初めまして

 3つ目、募集主アリエルさん。

 内容は、最近冒険者始めました。一緒に頑張りませんか?


(アリエルさん、名前的に女性!募集者の職業治癒師、絶対優しい!最近冒険者始めましたぁ?私もでーーーーす!!!)


 ユーリは思わずガッツポーズをする。


(……完璧な募集!!!一時はどうなる事かと思ったけど……何とかなりそう!!)


 シャロンが居なかったので、他のカウンターのお姉さんに紙を手渡す。


「少々お待ち下さい」


 そう言うと、その募集の紙を鶴に折って飛ばす。


(伝書魔紙……そういやあったなぁ!?入学して最初に作り方教わったけど……渡す相手いなかったから忘れてた)


 自分の魔力を込めた紙を相手と交換する事で、離れた場所からやり取りできるという優れものだ。


 しばらくしてハートが飛んで返ってきた。


(ハート!?折り方がまず分からない…これが女子力)


 ハートの紙を開き、お姉さんが中を確認すると、メモ用紙に何かを書いて手渡してくれた。


「こちらの場所へ30分後に集合だそうです。ここから10分程のカフェですね」


 手渡された紙には店の名前と、簡単な地図が書いてあった。


「Eランク冒険者になりますと、便利な通信魔道具や冒険者の証のバッジが支給されますので、頑張って下さいね!」


「ありがとうございます!」


(どのお姉さんも優しいなぁ)


 そんな事を思いながら、ユーリはギルド会館を後にし、貰った地図を頼りに目的地を目指した。


(や、やばい。わからん)


 ユーリは1度行った事のある場所へは、記憶移動魔法陣で飛ぶことが出来た。

 ある程度通い慣れた場所は風景で何となく分かる……が、初めての場所へ地図を使って行くのを大の苦手としていた。


(あれ……こっちが上?北が左?)


 そして、かれこれ20分迷っている。

 背に腹はかえられず、近くの女性へ尋ねる。

 すると真っ直ぐ行って花屋を右折という情報を得た。


(や、やばい遅刻ギリギリだ!!!)


 ユーリは駆け足で目的地のカフェを目指す。

 無事に、それらしい目的地へ着いた。そこは、とても可愛らしいオシャレなカフェだった。


(いつもの私なら日和る……が!!今日は……いける!!!)


 カランカラーン


 扉を開けると小さなベルの音が鳴る。


「いらっしゃいませー!お客様何名様ですか?」


 とても可愛い給仕服の女性が出迎えてくれた。


 いつもなら小声で「一人です…」という所だが、今日のユーリは強気である。


「2人です!!待ち合わせです!!!」


「相手の方のお名前はわかりますか?」


「アリエルさんという方です!!」


「あら、アリエルさん。まだいらっしゃってないのでおかけになってお待ち下さい、こちらへどうぞ」


 そのまま窓際の奥の席へと案内される。

 店内は圧倒的に女性が多く、皆、果実のケーキやパフェを食べていた。


「こちらメニューですので、お決まりになりましたら、こちらの色ペンで魔紙にご注文を書いて飛ばして下さい!ごゆっくりどうぞ!」


 お客さんも多く、店員さんは忙しそうだった。


(アリエルさんって名前で店員さん分かっていたし、この店が常連なんて…なんて陽の者なんだろう。きっとふわふわ系のお姉さんだ)


 メニューを開くと、とても美味しそうなもので溢れている。一人で入るには、勇気がなくて逃げ出すやつだなとユーリは思った。


 カランカラーン


 暫くして、金髪のウェーブのかかった髪のきれいなお姉さんが入ってきた。

 店内を見回して誰かを探しているようだ。


(きっとあの人だ……!ど、どうしよう呼んだほうが良いかな?)


 カランカラーン


 続いて二人男女が入ってきた。

 ポニーテールの女性と凄く厳つい革のジャケットのソフトモヒカンのサングラスをした男性だ。明らかに目立っている。


(こっわっ!前の彼女さんとの差が凄いな)


 店員さんが、入ってきた三人に声をかける。

 ユーリが金髪のお姉さんに声をかけるか迷っていると、後ろの怖い男性と目が合った。

 ユーリは反射的に下を向き、メニューを見ている素振りをする。


(やばい!目を合わせたらダメな人だ。酒場の時みたいに揉め事は起こしたくないし、アリエルさんに引かれてしまう!あの時は元彼へのイライラで喧嘩売ってしまったけど…基本は関わりたくない!シャロンちゃんにも言われたし、怖い人とはなるべく距離置きたいなぁ……大人しく待ってたら店員さんが案内してくれるよね。恥ずかしいし、このままメニュー見ていよう)


 しばらく待つと、目の前の椅子に誰かが座る音がした。今だ!と思って顔を上げ、ユーリは先に自己紹介をする。


「初めまして!!ユーリです!よろしくお願いします!!」


「はい、アリエルです。どーもよろしくな、ユーリちゃん」


「ヒュッ」


 目の前にはさっきのサングラスの怖い男の人が座っていた。

 その横を無情にも、金髪お姉さんとポニーテールのお姉さんが仲良さそうに通り過ぎて行ったのだった。



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