冒険者になります

 ユーリはみんなの計らいで、先に休ませてもらえる事になった。


(今日は色々あったなぁ……。)


 今日、ジンから貰った服を大事にハンガーにかける。ユーリは服が2着しか無くなったことに気がつき、ウォーターボール洗濯をした。

 先にドロシーの部屋へ行き、布団へ潜る。

 いつもより首が冷え、視界が明るい。

 ユーリは、今日あったことは本当の事なのだと実感する。


(明日は早く起きて、総合ギルド会館という所へ行かないと……)


 先程、アトラスから冒険者として登録する場所を教えてもらった。


(はやくお金稼がないとなぁ……。きっと適正試験ある。……難しいのかな……落ちたらどうしよう)


 色々考えながらその日は眠った。



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「おめでとうございます!今日からユーリさんは冒険者です!」


 かわいいお姉さんが、冒険者手帳と言うものを渡してくれた。


「……え??」


 ユーリは朝一で、アトラスから貰った地図を頼りにギルド総合会館へ来た。

 …まではよかったが、なかなか入ることが出来ず、建物の前でうろついていると、今のお姉さんに声をかけられ中へ入った。そのまま書類を書いて、写真を撮って番号を渡されて待っていたら……今に至る。


「えーっと……試験は?」


「ありませんよ!」


「筆記も……実技も?」


「ありません!!」


 お姉さんは笑顔で受け答えをする。


(え?冒険者って大変だって……)


「冒険者について説明させていただきますね!冒険手帳をご覧下さい!顔写真、名前の横にある文字。ユーリさんは現在、Gランクの冒険者です!」


「な、なるほど」


「右手に見えます黒板に貼ってあるのが依頼書です!自分が受けたいクエストの紙を持って、私たち受付の所まで来て下さい!私がいる時はユーリさんの担当をさせていただきます!シャロンです!よろしくお願いします!」


「よ、よろしくお願いします」


「とても可愛い冒険者さんの担当になれて私も嬉しいです!」


 シャロンはニコニコとユーリに話しかける。

 ユーリは圧倒的陽を前に眩しくなり後ずさる。


(絶対この人友達沢山いるタイプの人だ……)


「こほん!では続けますね!冒険者にはランクがありまして、Gから始まりAが1番最高ランクです!そして、そのAランクの中から数名…というか数パーティですね、レイドチームへと選ばれます」


 その言葉を聞いた瞬間、ユーリはカイ思い出す。


(レイドメンバー……)


「レイドとは、ダンジョンの要所に存在するボスの事を言います。大体、最下層にいる場合が多いですね。それを各国から選ばれた冒険者と魔術士と守護者と戦闘民族で潜って討伐をします……が、とりあえずランクを上げるのが先決です!」


「ちなみに、知人の現在のランクを知ることって出来ますか!?」


「ギルド名と名前か分かれば調べられるかもしれません!」


「あー……じゃあ、大丈夫です」


 ユーリはカイとリアのランクを調べようと思ったが、ギルド名が分からない為どうしようも無い。


「習うより慣れろです!!とりあえず1つやってみますか!怖がらなくて大丈夫ですよ!!安全な依頼書を選んできます!」


 そう言ってシャロンはカウンターから出てきて黒板へ向かう。そして1枚の紙を持って帰ってきた。


「これです!!ハーブの採集!これなら都市結界の中で採れるので安心安全!出来ますか!?」


「え、あ、はい」


 ユーリはクエストの簡単さに拍子抜けする。


「ちなみに、ダンジョンに入れるのは何ランクからなんですか?」


「そうですね……3年ほど頑張って、Eランクに上がったあたりですかね?」


(という事は2人はE以上ということか…)


 ユーリが一緒に住んでいた頃、ダンジョンは大変だという話をカイから聞かされていた。


「頑張ってクエストを毎日1つこなしてたら、2年でダンジョンまで行けるかもしれません!」


(冒険者って簡単だなって思ってたけど、なった後が大変そうだなぁ)


 ユーリはクエスト依頼書を貰って来た道を戻る。クエストボードを覗くとランクによって板が分かれていた。

 Gクラスの黒板には採集依頼しかなかった。


 そして反対に、白板があったので少し覗いてみる。

 するとパーティの募集と書いていた。


(私には関係ないなぁ……)


 ユーリはそう思い、足早にギルド会館を出た。

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