざわざわと落ち着かない。こんな時、お父さんが言っていた座敷童がいてくれたら妹を見つけてくれるかもしれないのに。そんな思いで兄に話しかけた。
「お兄ちゃん、座敷童探そうよ。この家にいるって言ってたじゃん」
「・・・・・・」
「お兄ちゃん!」
兄は沈黙したまま何も言わなかった。いつもなら返事をしてくれるのに、自分の責任だと思い詰めているのかもしれない、と思った。
「お兄ちゃんのせいじゃないからね。ぼくもいたんだし」
「・・・・・・」
「お兄ちゃん!」
その時、警察のおじさんがやってきた。
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