パーティ募集
「ぼ、冒険者の友達いなくて……」
ユーリは声が震える。21年生きてきて、友と呼べる人が片手にも満たなかった。
しかし、自分のことをべた褒めしてくれるシャロンに対して、実は友達が居ないなんて口が裂けても言えず、かと言って連れてくる相手も宛もないので"冒険者の”と虚勢を張る。
「そうですよね!今日、冒険者になったばかりですもんね!!!」
尊敬の目で見つめられ、目が合わせられないユーリ。
「あれ?でも先程知人の冒険者さんがいると言っていましたよね!?とりあえずの簡易パーティを組んでもらったらどうでしょうか?」
事情を知らないシャロンは、とんでもない提案をする。修羅場パーティだ。
「あ、いや。なんかこの街に今いないらしくて?無理かなー?って思います」
(嘘は言っていない、嘘は)
シャロンは「なるほど」と言って納得する。
「最近、この街と隣町の間に新しいダンジョンが見つかったんですよ。そのせいでこの街にも、乱暴な冒険者が来ていたりするので気をつけてください!女性の冒険者は良くも悪くも目立ってしまうので」
「そうなんですね、確かに私も遭遇したかも」
ユーリは酒場の大男を思い出す。
「ユーリさんも見たんですか!噴水広場の化け物!?」
「ンッ」
想定していた相手では無かった。もしかすると…?いやもしかしなくても、それはユーリ自身の話だった。
「被害者の女性は、噴水が壊れる程吹き飛ばされたのに無傷だったらしいです!きっと相当の手練だったんですね…」
(違う違う)……とは言えるはずもなく、「そうなんだぁ」と相槌を打つ。
「被害届を騎士団へ提出したらしいですけど…」
「えっ!?」
「強すぎて無傷だったが故に、受理されなかったらしいです」
(よーかーっーたー!!!ありがとう魔鉱石!)
「そ、そーなんだー。気をつけます!」
ユーリの言葉を聞いてウンウンとシャロンは頷いた。
「そうですねぇ。じゃあパーティ募集をするか、参加するかしてみましょう!」
シャロンがカウンターから出てきて、ユーリを白板の方へ案内する。
「こちらが、パーティ募集の掲示板です!!」
先程まで無縁だと思っていたのに、すぐお世話になる事になるとはユーリも思わなかった。
「オススメはぁ……この初心者歓迎!って書いてある募集ですね。逆にサクサクー!とか書いてあるものは殺伐としているものが多いです」
「な、なるほど」
「…あ、ちょっと呼ばれているのでユーリさんはゆっくり検討していて下さい!決まったら、カウンター係に紙を渡すと、待ち合わせの日時を教えてくれます!合わなかったら断る事も可能なので、気軽にどうぞ!では!」
シャロンは、ぱたぱたと足音を立てて走り去っていく。
(初心者歓迎の紙は……3つか)
1つ目は、募集主 アンダーソン
内容は、ひたすらレベリングしよう!4人募集。
(いやいや……知らない人とずっと鍛錬とかキツすぎる…次)
2つ目は、募集主 ローリー
内容は、みんなでワイワイ仲良くなろう!大人数募集。
(確実に、壁とお友達コースまっしぐら……でも、1日我慢すればクリアとしたら、妥協点としては有り)
3つ目は……
「これだ……!!!」
ユーリは3つ目の募集の紙をカウンターの女性に提出した。
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