2章
「すみません…」
「なんの用でしょう」
当然の来客に奈那依さんが対応する。
「ここでその…人を操って貰えるって聞いて…」
「そうですね。そうします、できます」
事務所に入ってきた女性は顔が明るくなった。
「彼氏に盗みをやめて欲しいんです」
女性、
その彼に心酔しているのではないかと思ったが何も言わないでおいた。
操上さんはデスクで考え込んでいたが、数分して僕らに「依頼を受けて」と言ってきた。
依頼を受けると藤津さんに伝えると彼女は喜んで去っていった。
「どうするんですか?」
奈那依さんが聞く。
「今日の朝占いを見たんだ」
「それがどうしたんです?」
「占いにも心理効果が働くんだ。それをバーナム効果という」
操上さんによるとみんなに同じ占い結果を見せても当たってる!となる効果だと言う。これがなんの関係があるのだろう。
「適当にターゲットを占いにはめて盗みを止めるように言うんだ」
「そんなに上手く行きますかね……」
「あと占い師やるのは石踊君ね」
「え!」
占い師の変装のための用品を買いに来た。
ここビックリマート略してビマートはなんでも揃う。何でもだ。
占い師の変装をするとなれば水晶玉やローブ的なのが古典的だ。古典的な方が雰囲気がでて良いだろうか。
ローブはいかにもという感じのがあったが、言ってしまえば中二病だった。多分これを着て「右手が…」と言うだけで友達は消滅させられる。
ちなみにお値段3000円。上質な生地を使っているようで肌触りはとても良い。こんな見た目じゃなければ買っていた。
水晶玉はただ形と色が良いのを選べば良いとの事だったので普通の透明で綺麗な玉を買った。ちなみにアクセサリーコーナーにぽつんと置いてあった。
この服を着ているのは少し、いやとても恥ずかしい気がする。
『今コンビニから出てきた男がターゲット。声をかけて』
遠くから監視していた奈那依さんからメールが来た。それと同時にラフな格好の男が余裕な顔付きで歩いてきた。作戦開始だ。
占いとでがでかと書かれた屋台のようなものに視線を寄せている。
「ちょっとそこの貴方」
「ん?なんだよおっさん」
おっさん?こっちはまだ26だ。お前より若いぞ。
「大きな罪がありますね」
「な、何言ってんだよ」
少し動揺が見られた。正直罪なんてみんなにあるんだし動揺しなくてもいいんだが。
今回はほとんど事前調査なしのためみんなに当てはまるような占いを暗記してきた。
多少は藤津さんから聞いておいたものの無情報は辛いものがある。どんな返答が予想がつかない。
「今なら占い……まあタダでやりますよ」
「タダ?怪しいな」
食いついてきた。
「私も占い師としての下積みのようなものでして経験を積んでおきたいのです」
「そんなもんか。まあ今暇だしやってやるよ」
ここまで食いつけば第1関門突破といえる。
「そうですね…。貴方には愛する人がいる。その罪のことで貴方は何か言われているでしょう」
「よく分かるな」
当然だ。藤津さんから聞いた情報をそのまま言っているだけだからだ。
「そして…あなたは今未精算の商品を手元に持っている」
男の顔は険しくなり目が泳ぎ出した。こんなの占いでは無いと思うが当てられて焦っているのだろう。
「な、何を言うんだお前」
「貴方がその悪事をやめれば愛人とも円満にいくでしょう。警察への出頭の必要はないでしょう」
こちらとしてもターゲットが警察に捕まるのは迷惑だ。
「そ、そうなのか…。ありがとな。今日は帰る……」
頭を抱えながら男は帰っていった。
1週間後
「ありがとうございます。彼は盗みをやめてくれました」
「そうですか。それは良かった。では料金の方は後日請求書をメールでお送りします」
「はい、本当にありがとうございます」
ちなみに料金は今回の事例の場合衣装、小道具代や手数料などが込みで16万円だ。探偵業種としては安い可能性がある。
操上さんが口を開いた。
「今回は簡単な依頼で助かったね」
「あなた何もやってないですよね」
「あ、…」
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